#これが読めるか勇者よ -急-

1


「MA-O!O-MA-E-WO-TA-OSU!」


「*の**…*れ***るか、勇者*」


「…?何-DA、それ-HA!」


「え…?**が*****のか?」


「お前-wo-TA-OSU-TAME-に

 HITA-SURA-教えRARETA-のはTUNE-に-戦いKATA-のみ!」


「…****待った。聞いて****。

 もし***今まで******、受け***?**では**?」


2


「当たり前だ!そんな暇は無かった!

 SEKAI-の-KIKI-のために-MINA-HA-は俺に戦い-KATA-を…」


「え、**、嘘**?」


「嘘なものか!」


「**と**けど、**は**…?」


「わからん!」


「お金の***は?」


「?たくさん-HARAEBA-良いんだろう?

 AITE-は大喜びだった!SASUGA、勇者様とな!」


「…!?」


3


「皆は困っていると聞いて-ITA-からな。

 お金と-YARA-は皆にたくさん払ったぞ!」*


「…**に今の**金は?」


「?荷物に-NARU-と-IKENAI-からとな。

 ここまで-NAKAMA-に-NATTE-くれていた-YATURA-に-WATASHITEOITA!

 良い-YATURA-だ!」


「嘘*…*か」


「時間稼ぎか?MAOU!TAOSU!」


「…*で**物は…?」


4


(*****************!!)


「あうっ!」


(この************が!!***************!!)


「ひっ!ごめん!なさい!やり!なおす!から!」


(**********は********と、言えと************が!!)


「ごめんな!さい!」


(この***********!たくさん***********というのに!)


「いたい!」


5


(***を、勇者に************!

****たくさん********と*********!!)


「ごめんなさい!ごめん!あっ!なさい!」


(*****!)


「や、やめて、それは…!」


(***は、勇者と*****のに!**********だ!!)


「ごめんさい!やめて!やだ!

 おぼえます!おぼえます!それだけは!」


(駄目だ!!)


6


「…いたい…」


[ああ、あれが例の…]


[子供ではないですか。本当に?]


[王も相当、せっつかれておりますからな…]


[しかし、大金払って、あれで本当に勇者になるのか?]


[…まぁ、無理にでもする、そうだ。

そろそろ仕込むらしいぞ?]


[前の勇者はそれで麻痺して、失敗したのでは?]


[今回も…]


7


「だれか…いたい…」


[死にかけではないか…いっそ死ねれば楽だろうな…見ていて気分が悪い]


[そういえば、神造奉仕語しか教えていないのか?]


[まぁ、妥当ですな。今やあれは、底辺の共通語。我等は良く分からん]


[獣の鳴き声の方がまだ可愛い。あれでは、酒を飲んだ後の酷い声だな]


[まったく]



8


「…TA-SU-KE-」


[…今、何か言ったぞ?]


[…誰だ、我等が使う尊民語の言葉を教えたのは?]


[いえ、そのようなことは。

一切の尊民後は教えてはならぬと仰せつかっております]


[怪物のようで、あれでも子供、やはり嫌でも覚えてしまうか…]


[頭に制限施術も考えねば]


[命令以外は理解できぬよう]


9


「いたい…ごめんなさい…TASUKE…」


[貴様!

誰の赦しを得て尊民語を喋っていいと言った!?

黙れ!!]


「ひっ!?」


>おいおい、殺す気か。

やめろ、これ以上支障が出たら俺が首を飛ばされる<


[勇者研究主任、教育を徹底せよと言ったはずだ。

…非常に気分を害する]*


>お言葉ですが…ていうか。

勇者は貴様等の見世物じゃないんでね…<*


10


「…?」


>大金目当てに祖先の秘法も技法も売った。

が、この研究対象は王と俺のモノだ。

これ以上、難癖つけるんなら…てめぇの脳味噌をな。

この、ガスガスと棒で引っ掻き回すぞ!!オラァ!?<*


[ひっ、ひぃ!?なんと卑猥!下賎な!

き、貴様、私に向かって]*


>文句があるなら、お優しい王様にでも言って来いよ。

勇者の完成遅らせたて困るのは…誰だ?あぁン!?<*


11


[お、覚えていろ!

魔王がそいつと相打ちになって、滅んだ暁には!

貴様を拷問にかけて処刑してやる!金の亡者め!]*


>へ、魔王が出てきても何の対策もとれなかった無能様だ。

無能のあまりトチ狂って、国を滅ぼすお手伝いでもする気で?<*


[き、貴様ァ…ここで即刻首を刎ねてやる!

下等で無礼なる者め!そこに直れ!]*


>へぇ、やってみろよ?<


「あ…■■■■…」


12


>おっと、お前は見なくていい、□□。

汚物が増える所なんて、な…<*


[汚物!?ゆ、遺言はそれか!

ええい、そのまま斬って…]


>アホが。

汝の憎悪は因果巡り汝に…!<*


[高貴なる一撃をくらヘッ…あ、へ?…ヒューーービューーー]


>あーあ、どこ切ってんですか?大失敗ですかー?

俺の首を切るんじゃなかったんですかー?<*


[ひ…ヒュッ、ビュボッ…]


[あわわ…な、何が起きた!?自分の首を…!?

ひ、ひえええ!?誰かー!?誰かっ!!??ひぃぃ!]*


13


>たく…今の俺は貴族様より上だっつーの、特例で。

ま、もう首だけになったら、分かんないでしょーけどぉ?

ザマーミロ、プゲラー♪<*


「■■■■…いたい…たすけて」


>あーぁ、折角、前に縫った傷が開いちまった!

たく、規格外の力をぶちこんだからと言ってもな…。

丈夫なわけではないっつーの!クソどもが!

…ほれ、まずは拭くぞ、顔を上げろ…<*


「う、うん…」


14


>…前みたいに、俺の言葉が理解出来てれば…。

こんな傷、さっさと術で塞がるのによ…。

対呪術対策に言語の理解も薄れちまった。

ますます言葉が限定される…たくッ!<*


「う、ごめん、なさい…」*


>あやまるんじゃねぇよ…。□□、お前は何も悪くない。

俺は悪だからな。魔王と同じような悪だ。

ほれ、消毒するぞ。暴れるなよ?今の俺じゃ…<


15


「いたっ!!??」


>ぐわっ!?<


「…あ、あ、あ…!

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!」*


>…あたた…。

やっぱ怪物級の筋肉は半端無ぇな…。

防御対策して正解だったぜ…<*


「ごめんなさい!ごめんなさい!

 いたいのだけは!ごめんなさい!」


>今のお前を痛めつけても俺が困るだけだ。

絶対に、やんねぇよ…。

これくらいの痛み、どうってことはないぜ?<*


16


「…ごめん…なさい」


>いいから、顔出せ。

…たく、よりによって、大事な顔をやりやがって!

優柔不断なバカ王に文句言ってやる…!

ここは見世物小屋や動物園じゃないってな!<*


「…■■■■…おこってる…?」


>別に。それよりも、注意しろ。

もう俺以外とは尊民語、喋るな。監視も厳しいからな…<*


「うん…」


>よし、いい子だ!素直すぎる!<*


17


「ぅ…えへへ…」


>□□、おめーが魔王をぶちのめせれば…。

ここからおめーを出せるかもしれん。

まぁ、俺もここから早く解放されてぇしな…<*


「うん」


>もう少しだけ…すまねぇが、耐えてくれ。

お前が生き残るには、それしか無いんだ…<


「…泣いてる、の?」


>ッ!ば、ばっか、泣いてねぇよ!へっ!<*


「…だって、顔が、その、痛そう…」*


18


>馬鹿な事を言うな!俺は無敵で大天才の■■■■様だぞ!

泣いたりするものかよ!いいか、兎に角、お前は勇者だ!

とっとと最弱魔王を倒して、自由になるんだ!いいな!<*


「…う、うん…わかった」


>よーし、そうだ。

忘れるなよ、お前には俺がいる。

絶対にな。絶対に…!<


「うん、わかった」


>よし、その調子だ<


19


<その子が勇者か?>


>その声は…王子か。なんだ、まだ仕上がりからは程遠いぞ。

見物ならまた別の機会にしてくれ。

こっちは繊細な作業の連続で大変なんだよ<


<まぁ、そう邪険にしないでくれ。

魔王を倒す勇者に、表敬訪問くらい良いだろ?>


>だったら待遇改善しろや。

どんだけ焦ってんだ、あの御人好し王はよ?<*


20


<前の勇者が魔王討伐に失敗の挙句、使い物にならなくなったからね。

今まで勇者を出せば魔王は討たれる。

その王道を潰され続けるここ数十年。王家への信頼もがた落ちさ>*


>人の良い王には相当堪えるだろうな…<


<僕としては心配なんだよ。

父として人として、王は確かに最高の人だと僕は思っている>


>で?<


21


<ただ王としての器は…正直、酷いものだ。

知識はあっても活かせる知恵が足りない。

選択肢を切り捨てる事にいちいち迷い続ける。

そりゃ、貴族もイラつくだろうし、信頼も低いだろう>*


>自分の親をそこまでボロクソに評価か。

あんた自身はどうなのさ?<


<僕かい?ここ最近の王家のイメージを覆したい>


22


>へぇ、かつての王権全盛のように?

貴族どもにあれこれ干渉されない?<


<どっちもさ。

だからこそ、今回の勇者にはすごく期待しているのさ。

ただ、王子である以上、計画に入り込めないのがね。

バカ貴族どもの玩具にされるのは我慢ならんさ>


>言うねぇ。

気に食わない奴だが、そう言う点は気に入った!<


23


<で、提案だ。待遇改善に繋がるかもしれない…。

と、僕は思っているんだが…>*


>言ってみろよ<


<もう一人の勇者を準備したい>


>…候補はいるんだろうな?<


<まぁね。

ただそこの子のような普通の素体じゃないけどね>


>…もしかして人造生命、とか言わねぇだろうな<


<近いかな。ただ、不足している物が>


24


>不足?<


<その子の…勇者の血を幾許か、譲っていただければ>


>血だけ貰ってこいつは用済み。

…にするんじゃ無いんだろうな?<*


<待遇改善と言っただろう?

血が戻る為の栄養、薬品、必要なら設備も提供しよう>


>へぇ、王子の分際で、血税を個人利用すると?<


<終わり良ければ全て良し。

結果さえ、ね。貴族も民も結果しか覚えないさ>*


25


>…最低でも一日の休みが条件だ。

流石に今日は傷が酷いし、出血も多い。

王子、あんたはその時間をあいつらに提案出来るか?<*


<…約束しよう。

僕とて、王家が沈む様を、自身が沈みながら見たいとは思わない。

能天気なバカにはなりたくない。

古き統一大国の支配者のように。

そう、歴史に名を刻みたいんだよ、僕は…>*


>結局、俗物だな、あんたも…<*


<ははっ、君も、だがね>*


26


「■■■■…?」


>…明日一日、痛い目にはあわない。

ゆっくり出来るぜ。飯も食える。傷も癒せる<


「ほんと?」


>ああ。

だがその後、お前の血を少し、分けてあげなきゃなんねぇ。

痛いかもしれないが…訓練よりはマシ…のはずだ…<*


「…分かった、それは我慢する。

 痛いの、耐えるの、得意だから…」


27


>□□…すまねぇな…本当に…<


<話はついたかね?>


>約束は守れよ?<


<ああ、利害は一致している>


>じゃぁさっさと誠意を見せな。

栄養ある飯、薬品、休む為の一式!

さぁ、さっさと耳揃えて貰おうか!<*


<王家の、そして僕自身の為なら。

その程度、なんと良心的…御安い御用だ>*


「…やった…眠れ…ぁ…」


>ああ、ゆっくり休め。お前は生き残るんだ…絶対に<*


「…スー…スー」*


28


(…■■■■…?誰だったっけ…?)*


(…思い出せない…)


(…抜け落ちた…)


(…ぽっかりと…)


(…久々の…食べ物…味が分からなかった…

けど…お腹は膨れた…)*


(…傷も痛みも…和らいだ…)


(…俺…って言ってる…

俺…真似たのかな…?)


(…これは夢…夢か…

やだな…あの時の事か…)


(…痛いのは…本当に嫌だ…)


29


{…?}


(…誰…?)


{…□□…}


(…よく…分からない…

そこだけ…聞こえない…)


{…■■■■…}


(…聞こえない…

なんで…それも…聞きたいのに…)


{…!}


(…何…?)


{…!…!}


(…欲しい…?)


{!…!}


(…何が…欲しい…の…?)


{…!…!…}


(…え…)


{!!…!!}


(…やだ…やめて)


30


{!!… O M A E N O

C H I T O N I K U

Z E N B U Y O K O S E …!!}


(や、ヤダ!!!イヤ!!!

だれか!!!助けて!!!助けてっ!!!!)*


{!!… O M A E H A

N I S E M O N O …!!}


(痛い!痛い!やだ!

持っていかないで!俺の中を!)*


{!!… W A T A S H I G A

Y U S Y A …!!}


(嫌だ!)*


{!!…MORAU…!!}*


(あ…あぁ…血が…お腹が…)*


31


《ぎゃぅっ!!??》


「あ、ああああ…やだ…!

 やだよ…やめて…お願い」*


【どうしたの!?】


「…あ…あ…か、かあさん…!

 俺…お腹…あるよね!?

 血もあるよね!?ねぇ!?」*


【あるわ!どうしたの!?

 落ち着きなさい!】


「あぁぁぁー!死んじゃう!

 助けて!俺が死んじゃう!俺、死ぬ…!!」


32


《ぎゃ、ぎゃおお…!?》


「死んじゃう…。

 俺…死んじゃう…助けて…」*


【おちつきなさい…

 大丈夫、私はここにいます…私に抱きつきなさい。

 力の限り!】*


「あああああぁぁ!!」


【ぐっ…!ここれは…!

 異常なほどの力…これが勇者の力…!?】*


[な、何事じゃ!?]


【ぅぐっ…何かうなされて、突然…!】*


33


「やだっ!!いやだっ!!!」


「我、びっくりして起きたぞ!?

 どうした!?って、勇者、一体どうした!?

 あと潰されそうな拠点さんは大丈夫か!?」*


【私はいざとなれば流体になれば大丈夫です…!

 うぅ!?が、何です、この異常な力…!】*


「ああ、血が、血が…死んじゃう…!」


【聞きなさい!大丈夫!

 血は出ていない!生きてるわ!】


34


「ひっ…やだ…流れて…く…」


【…善い子。

 あなたは、善い子…大丈夫…私がいるから…。

 さぁ…大きく…ゆっくり…息を吸って…。

 善い子、善い子よ、大丈夫。

 怖いものからは、私が守るから…】


「ひっく…ひっ…ふ…」


【-お月様がいるわ-

 -お星様もいるわ-

 -大丈夫、夜は暗くない-

 -私が傍にいるわ…-♪】*


35


「拠点さ…」


【大丈夫です】


「分かった」


《ぎゃぉ…》


【-こわいものなんて-

 -私がふっと消してあげる-

 -大丈夫、みんながいるわ-

 -可愛い、善い子、私の子-♪】*


「…あ」


【-だから、ぎゅっとしなさい-

 -ぜんぶぜんぶ、私が包んであげるから-♪】


「あ…ぁ…かあ…さん?」


【-ええ、そうよ-

 -私がいるじゃない-♪】*


36


「かぁさ…ん…」


【-大丈夫、私がいるわ-

 -善い子よ、善い子よ-

 -善い夢を-♪】*


「…スー…スー…」


「…寝た?」


《ぎゃぅ?》


[寝おった…な。

子守唄…かなり古い時代の…私が幼き頃。

そう、古い歌を好んでいた…。

長寿であった祖母様が、歌っていたそれと同じ…]*


【…ええ、あなたからすれば古い時代なのでしょう】


37


[やはり…そなた…いや、あなたさまは…]


【いいえ。今の私は魔王様や勇者様のお世話人。

 それ以上でもそれ以下でも御座いませんわ。

 拠点統率サーバントで御座います】


「…勇者の体に異変は?」


【異常なほど無理な力を出して…。

 数箇所に軽微のヒビ骨折、小さな筋肉繊維の損傷…。

 ですが、すぐに治療可能です】*


38


《ぎゃおー?》


【大丈夫。もう寝てますわ、精霊獣。

 先程は痛かったでしょう?】


《ぎゃ、ぎゃ、ぎゃお》


【あなたも優しいですわね。

 ほんと、その優しさは勇者と双子のよう】*


《ぎゃぉん♪》


「うん…とりあえず、朝まで寝かせてやろう。

 ではお守り、拠点さん、よろ!」


【ええ、承りましたわ】


39


<僕の愛しき姫よ…我が勇者よ…目覚めるのだ…>


{??}


<やっと起きたか。全く、まさか寝ていたか?>


{!!}


<まぁ、その寝顔を見れたのは幸運だったかもしれない。

とても良い夢でも見たのかね?>


{…!…■!}


40


<とても御機嫌のようだね…。

僕もその夢を見てみたいね…。

素晴らしいものだっただろうに>


{…■!■…}


<そろそろ一度、駄目になった勇者と。

そしてキミが、どちらが華麗に舞えるか、見てみたくなって来たよ。

貴族のお付の兵士、騎士では…うん雑魚過ぎた。

折角のお披露目なのに、キミの強さが圧倒的。

イマイチ分からなかったからね>*


{?…■…?}


<…舞踏会。ガラスの靴を用意しよう、キミの為に>*


41


{!!…!!}


<綺麗に着飾って、招待状を送ろう。

きっと来てくれるよ…>


{!■!■!!}


<合えるのが楽しみなのかい?

いいや、言わなくても分かるよ。

僕にはキミの事は何でも分かるからね。

愛しき僕の姫、僕だけの勇者…>


{♪}


<やはりキミには声を与えるべきだったかな?

失敗だったな、これは…>


42


{~♪~}


<…ふふふ、本当にキミは無邪気で、純心だ…。

無垢なる勇者、まさに我が王家に相応しい!

ああ、これで僕は歴史に名を残す、偉大なる王になれるのだ!

この乱世を真に導くのは、勇者でも魔王でも無い…この僕だ!>*


{!■!!■!}


<ああ、早く黒いだけの仮面の中を早く見たいよ。

きっと、きっと>


{?}*


43


<きっとその仮面は花嫁のヴェールなんだろうな…。

ああ、僕を焦らすなんて…最高の姫、麗しき勇者…。

早く本当の顔を僕に見せておくれ。

そして熱い口付けを交わそう…!>*


{…?…}


<残った貴族達を徹底的に忠誠を誓わせよう。

今までの王家はもう無い事を知らしめよう。

恐れるのは魔王でなく、この僕だと>


44


{…}


<おっと、ごめんごめん。

僕ばかり話しちゃってごめんよ。

さぁ、僕がエスコートしよう、着いてきてくれ…>


{■}


<照れているのかな?

ああ本当に戦闘能力からは想像出来ないギャップ…。

非常にタマラナイ…!

僕を、こんなに魅了するなんて…キミは最高だよ!>*


{…■}


<僕は幸せだナぁ…>*


45


「おはよー…」


「おぅ、おは…って寝癖すごっ!?流石に我、びっくり!」


【あら、おはよう。

 顔を洗って、髪を整えましょうね。

 さ、こっちよ】


「ふぁーぃ…」


《ぎゃーお》


「あ、精霊獣も…

 おはょ…ぐにゅー」*


《ぎゃお、ぎゃーぉ!?》


【こらこら、枕じゃないんですから。

 ほら、顔を拭いて】


46


[おはようじゃ]


「あ、おうさ…じゃなくて…。

 せんせい、おはよう…むにゃ」*


《ぎゃっお!?》


「勇者、それは窓だ、先生はこっちだ。

 それは精霊獣で朝ごはんじゃない。

 我、そこまで勇者が朝に弱いと思わなかったぞ

 弱点なの?」*


「なんでか、俺、すごく、つかれてる…」*


【…色々とあったものね。

 さぁ、朝ごはんですよ、席に座ってね】*


47


「…あー…」


[これ、勇者。食べる前には、まず感謝の祈りじゃ。

ほれ、魔王もちゃんとやっておるぞ?]


「やらないと、拠点さんがね…。

 我、怖い思い出…」


【-あらゆる命は次の命の糧となり-

 -またその次の命の礎-

 -それは己も含めて、断つこと出来ぬ連鎖-

 -数えきれぬ命の記憶、忘れませぬよう-】*


48


「…勇者、確認しておきたい」


「むぐ、ごっくん…何?」


「本当に…最初からお前は文字が読めない。

 一切、習っていないんだな?」*


「うん。簡単な言葉なら…えっと」


「神造語か?」


[…古き時代、神々が力無き者…。

つまり我々の祖先達に、与えし幾つかの言葉…]*


「へぇ、知らなかった。そんな話」


49


[神造りし偉大なる言葉。

それを力無き祖先たちは意志を伝え合いこれで団結をし。

祖先達を襲う力ある脅威を、言葉を巧みに用いた。

言葉から知恵をつけ知識を武器とした。

そしてついに見事その脅威を追い払った…という]*


「我が知るその末尾は…

 -しかし今や神造語と言う奴は殆どいない-…か?」*


[然り]


「え、どうして?」


[それはだな]


50


【世界創世の神々、連なる神秘への敬意の薄れ…。

 世に生きる命達と神話との別れ、団結から諍い、争い。

 やがてそれぞれの独自に言語を造り出した。

 世界はひとつの塊から多種多様へと変貌した…】*


[まさにその通り。

流石は私より永く生きている御方じゃな]


「?…なんかよくわかんない…?」


「だろーな…」


51


[つまるところ、神様の下で仲良く生きておったのだ。

だが、自分達が強くなり他に怖い奴等がいなくなった途端。

今度は誰が一番か、偉いのか、大喧嘩をしてしまったのだ]*


「仲良くしていればいいのに…」


「偉大なる神様から離れ…。

 自分達の足で歩き生きていく以上、避けられないものなのさ。

 我欲に目覚めた、命の宿命ってやつか」*


52


「なんでさ」


「じゃぁ王様ってのが何故いると思う?」


[そうじゃな]


「…えらい、から?」


「その偉い奴じゃなきゃ、国は纏まらない。

 実際には役に立たないだろうが、裏で支配されていようが。

 どんな形であれ、顔になる奴がいなきゃ…。

 集まりはすぐに崩壊する、あっさりとな」*


「そんなものなの?」


[大体はの]


53


「ふーん…で、魔王、何で俺に文字の事を?」


「お前に殺されそうになった時に言っただろ?

 これが読めるか、勇者よ!って」


「…そもそも、その言葉の意味が良く分からなくて」


「あー…二重にアウトじゃん!

 我、負け確定してたじゃん!

 読めても意味さえ理解できてなきゃ!

 意味無いじゃん!怖っ!」*


54


「あ、そだ、ねぇ教えてよ!

 いい加減気になってる!

 ねー、あの文字の意味!」


「言ったろ。

 自分で字を学んで意味を知り、自分で読め。

 答え合わせはその時にしてやるよ」*


[…ほっほっほ。

そろそろ温かいごはんが冷めてしまうぞ。

食事に戻ろうかの]


【ええ。

 温かいうちに美味しく食べなさいな、お二人?】


55


「ちぇー。頑張って読んでやるもん!

 俺だって頑張って学ぶんだ!」


「おーおー、その意気その意気。

 しかし何年かかるだろうかなぁ~?」


「そんなにかからないよ!ひどいな!」


「へへー、学友の心配しただけなんですけどー」


「せんせい、がくゆうがいじめてきます!」


[ふむ、宿題は倍にしよう]


「 」*


56


「…魔王?」*


「ナ」*


「な?」*


「ナンデ!?ヒエエエエ!?

 シュクダイバイ!?ナンデ!!??」


「あ、魔王が怯えてる」


【ええ、過去に私が色々と…。

 その、教えた時に色々と御座いまして…】*


[ほっほっ、冗談じゃて。

さて、身なりをしっかり整えて、授業に備えなさい。

私は授業の準備してくるわい]*


「俺も髪の毛直さなきゃ」


「ナンデナンデ」


57


[…時に、魔王]


「…先生シュクダイバイコワイ」


[宿題は倍にせんから落ち着け]


「…何だ?」


[私に今の内に押しえておいてくれぬか?

勇者に何を読ませようとしたのか?]


「…あいつには絶対に言うなよ?

 あんたには、何の意味も成さない呪い、だ」


[して、その中身は?]


「…いいか、絶対に教えるなよ」*


58


「どう、精霊獣?

 俺のこの服!学生の服っていうんだぜ?」


《ぎゃう?》


「あ、おかーさん、俺の、どう?」


【んー、私のセンスは最高…アフン!

 いや勇者が最高すぎるのだわ…アフン!】*


「またとけてるー」


【サイキドウ…ふふ、やはり侮れないわね。

 善き善き尊い尊い…服の一部になりたい…。

 あぁ、既に服は私の一部でした…クヤシイ】*


59


「学ぶために服もかえる必要があるんだね。

 俺、こういうの好きかも」*


【衣服を目的に合わせて取り替えるのも大事な事。

 気持ちの切り替えだったり、自分が何をしたいのか。

 皆にどう見られたいか…色々と理由はあるものなの】*


「そっか。

 おかーさんがごはん作るときとか、洗濯物のときとか。

 そのたびに色々とかわるよね。どれも俺、好きだなー」*


60


【本来の私には必要無いのですけどね。

 一度服装と言うものを知ってしまって…。

 ついつい研究してしまうのです。

 気付いたら私の中にいろんな服のデザインが…】*


「へー。服ってそんなにあるんだね。

 あ、でも確かに、おうさまとか、すごい服着てたよ。

 今はせんせいで、格好もおじいちゃん、だけど」


61


【たしかに、すっかり、普通のご老人ですわね…。

 ふふ、勇者、ちょっといらっしゃい】*


「何?」


【髪をもう少し手直しさせて。

 最初の授業ですもの、きっちりしとかなきゃね】


「えへへ、くすぐったい。

 でも、俺、こういうの好きだ。嬉しい。えっと…」


【気持ちがよい、というのですよ、そういう時は】


62


「気持ちがよい、か。

 俺、かーさんにこうやってもらうの、気持ちいいな」*


【アフン…レジスト…セーフ…。

 そう言われると嬉しいわね、私も】


「?一瞬とけてたけど大丈夫?」


【大丈夫よ、ええ、大丈夫、はい】


「…髪を綺麗にしてもらうと、俺さ。

 こう、なんか世界が広く見える…明るく見える」*


63


【それは良かった。

 その明るくなって見える世界を…。

 よく見て大事な思い出にしてね】*


「おも…おもいで?」


【心から大事にしたいと思ったこと。

 あなたが忘れたくないこと。

 心から嬉しい、楽しい、良かった…。

 そのようなもの】*


「じゃぁ、今がまさにそれ、思い出にする!

 俺とかーさんの思い出に!」


64


「内容は…************…だ」


[…ふむ。

その呪い、実際にかかったとして…。

効果は…ゾッとするの。勇者限定であるが]*


「ふ、元は勇者を送り出した王であろうアンタなら…。

 分かるな?我的に御理解が早くて助かるよ」*


[…だが、あまりにも限定的だの。

万が一、勇者以外の者が来ていたらどうする所だった?]


65


「最弱とはいえ、我は魔王ぞ?

 対魔王殺し持たぬ、有象無象では我を滅ぼす事は叶わぬさ」


[…そしてお主は勇者殺しを持っておると]


「その通り…だが、あいつの寿命はあんまり長くは無い」


[…そうであったか…]


「短期間で、何十年分の成長をぶち込むんだ。

 その強制的な成長に体がついていける訳が無い」*


66


[そうで…あるな…]


「だから寿命を代償に…。

 本来ならあの年齢で背負えるわけが無い力…。

 凄まじい力を無理矢理に背負わせている…。

 だから我が考えるに、あと2回か3回くらい戦えば…。

 それで肉体が自身の力で崩壊する。

 我が…魔王としての勇者殺しで、手を下すまでも無く」*


[…もっと早く過ちに向き合うべきであった]


67


「ま、過ぎた事を反省はしても…。

 起きた事をギャーギャー騒ぐのはみっともない。

 あんたにゃ、死ぬまでにアイツに勉強を仕込んでもらう。

 我にはあいつに関する事をみっちり聞かせてもらう。

 いいな、元王」*


[…あいわかった。命尽きる時まで]


「先程のあいつに読ませようとした呪い…。

 それが完全になる為にもな」*


68


<…本日の政務はこれにて終わりだ。

忠誠厚き者共諸君、御苦労であった。下がれ>*


[ハッ!]


<ふむ。

皆、ようやく誰が王で誰が国を動かすか、分かってきたな…。

王権完全復活にはまだ遠いが、この一歩は大きい>*


{~♪~}


<退屈させてすまないね、姫。

舞踏会の練習もさせてあげたい所だが、まだ不安がある>


69


{?}


<キミの一日の行動時間上限、まだ半日が良い所だ。

それ以上の稼動は肉体崩壊の可能性もある…。

やはり、あれの血肉がないと不安定か。

あんな混ざり物で、不衛生極まりない、あんな低俗勇者のな!

…だが薬と思えば、まぁ、おぞましいものもあるからな。

ふむ、いた仕方あるまい。キミの為だからな>*


{!…?}


70


<薬は苦い、不味いもの。

しかしそれでキミが今よりも完全になる為なら…。

私は多少の苦労など気にはしない。

早いところ、今の魔王を滅ぼし、世界の祝福をこの国に齎さねば。

私こそが偉大なる王として!死後も永遠に称えられ!

やがて神と同等に祀られるために!>*


{~w~}


<ああ、勿論キミもその隣に語られる>


71


{…x…}


<とはいえ…目的の魔王と勇者…。

父上の誘拐を境に完全に反応を消すとは困ったものだ。

世界から預かった大事な天秤の役目から消えるとは…。

やはり最弱、欠陥では重荷となったか。情けないものだ>*


{…z…}


<所詮は呪い特化型の最弱魔王。

キミは奴に対し完全に無敵だ。

あの空飛ぶ怪物もキミの足元に及ばない。

何にせよ、力押しで完勝完封出来るだろう>*


{_…_}


72


<僅かな希望にかけて、運や偶然に頼った攻略?

そんなもの、ゴメンなのだよ。

神のサイコロに振り回されるなど!

そんな運命の奴隷に成り下がるつもりは無い!

相手が1であろうとも99で挑む!

最高の装備、最高の条件!

それこそが力ある正義なのだ…!>*


{zzz}


<大丈夫だ。

国の全てを使ってでも、確実に成功する。絶対にな>


73


{z…z}


<そう、たとえ、どんな手段を使ってもな。

僕は父上や歴代の無能な王どもとは違う。

祖先が、神からもらった神造語の力で…。

強大な国を創りあげた、統一された世界を!

再び現代に蘇らせ、全てを握る…!

世界の天秤を手にし、勇者や魔王の力を使ってでも>*


{_…_}


<そう、僕の全てはキミに捧げよう!姫!>*


74


{!x?}


<はは、驚くことは無い。

愛しの我が姫、何よりも高潔で最強の勇者。

僕の願いを叶えてくれる、神よりも尊き存在…!

それがキミだ>*


{■?■}*


<しかし、キミを完全にする為の計画…。

やはり欠陥勇者に施術した勇者研究の主任…。

手足を落としても、命だけは助けるべきだったな。

珍しく僕が気に入った奴であり…事故死は痛かった>*


75


{!…■…■…■…■}


<王の剣よ、我が手に…>


{!…!}


<王家に伝わるこの王の剣…。

いかなる場所にあっても、王の手元に真っ直ぐ戻ってくる。

古き時代の統一大国の時代…。

支配者が神から賜ったモノとされている。

本当は王冠、王杖もあったのだが、今あるのはニセモノ。

残念ながら、その行方は今や不明だ>*


{?…?}


76


<本物を再び王家へ取り戻し。

かつての古き統一大国の支配者の血統は未だ絶えておらず。

再び世界は一つにまとめあげられる…神造時代の再来。

取り戻すためには、憂い無く安心して世界を巡れるよう。

周囲全ての敵となる脅威は排除せねばならん!>*


{!!…}


<故に、魔王を滅ぼし…。

キミという完全なる勇者で支配しなければ>*


77


{♪~}


<姫?ど、どこに行った!?

ああ、何を追いかけているんだ!?

だ、駄目だ、虫なんて追いかけてはいけない!

下等生物に関わってはいけないよ!!

というか、こっちに虫を…ひっ、蜂!?

やめてくれ!蜂蜜は好きだが蜂は苦手!!

というかマオウバチじゃないか!!

そいつに刺されたら顔が膨れる!!>


78


{~~♪}


<あー!!勇者様!!困ります!!

あーっ!!蜂は困ります!!

あー!!姫、困ります!!

あー!!ヤメテー!?ハチコワイーーー!!

あっ>


{_!x!}


<刺されたァァァァァァ!!!!???

い、痛いッ!ひ、顔が焼ける!?

助けてッ!?アイエエッ!!??

ナンデ、ナンデ!?誰かー!?>


{_w…}*


#これが読めるか勇者よ -急- 終了


次回、-起-(予定)

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