voyage

やぁ、お嬢ちゃん。今時ヒッチハイクなんて珍しいじゃないか。


あらおじ様、もしかして乗せていってくださるの?


そりゃあんた、こんな所で手をずっとあげて待っている訳にも行かないだろう?どこまでだい。


そうね、この地平線の端っこまで。私この星の端っこを見てみたいの。


そうかいそうかい、そりゃ景気がいいね。いいだろう、俺が連れてってやろう。


まあありがとう、おじ様。私今まで旅なんてしたことなかったもの、とっても楽しみなの。


旅は楽しい事ばかりではないよ、大変な事だって沢山あるんだ。


そうなのねぇ、難しいものだわ。

それはそうと、おじ様はお目目が沢山あるのね、色んなところを見ることが出来るから便利そうだわ。


おっ、目だけにお目が高いじゃねぇかお嬢ちゃん。俺のこの目は何処までも見通せるんだぜ?


何処までも?本当かしら。じゃあこれから行く地平線の端っこも見えるの?


ああもうそりゃバッチリ見えとるよ、早くお嬢ちゃんにも見せてやりたいねぇ。


そんなに見通せるなんて、羨ましいわ。私他にもお手手が4本ある方にもさっきご挨拶したのよ。沢山ものが運べていいわぁ。


そんなこと言っても、お嬢ちゃんの腕は2本だろう?目も2つだ。そう他の人ばかり羨むもんじゃないよ。


そんなものかしら。まあ私は今持っているもので十分だわ。沢山持っていても持て余しちゃいそうですもの。


ははは。早いもんさなぁ、こうやって話をしていたらもう着いたところだ。


ねぇおじ様、地平線ってどんな味がするのかしら。食べたことはあって?


おいおい、まさか舐めでもするつもりだったのか?とんだじゃじゃ馬を拾っちまったもんだ。


いいじゃない、最後ですもの。なんでもこの五感で試して見たくなるものよ。


そういうもんかねぇ。で?味の感想はどうよ。


うーん、香りはお味噌みたいだけれど、意外と味はないのね。てっきりチョコレゐトだと思っていたのに。おじ様もどうぞ?


いんや、俺は遠慮しとくよ。俺には味覚がないからなぁ、味もわからないのさ。…そろそろ時間さね、満足したかい?


…みんなおじ様の事を黒い悪魔、だなんて言うけれど、私にとっては天使だわ。だってこんなに楽しい旅路でしたもの。また連れていってね、おじ様。


そりゃ光栄だな、お嬢ちゃん。…新しい世界が怖くはないかい?


ええ、見くびらないで欲しいわ。私はいつだって貪欲なのよ。向こうでも沢山面白いものを見つけて見て回りたいわ。


そうかいそうかい、それじゃ向こうでも良い旅が出来るように祈っといてやろう。では人間のお嬢ちゃん、Bon voyage!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る