第39話岩壁の上から襲撃

さて、問題が起きた。

パーティのリーダーであるエリーゼ

の様子がおかしいのだ。


「な、なによ!」


「いや、何でもねぇよ」


後ろに距離があるエリーゼに

向けると別の方向へ向ける。

心ここにあらずで、俺の視線に

気付くと不自然なほど下へ向く。


「フフ、初々しいですねお二人さん」


隣の大人の余裕を表すオリヴィア。


「えーと、オリヴィア・・・・・

そのエリーゼ急な距離の理由を?」


拙い質問だなと、自分のコミュ障が

治っていないことに情けなくなる。


「ええ。もちろんですわ・・・

ですけど、エリーゼの名誉や想い

のために決して口には

できませんけど」


「・・・それって、深刻なこと

てしょうか?」


「どうしたのですか?

恐い顔をしていますわ」


眉を心配のハの形にするオリヴィア。

・・・恐い顔をしているのか。


相棒が、前よりもおかしい言動を

こう見ていたら、焦燥感しょうそうかんが募っているかもしれない。


「すみません・・・ちょっと

心配事があるんです。

エリーゼに聞き取りたくありません

ので、耳すこしいいですか?」


「・・・そういうことですのね。

わかりましたわ。

聞こえましたら、困ることですね」


俺の足りない言葉に怜悧れいりな頭脳がすぐに理解したようだ。

回復専門にしている人なら

なにか、分かると思い・・・それに

エリーゼの症状が気になる。


「あっ・・・・・」


背後から、驚愕した声。

後ろへ向く、別の驚きをするエリーゼ

視線を逃れるよう避けられた。

幻覚でも見たのだろうか。


「オリヴィアに相談したいのは

エリーゼの情緒が不安定な所です」


「不安定ですか、どこで違和感や

不安を覚えたか詳しくお願いですわ」


顔を近づき相談。そして、

詳細を俺は語る。

エリーゼがおかしくなるのは、

俺がお礼や魔石を入れた指輪を渡した

事など伝える。


「・・・心配はご無用ですわ。

なんと、言えばよろいしのか、

思春期的な反応ですわ」


「は、はい!?思春期ですか。

その、エリーゼは?」


流石に思春期はなにかの冗談だろう。

場の空気を解そうとしたのかも

しれない。本題を尋ねるが

意図が伝わらいよなぁ。


「断念は出来ませんが、

お話を伺いして、わたしの結論は

正常だと判断しますわ。

でも、万が一もありますし

一応、診断はしたほうがよろしい

ですわ」


「そうですか。相談して

見えなかったもの分かったような」


正直、顔を赤くなったり落ち着かなく

なったりなど、起こしている。

正直、懸念をするな方が無理なのだ。


「わたし的には、タカノリの

女の子に無闇に声を掛ける方が

問題だと思いますわよ。

一度、街へお医者さんに

視てもらったほうがよろしいかと」


「そうかもしれませんね。

・・・と、言いたいですけど、

好きなことをそれなりにしていますので精神になんの問題もないと

思いますよ?」


日本と違い便利な電化製品がなく、

不便が多い。が、そのデメリット

を上回るのは、相棒と

居てくれた大きい。


会話を続けなから、渓谷を出て

別の傾き道と草木が茂る場所へ歩く。

足が棒になるほど、酷使しながら

上へ進行。そして、ようやく

デコボコない道に上がる。


「はぁ、はぁ!疲れたー!」


「ねぇ、大丈夫なの?休憩しない」


「・・・え?もしかして

俺に言っているのか?」


顔を後ろへ向けると偽りのない

心配顔するエリーゼ。

不覚にも心が癒やされた。


「そうよ。どうするの休むの!」


「どうして激昂げっこうしているのか?まぁ、いいけど。

ただの、俺の弱音よわねだ。

ほら、行くぞ」


道幅はそれなりにあり、

右には厳かにそびえ立つ

岩壁と、左は崖の下。

だけど、落ちる心配するほど

狭くない。


「っー!?二人とも気づいた?」


鋭い声で何かを気付くエリーゼ。

俺は、なにがあるのか周囲を

巡らすがなにもない。


「いや、なにも。エリーゼなにが

あるっていうんだ?」


「敵よ。数は数十人ぐらいで

あの上に潜んでいるわ。

隠しきれていない殺気や物音から

して、狩人やアサシンじゃないわ」


その上を睨むエリーゼに、俺も

見てみるが、ただの岩壁と木々が

見えるぐらいだけだった。

耳を傾けても、音や不快な

気配はない。しかしー


「人か魔物?」


「警戒しているけど、慣れていない。

おそらくだけど、人!」


「了解。戻って広い場所に行こう」


エリーゼの剣などでは、天賦てんぶの才を持つと信じての判断。


「そ、そのお待ちになって

くださいまし。

不躾ぶしつけながら、わたし

にも聞こえませんでした・・・

空耳そらみみでは

ないでしょうか?」


オリヴィアは半信半疑で

戸惑っている。

これは、仕方ない。


今日が初対面で仲間なのだ。

疑っても不思議ではない。

どう、説得しようか悩み考える。


「タカノリ危ない!」


「えっ・・・・・エ、エリーゼ!?」


エリーゼの俺の前へ立ち、杖で

投擲とうてきの石を払う。


「助かったエリーゼ」


「タカノリ魔法をお願い!」


離れた攻撃。

迎撃するには、魔法と迅速な決断。

それに激しく同意だ。


「補助の杖なしで魔法を使う。

オリヴィアは、俺の背後に!

エリーゼは、魔石で防御結界!」


「わかったわ」


「えっ?そ、その・・・」


「早くしてくださいオリヴィア!」


「は、はいですわ!」


急いでいるとは、いえ年上に

偉そうに催促に罪悪感があるが

今は敵が優先だ。


「いけえぇぇぇぇぇーーー!!」


上級魔法の土属性を無詠唱での

[ロック・スプラッシュ]

俺の頭上に浮遊する岩。


それを、潜むであろう敵に放つ。

無詠唱むえいしょうのため

詠唱よりも威力や規模はない。


「タカノリ、右10メートル!」


「わかった!!」


居場所はエリーゼが言って、俺は

そこを狙いを定め二度目の

ロック・スプラッシュを撃つ!

詠唱では、岩石で無詠唱では

小石や数も少ないが気絶には使える。


「よし!やったわ。相手は

動揺しているわ」


それでも他の敵は攻撃継続。

別の方向へ飛ぶ石や矢。


たまたま俺達に向かえば、俺の

上級魔法の雷で迎撃する。

ヘビのように動き荒々しい雷。

無詠唱では、攻撃の迎撃に

向いている。


「そろそろ、障壁を結界するわ」


「ああ、腕が上がったな。

エリーゼ見事だよ!」


「えへへ、そう?」


前は魔石を使わずに杖や詠唱だけで

戦おうとしていた頃が懐かしい。

まだ、日がそんなに立っていないが。


「・・・スゴイですわ」


感嘆の声を漏らすオリヴィア。

まぁ、息をするかものような連携は

俺も驚いているけどなぁ。


「さて、ロック・スプラッシュと

魔法陣の放つ光のベール壁・・・

撤退するまで、ゴリ押し

するだけだな」


「そうだね。折角なんだし、

退屈しのぎになにか話さない?

例えば・・・その、タカノリの

ニホンにいた話とか」


「ニホン?」


聞きたいかエリーゼ?

謎の言葉に怪訝のオリヴィア。


「突然の無茶振りだな。

エリーゼの常套じょうとう手段だから、いいけど。

そうだな、子供のときは弟や妹が

後ろにいつもついてきたんだけど

気付けば、最低限の話しかしなくて」


「ふーん」


戦闘の中でのんびりと会話を続ける。

場違いにもある空気。


一本の矢が向かってくる。

魔法で迎撃するが、失敗する。

魔法陣の光ベールを速度を落とさず

通り抜けエリーゼの右肩へ

当たって・・・・・・・・・!?


「・・・えっ?」


エリーゼは、一瞬なにが起きた

分からず刺さった矢を見る。

魔法陣は、壊れエリーゼは後ろへ

飛ばされる。崖の下へとー


「エ、エリーゼーーーーーー!!?」


落ちていくエリーゼ。

助けをも止めず悲鳴も開けずに。

俺は、考えるよりも身体が動き

落ちていくエリーゼを救おうと

その想いだけで飛び降りた。


「タカノリ!・・・そ、そんな」


上空から絶望の声音が聞こえる。

なにを、やっているんだ俺は。


ヒーラーを一人、残して

救えるか分からない相棒に迷わずに

行くなんて!

だけど、後悔はしていない。

急いで救って戻るだけだ!


(この窮地、絶望をくつがえしてやるぜ。絶対に!)

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