第46話明日も知らぬ道程

ホウオウドラゴンを倒してから

噂が広がった。広めたのは受付嬢だろう。7日が経ってもその熱は収まるどころ知らず。

外に出れば、すぐに握手を求めたりサインしてくれ!など

アイドルのような扱いだった。

俺は、それさえも無かったよ。

なにが、悪いんだ。俺が倒したのにそれを言ったら疑いの目を向けられるは、笑われるなど。


「やってられるかあぁぁぁー!」


ギルドに出て俺は大空に向けて叫んだ。


「ど、どうしたんだよ。

なにか変なものを食べたのか?

病院に行こうぜ!なぁ?」


優しく声を掛けるはグッズ化、

小説のモデル、親衛隊(ファンが勝手に結成した)など今が人気で輝いているアマリアだ。

やや乱暴な言葉だが優しい声音と

表情。このギャップで萌えたのだろう。俺は、目をキッと鋭くする。


「自惚れるなよ!お前がチヤホヤされるのは俺のおかげだからなぁ。いつか、俺がアイドルとして頂点に降臨してやる。

今は、その仮初のいただきに満足するんだな!くっくく、あははは!!」


指をつきつけ、高笑いする。

いつか、アイドルとして上に行く。そう、それで世界の美少女に

もてはやされるためにだ。


「よ、よくわかんねぇけど。

ほら、行くぞ病院に!

ちょっとタカノリを連れていくから!」


俺の腕を引いて走るアマリア。

何を言っているか聞こえなかったが、告白だろう。なら行こう。


「ちょ、ちょっと待った!

正常だよアマリア。

だから待って。タカノリは

支離滅裂が正常なんだからぁ!」


エリーゼは、正常だって声を上げ止めようとする。理解してくれて

嬉しいよ。でも、傷つく。

ドクターに健康ですねと笑顔で向けられ乾いた笑みを作る羽目になった。アマリアには過剰な心配する部分がある。次からは、不安にさせない騒ぐとしよう。


「ふわぁー、眠たい。

早く帰ってブドウ摂取して寝る!」


「朝からバカなことやって

何を言っているのよ」


脱力での気合に、水を差すは

半眼のエリーゼ。


「これでも気合を入れていたのに、邪魔をするなよ」


「はぁ!それで気合って・・・」


呆れため息をする。ぐぬぬ、今回は反論ができない。実際に自らの発言に少しそう思っているから。


「おや、そこにお居られるのは

エリーゼ様ではないですか?」


ギルドの道すがら広場の中央に佇む青年がエリーゼの姿に瞠目した。

青年の容姿は整えて過ぎる。水色のミディアムヘアに群青色の瞳。

豪奢な格好は、過度な輝きはなく

そこが余計に品位を表している。


「し、知り合いなのかエリーゼ」


「・・・・・」


耳元で囁くが、返事はない。

エリーゼも青の青年に驚いていた。まぁ、通りすがりの人も

視線の的であるし・・・エリーゼも

その端正な容姿に心を奪われても不思議ではない。な、なんか

よく知らないけど青の青年に憤りを覚えるのはイケメンだからであろうか。


「やーい、エリーゼ様になんか用でもあんのかよ。あぁ?」


「ちょ、喧嘩を売るなよ」


裾を引っ張り止めるのはアマリア。


「止めるな!これは・・・・・なんたろう?」


「そりゃあ、こっちが聞きてえよ!」


「ごもっとも」


アマリアの言葉に冷静さを取り戻した。止めた側は、何を言っているんだっと顔に出ていた。

目の前で寸劇を始めたことに青の青年は表現を変えずに前に進み近づく。


「おっ、やるのか?へへ、ここ一帯では変人として名を知れ渡っている俺に戦えのか?」


「マジで落ち着けよ!」


拳を軽くジャブして、戦闘の構え

青の青年は横へ通りすぎる。

あ、あれ?見ていないだと!?


「エリーゼ様。家出はこれまで

です。お帰りになってください」


「イヤよ。帰らない!」


青の青年は、最初からエリーゼを見ていて他は歯牙にもかけていなかった。


「一体なにが、どうなっているんだ?」

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