第38話マイベースな道中でのイベント

周囲に魔物が、いないか警戒しながら

傾いた獣道を喘ぎながら登り続ける。

やっと、傾いた場所を脱したと

苦しい息を切らせながら

前に広がるは、渓谷けいこくだった。


「おおー!山に挟んだ川が流れ

ている・・・これが異世界の

渓谷か。空気は透きとおって、

おいしい。それに、景色も

スゴく、きれいだあぁぁーー!!」

「感動するのは、構わないけど

オリヴィアもいるんだから、

奇行をほどほどにしなさいよ」

「お気になさらいでください。

わたしもタカノリと同じく

山紫水明さんしすいめいがわたし達を歓迎しているようで

素敵じゃありませんか。

フフ、ですからエリーゼも

存分にはしゃぎませんか?」

「い、いえ。大丈夫です」


まさか、お淑やかな誘いの言葉に

慌てて、断るエリーゼ。

オリヴィアの言うとおり、

はしゃぎたくなる。

川幅が、広く上には葉っぱや陽光が

美しく飾る広大で美しい場所。

川の左右に舗装ほそうされた

道がどこまでも続いている。

そこだけ、道を整った理由がなぞすぎるが。


「オリヴィアは、なんだか

詩人みたいな言葉を言って

スゴイですよね」


せっかくだから、友好関係を

築こうとして、俺は美少女ゲームから

学んだセリフなどで会話をしよう。


「ええ、お褒めいただき

ありがとう。

そう仰っくれると、むずがゆいですわね」

「控えなんですねオリヴィアは。

優しい上に、知的で

落ち着いている上に、しぐさも

上品なのにかわいいんですから!」

「・・・す、すみません。

こうまっすぐ褒められるの慣れて

いませんでして・・・」


目を左右に泳ぐと、視線をややうつむき、頬を朱色に染める。

まるで、恋をする少女のような

反応され、上品な大人のギャップに

ドキっとした。


「ふーん。かわいい?へぇー・・・

こうも早く告白ですか。

手を出すの早くない?

早すぎない!

この・・・最低!!」

「うわ!?ちょっ、エリーゼ

どうしんだよ急に叫んで!?」


オリヴィアに熱い視線にフリーズした

状態だったが、エリーゼの

なぞの怒濤どとうの怒声により

頭は再起動する。

エリーゼには、日に日に情緒不安定に

不安を抱く言動する。


「お、落ち着けエリーゼ!

ストレスか病んでいるのか

分からねぇけど、俺がついている。

最後までいてやるから、

だから安心してくれ・・・」

「ふぇ!?き、急になによ。

そ、そんな言葉なんかに

納得するとでも思っているの!」


エリーゼの肩を両手でつかんで、

お互いの目線を合うようにする。

濁りない青の眼差しが、

大きく開き次に怒りへとチェンジ。

真剣に発作を抑えようと、

言葉を選んで強く言ったが駄目か?


「いや!エリーゼに俺の想いを

伝える。だから、エリーゼ

恥ずかしいだろうが、訊いてくれ!」

(この異世界に勢いと熱意で俺を

召喚したエリーゼ。

一人が、ずっとの俺のかたわらにエリーゼがいてことが、

幸せで頼もしく楽しい・・・

この感情はそう分かりきっている。

仲間・・・唯一の親友で相棒!)

「っーーーー!?ま、まって!

わ、わたし、まだ心の準備が

できていないの!?」


挙動不審になり、抵抗するが

本気で抗っていない。

何故なら、空か地面と同化される

物理攻撃をするから。

そんな、化け物な抵抗しないのは

恰好ポーズだけことだろうか?


「俺はエリーゼが、

エリーゼの事を」

「ぅぅー・・・・・」


喉から言葉を発するだけ。

なのに、出ない。最高の相棒だって

言葉がでない!?


「お熱い所、大変に申し訳ないの

ですが、討伐依頼にあった

ブラック・ボアが水をお飲みに

登って来ましたわ」

「了解。

エリーゼまた、戦闘準備!」

「・・・・・」


俺は、腰から柄を握り鞘から抜く。

黒カラーの俺の40から50メートルの

イノシシが、水を飲みに

まっすぐ歩いていく。


「どうやら、気づいていませんわ。

わたしは、神官として未熟でして

強化魔法は使えませんが、

この杖で打撃攻撃しますわ」

「えーと、回復特化の杖だから

魔法使いよりも攻撃力はありません

けど。それより、エリーゼ早く

魔法を!この距離なら

詠唱に聞こえずに先制攻撃できる。

・・・・・エリーゼ、どうし・・た」

「せっかくのチャンスが・・・

ゆるさない。あの魔物には

神にも悪魔が特別に赦免しゃめんしようとも、わたしが・・・

いぃぃやっあぁぁぁぁーー!!」


性根しょうね怨嗟えんさの負に呑まれるかのように

冷たく深い闇から現れたかのような

声を放つ。

ここまで、エリーゼが怒ったのは

初めて見た。

毎日、ケンカする俺さえ

見たことない。


「ブルゥオォォォ!?」


うわー、イノシシタイプの魔物が

殺気なんかで気づいて怯えているよ。


「んっ?・・・・・エ、エリーゼ

戻れ!違った、武器を見ろ。

いつもの・・・じゃない!」

「???」


首を傾げるオリヴィア。

なるべく、エリーゼの実力を

隠したい。万が一に勇者や騎士などの

前線ジョブをすすめられる

微々たる可能性でも。


「エリーゼーーー!魔法使い。

杖、つえーー!杖じゃ倒せないから

戻ってこいよーー。・・・・・

って、もう殴っている!?」


慌てて、俺とオリヴィアが

駆けつけるが畏怖というのか

邪魔をしてはいけない

空気が支配する。

そして、数分後が経つ。


「は、ははは。えーと、急に

癇癪かんしゃくを起こして

しまいました」


一人、杖でブンブンと振り回し

殴打して倒した魔法使いは、

苦笑する。


「エリーゼ。その、大丈夫なのか?」

「えっ!?だ、大丈夫よ。

ほら、わたし体が丈夫だから」

「バカヤロー!」


その自分を無茶や無理して

俺は怒鳴る。

誰かのために怒鳴ったのは初めてだ。

いつものケンカの声の高さではない

からか、ビクッとエリーゼは

、肩を上げた。


「タ、タカノリ。ど、どうしたのよ。

問題なく倒せたんだから」

「いいか、エリーゼ。

無理はするなよ・・・どこで

怒り狂ったかは分からねぇけど、

俺の言葉を聞かずに一人で突撃して、

いつもエリーゼが、言っているだろ。

一緒に戦う・・・それが

自分の危険に仲間の危険になる。

教えてもらったのはエリーゼ・・・

なんだよ。どうしてそんなことを」


うまく言葉が紡げない!

急変に驚いたけど、本当に

無茶だった。

前に別の場所で戦ったあのイノシシに

倒したことがあるとはいえ、

油断するなと小言を言っていた。

あの、勝手すぎる私怨での戦闘に

なぜか、憤り・・・悲しかった。


「ご、ごめんなさい・・・。

いい雰囲気だったのに・・・・・

ごめんなさい!うぅぅっ」


地面に膝をつき、泣き崩れる

エリーゼ。嗚咽おえつが、耳に

聴こえてしまい、俺は考えるよりも

しゃがむ。


「許す・・・なんて偉そうだけど、

もうするなよ。

それと、ごめん」

「えっ?ど、どうして・・・」


謝るのか。そう言って、

涙を流れる頬を拭いたい

衝動を抑える。

いくら、相棒とはいえセクハラだ。

これ以上、苦しませたくない。


「なんだ?その・・・俺も

言い過ぎた。エリーゼが、らしく

ない特に今日は。それにだ!

戦闘では、指揮できるのはエリーゼ

なんだから!」

「なによ、それ。

励ますなら少し気の利いた言葉を

使わないとモテないんだから!」

「は、はぁ!?俺はモデますけど。

こんな、素でぶつけるのは

エリーゼだけなんだからなぁ!」


モテないことに、否するのに

俺は立って指を突きつける。


「ハァー?どうしてそんなバカな

言葉で怒るのよ。バカなの?

異世界に留まるの?」


エリーゼも立ち上がり

半眼で挑発的に怒りをぶつける。


「留まるけど、それがなにか?

ここは、楽しいしブドウはおいしい

から絶対に帰らないと

決意したんだよ!」

「そう。それなら今後もよろしく

頼むわよバカナンパのタカノリ」

「ふん。せいぜい俺の心配と

無茶はするなよ」


お互い伝えたい言葉を吐き出すと

プイッと視線を合わせないスタンスに

移行する。


「・・・思ったよりも、仲が

よろしいのですね。お二人さんは」

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