第42話エリーゼと葡萄

オリヴィアは、ミステリーな神官と

俺と相棒のエリーゼはそう結論した。

そんなわけで、尾行を始めました。

いい子は、絶対にしないでね。

ちなみに悪い子もだよ。絶対にだよ。


「さて、いい子も悪い子でもない

混沌のさかいに住む俺から

すれば、それは属されない。

くくっくくく」


「ねぇ、バカな呪文の詠唱開発中に

申し訳ないけど静かにして

くれない?

見つかったら、どうするのよ

ストーカーキモいタカノリ」


俺とエリーゼは曲がり角を発見され

ないよう身を隠してそっと見ては、

次の隠れ場所へ慎重に進んでいたの

だけど、途中から飽きてきてエリーゼ

と話を少しずつ増えていき

こうなった。うん、こうなった。


「はぁ!?

キモくないし、キモくない!」


「わ、分かったわよ。

ほら、これをあげるから許して

ねぇ」


エリーゼは、懐から葡萄味の飴玉あめだまを差し出した。


「ふん、これで許せたと思うなよ。

・・・やっぱり、秀逸な味だ」


「フフ、本当にブドウが

好きなんだから」


噴き出す甘さの宝庫に心まで蕩けて

いると、エリーゼは微笑んでいた。

コイツ、時々こんな顔をするよな。

まるで、一人前のメインヒロイン

みたいにだ。


ふん、俺は甘えさせてくれる

巨乳で上品でお金持ちの美少女が

好みなのだ。エリーゼとは真逆。


「あっ!あれ、タカノリ。

オリヴィアが、柄の悪そうな人に

声を掛けられているわ!」


「・・・エリーゼ。

助けにいこう!」


「ええ、そうね!」


ガラの悪い男は、どう見ても盗賊。

人数は5人で、リーダー格らしき

人は筋肉隆々で棍棒を肩に乗せて

すごく威圧的。


あの筋肉は、絶対にドーピング使用

してるなぁ。

その前に異世界にあるわけないと

思うけど鍛えたならスゴイ。

なりたくはないけど。


「待って!有象無象のやからよ!」


俺は、腰の剣の柄を握り抜刀はせずに

魔石を取り出す。


「ああ、なんだてめぇは?

文句でもあんのか、あぁ!?」


リーダー格の格下さんは、

なんて形容すればいいのか普通にいる

盗賊だった。凄んで見せてきた。


それも普通で威圧が平均的のように

思えた。だが、俺のような戦争や

暴力を知らない俺からすれば

十二分に怖かった。


「ひいぃ!?

コイツヤベェよ!クソ、

覚えてろよ・・・ことで

そちらのキレイなお姉さんを

開放させてくれない?」


「あっ、ダメに決まってんだろうが!コイツは、仲間を壊滅させたんだ。

敵討ちに来たんだよ!」


フツウ(普通なのでそう呼ぶものとする。これ言いたかった)はオリヴィア

さんを睨んでいた。


「お二人とも、私のために

ありがとう。でも一人で

大丈夫ですわ」


ヒーラーのオリヴィアさんが

盗賊の5人に相手は危険だ。

たとえ戦えるヒーラーでも。


「大丈夫よオリヴィアさん。

ううん、オリヴィア。

わたしとタカノリがこんな奴らに

負けないわ」


「へっ、そういうことだぜ

オリヴィアさん。

俺は、絶対に仲間を見捨てない。

よし!エリーゼ前は任せた。

俺は、後方で敵を攻撃するぜ」


赤い魔石を投げ、叫ぶと相棒は

失笑する。


「ぷっ、フフ。それって

意気込んでいる割りに後ろで

攻撃って、恥ずかしくないの?」


エリーゼは、敵の懐へ入った。

魔法ロープなのに相変わらず

末恐ろしいやぁ。

そして、杖を鳩尾にドンッと鈍い

音が聞こえる・・・痛そう。


「ぐべぇあ!?」


世紀末よろしくな断末魔を上げる。


「この女、魔法使いのくせに

前へ出てきやがって。

なめんしゃねぇぞ!!」


いえ、エリーゼは魔法使いを被った

生粋で一騎当千、剣の達人です。


「おりゃああ!!・・・な、なんだ

この睡魔・・・は・・・・・ぐぅー」


俺が投げた時間差で起動する

赤い魔石だ。

範囲をエリーゼに影響を受けない

よう散布したのだ。


他の男も倒れ俺はスコアでいえば

ふたりを倒せた。残りは二人。


「ひぃ!?あ、兄貴ぃぃ」


「お、おちつけ!こういう場合は

オラ!止まれ、コイツの首を

飛ぶことになるぞ」


大男は、オリヴィアさんに

大剣を向ける・・・卑怯な。


「なんて卑劣を」


憤るエリーゼは、睨むことしか

てきなかった。

俺も似たような表情だろう。

このままては・・・不利だ。


「ふぅー、もう終わりですわ」


オリヴィアさんは、そう言った。

おとなしいオリヴィアさんなのに

一種の恐怖を覚える。


「なに、言っているんだよ!」


「てすけど、説明ができませんの。

悪しからずに」


オリヴィアさんは、回復として

使用する杖を大男の立派な

上半身を攻撃されても・・・


「ぐはぁ!?

バ・・・バカなこんなのとか!?」


大男は、地面に崩れ倒れる。


フツウさんは、ヒィ!と悲鳴を漏らし

て見事な尻もちをついた。

勝負はついたようだ。


「へっ、どうだフツウ!

これが、俺の実力だ。どやぁー」


「いや、タカノリは

催眠系の魔石を発動した

だけでしょう。

わたしやオリヴィアで活躍したのよ」


「フフ、やはりお二人さんは

仲がよろしいようで。

タカノリ、よろしければ

助けてくれたお礼にいいブドウを

使ったお店を知っていますの」


いい葡萄・・・いいブドウ・・・・・


「その、オリヴィア。

あなた神官の上に近接戦闘の

心得をあるのは頼もしいわ。

でも、卓越し過ぎている・・・

信頼が無いと思うけど説明して

くれない?」


小さな穴のような疑問でも見逃さない

と印象を与える金髪碧眼様のエリーゼは、今日も遺憾なく

慧眼を発揮する。

そ、そうだった。葡萄よりも

オリヴィアさんの事を知らないと

いけない。


「ええ、お話をしますわ。

いつかは・・・まずはお食事を

しませんこと?」


「そうね。お食事をゆっくりと

食べながらで、

お互いの事を話をしましょう」


オリヴィアさんも、こういう

駆け引きをするのか。

みんな、仲良くすれば思ったことを

吐き出せばいいんだけど。


「ふふ、そうですわね。

エリーゼも気に入ると思いますわ」


朗らかに笑うオリヴィアさんに

笑顔のままエリーゼは頷く。

そして、俺に近づき囁く。


「毒を盛るか、盗賊の可能性が

あるわタカノリ。

だから、いいかな?」


なるほど。エリーゼは、

オリヴィアさんを警戒している。

牙城に単身でいや、二人で入る

のだから耳元で囁いているのか。

少ない情報量のセリフだけで

理解する俺も驚きだ。

こんなに阿吽の呼吸だったかな。


「訊いてくださいまし、

そのブドウですけど高級食材の

逸品なのですの。

ですので、タカノリが好きな

ブドウジュースやブドウ料理の

フルコースを堪能できますわ」


オリヴィアさんは、満面な笑みで

俺に愛情を込めた声で言う。


「残念だけど、タカノリは

そこまではしゃぐような―――」


「ひゃほー!葡萄だ、ブドウだ!

ブドウだぁぁぁーー!!

オリヴィアさん早く行こうぜ!」


いざ、いかん!ブドウエデンへ。


「ちょっと、タカノリ!!

ブドウなんかで理性を失わいでよ!」


「理性?何を言っているんだよ

エリーゼ!

ブドウエデンへの道が見えたんだ。

迷っていると、自分を失うぞ」


「えぇぇぇぇーーー!?

自分を失っている人に忠告された!」


心外だとエリーゼは、声音にが表に

出ていた。エリーゼも葡萄を

食べれば性格も変わるだろう。


「それでは、行きますわ。

タカノリ・・・私の事は

オリヴィアとさん付け無しで

お願いしますわ」


「お安い御用だぜオリヴィア!」


「タカノリがブドウで釣れた」


エリーゼは、頭を抱えて呟くのを

聞こえてしまった。

失礼な葡萄で釣れたなど。

葡萄に導かれたんだよエリーゼ。

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