ウサギとカメ

@BlueCosmos

蘇る死

遥か彼方遠い未来

太陽が年を取り死を迎えつつある頃

我らが地球は、膨張する太陽に飲み込まれようとしていた。

青く輝く生命の楽園は、地上から人類が消えて幾星霜、動物の楽園となっていた。

しかし、消えた人類は滅んだわけではなく、生活の場も姿形も変え、ひっそりと慎ましく、冷たい楽園で生きていた。

冷たい楽園とは、軌道上に浮かぶ巨大な建造物。

太陽光を反射して眩しく輝く大量のソーラーパネルと、白く塗られた外殻が特徴だ

遥か昔、人が人のままだった頃に作られた、スペースコロニーのようなもの。

しかし中に詰まってるものは自然ではなく、大量の機械だ。

その機械こそが、現在のヒト。

ここに生きる人間たちは、機械化によって不老不死を手に入れ、時間すら忘れる長い間、享楽的に仮想世界で生きてきた。

肉体を捨て、電脳となり、理想の世界で苦もなく生き続ける。

そんな彼らに、ゆっくりと確実な死の恐怖が襲ってきた。

昔からわかっていたのだ。

いずれこの時が来ると、目を背けていたに過ぎないのだ。

外宇宙を目指して飛び立っていった同胞たちは、今どうしてるのだろう。

地球に誰か残ってないだろうか。

彼らは不安にかられ、意見を出し合った。

太陽系を脱出しよう。

しかしどうやって?

今までずっと楽しんできた、そろそろ生き疲れた。

何のために不老不死を手に入れたのだ、人間だった頃の苦労を忘れたのか!

外に進出した同胞に助けてもらおう。

そもそも何処にいるか、生きているかもわからないじゃないか!

静かに熱い議論が交わされた。

当然脱出論が多数であった。

しかし問題があった。

彼らは宇宙に浮く術は持てど、泳ぐ術を持たない。

基地の補修など必要な労働も、全てロボット頼みであり、その数も多くはなかったが、彼らに頼る他なかったのだ。

故障や事故で失われた個体を補充する程度の資源を、小惑星から調達してはいたが、大量生産出来るほどではない。

もう地球に頼る他なかったのだ。

長く使われないまま放置されていた地球帰還機にロボットを乗せ、地球に降下させ、資源を採掘する。

地球でロボットを生産し、労働力を確保する。

そして外宇宙探査船を作り上げる。

これがざっくりとした目標だ。

タイムリミットは1年。

電子人たちの戦いは始まった。



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