第11話 イルミナティー33
第11話
イルミナティー33 乙音メイ
2017年5月。私は、長編小説になると予想される新しい作品、『DOOLS』を書き始めていた。話の重い部分も軽い部分も、つまり、夜明け前の一番暗い闇と、燦然と差し込む光の両方が、渾然一体となったその作品を原稿用紙に換算して300枚以上書いた頃、愛用のパソコンに異変が起こり始めた。イルミナティと言われてすでに久しいある企業内で起きた死亡事件のことを、その企業に対する偏見を持たず『ドールズ』の執筆をしていく上で、必要があり調べていた時のことであった。
その事件は当時でさえ、小さく報道されていたという。だから、山陰地方の支店で起きていたこの過去を、私も同僚も何も知らないままアルバイトからパート社員へ、誘われるまま入社した。知っていたら短期のアルバイトもしなかったかもしれない。この企業の危うい別の一面を知らずに入り、くるくるとよく動き、せっせと立ち働いていたというわけだ。
私が知ったのは事件から十年近くも後のことで、私の周りで起こり始めていた暗い、または不可解な「何か」、それがいったいどのようなことなのか、「何か」の体験者が同じ企業の関係者の中に、もしかしたらいるのでは、と思いそれを調べるためだった。
一般的な検索で出てくるようなインターネットサイトでは、不可解な「何か」に関することはヒットせず、○民党の議員二名が公表していたサイトからこの企業の「陰の部分」を知ることができた。この企業の社訓にほだされ信じていた為に、勧められるままにアルバイトからパート社員としての入社を決意した私である。どちらかというと知らない方が恐怖と無縁でいられ、幸せだった。でも、知ることは私の人生における必然としか言いようがないと今は思い、納得している。私のミッションが関係しているからだ。
そのサイトでリンクされていた一連の記事を読んでみると、理解しようにも、一筋縄ではいかない多くの謎を孕み、ただ驚くしかなかった。当たりさわりのない報道をしているニュースと、もう少し深く掘り下げようと努力の見られる情報を挙げている新聞機関と現場付近の方々の情報を読むことができた。現場は民○党の大物政治家の一族がオーナーを務める企業の店内、それは民○党の大物政治家の地元の支店で起こった事件だ。
現場従業員への徹底した緘口令と、
「こちらへも緘口令が?」
と、思えるような亡くなった遺族の悲痛な沈黙、事件発覚当日のお客への対応のまずさ、一転して、3000円の商品券をプレゼントしてまで集客するなど、オーナーとして考えても、客として考えても、ましては死亡した方と遺族の方の立場などを考えるとあまりにも痛ましく、現場の状況は胸が悪くなるようなことばかりだ。加えて、事件後数年に亘ってその時の記事を掲載し続けているライバル政党議員の連名ブログ、それは二つのライバル政党に暗に釘を刺したいのか、はたまた、江戸時代から続く老舗大企業を食い物にし、抜き差しならない状況に引きずり込んだ組織を糾弾したいのか、魑魅魍魎の気配が濃厚に立ち込め、怖気を誘うものだった。私は、何かしらの牽制の気持ちでその事件の報道記事を挙げているのかもしれないと、ふとそう感じたのだ。
動物や植物や妖精を愛する者には、
「この一連の流れは、いったいどこの星の出来事なの」
と、知ってしまった表と裏の顔を持つ社会の、あまりにも深い闇に、ただただ驚いたものだ。この頃は「イルミナティ」や「300人委員会」「カルト・セクト」」「ケムトレイル」などの怖気を誘う言葉とその意味も、一転して明るい「St.ジャーメイン」」「RV」「NESARA・GESARA」「光の銀河連合」「宇宙法典」といった胸躍るような情報も私は知らなかったのだ。
その報道記事を、職場にあった不可思議な「何か」の基調として作品執筆の為に検索し、やっと再び探し当てることができた。しかし、その時から、私のパソコンに異変が起こり始めたのだった。
屋久島の団地に暮らして2年、今ならわかる。その事件の背景、水源に遺体、それは故意の出来事だと。連中は、経験で知っていた。
72年前に屋久島に密入国した台湾流刑山海賊の若者殺人グループが、仲間を殺した後埋めたのが、乗っ取った営林署宿舎の裏庭の水道管の埋まっている傍だった。その時、プラスチック製の水道管がかすかに破断したことを知らずに、家で洗濯や飲用に使用していた。だんだん遺体が腐乱し始めて、水道管内にも異変が生じた。生活水として使用できないことに気が付いた。
今度の家は、別の安房川左岸の山の中腹に建つ真新しい営林署宿舎だ。そこを狙った。今そこは、屋○島警察の寮として使われている。
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