第13話 それらの人たち 西側

第13話   

   それらの人たち 西側   乙音おとねメイ


 西側の隣家からも途轍もない勢いでマイクロ波が来た時には、

「お前もかブルータス!」

ではないが、もう少しで絶望するところだった。以前、挨拶をした小柄なご主人、セミロングヘアの奥さん、3~4歳くらいの女の子、たまに来るおじいさん、そんなことをする人には見えなかった。

 でもそうした絶望感が契機となって30分後の朝7時、110番通報し、とうとう警察に来てもらった。踏ん切りがついたのだった。

「西隣りはいい方風だと思っていたのに、違っていた。ウエ~ン!」

と言って、世を儚むことは断然しないのだ! 

「あの方、お隣の方に裏切られたことが原因で……」

涙と共に語られること、これはないのだ。


 警察官が来てから、西側隣家に変化が見られた。本来の家族とは違う別の人たちが、隣家に頻繁に出入りするようになった。それも、妊婦さんばかりだ。これは、警察の方に事情を聞かれたとき、妊婦なら怪しまれずに済むのでは、という考えから出た留守番要員なのだろうか。そうこうするうちにいつの間にか、全く違う別の家族にチェンジが完了していた。(ということはやはり、それらの人達の中では「これ以上の悪事はできません」というご夫婦だったのかも?)。

 しかし、それらの人たちの舞台、フェイドイン、フェイドアウトに慣れた様子には苦笑する。



 ついぞ引っ越しトラックを見ないけれど、このE‐1、2、3の三棟、空き地を挟んだ北側P‐1棟と更にその北側K‐1棟の団地合計5棟の何部屋かは、家具付きのロッジかペンション替わりなのかもしれない。夏になると見かける、スーツケースなど大きな荷物を持って団地に入る5人くらいの家族連れは宿泊客なのだろうか? と思う。すれ違いざま挨拶しようとすると、相手の態度にどこかしら不自然さを感じる。それで、軽く会釈だけで終わってしまうのだ。台湾のお仲間団員の日本誘致見学ツアーだと後から聞いた。





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