第35話 フリーダムは最初から自由

燦々さんさんと降り注ぐ陽光に

芝生の蹴り走る。

早朝の日課の剣術の鍛練。

エリーゼにがむしゃらに挑むのは無謀と

学んだ俺は、武器を少し変える。


「はああぁぁぁぁーー!!」


掛け声を上げながら、右の木刀を袈裟斬り。

しかし、エリーゼは左へジャンプ。

そのジャンプは、低く理想的な距離と

無駄のない動き・・・

洗練を越える回避を当たり前のように

成したエリーゼ。

しかし、その回避パターンは読んでいた。


「もらったああぁぁぁぁぁぁ!」


俺は反対の手に握る2本目の木刀が

死角になる位置・・・胸のあたりで

木刀の刀身を背中に隠して相手が左を

避ける前提での攻撃。

左の木刀での横一文字斬り。


「へぇー、回避を読んだ上の2撃目・・・

二刀流にしたのは分かった。

でも―――」

「なっ!?押されていく・・・」

「二刀流は、手数が多いのが長所だけど

今までの剣術と違い難しい。

それを、なんとか扱えるようになっても」


左の剣は、宙へと飛び地面に落ちる。

続けざまにエリーゼは力を抑えて

連続斬撃が始まる。


「欠点は・・・威力が落ちる。

両手をにぎれないから、鍔迫つばぜり合いには・・・弱い!」

「ぐっ!・・・・・こ、この

いい加減に」


右の剣で振り払う。エリーゼは背後へ

低く飛び着地する。

二刀流は、最強だと考えていくつか

攻撃パターンを考えて行ったが、

失敗へとなる。


「それじゃあ、わたしは突撃するから

頑張ってよ」

「ええい、絶対に一本は取ってやる!」


数分後。俺は、地面を後ろに置く結果になった。今日もかすり傷がいくつか

出来ていた。上半身を上げて座る

俺は、魔石を自分の足下に設置して展開。

魔方陣が瞬時に完成すると回復の

白き光が魔方陣の中から放つ。


「ねぇ、タカノリ。今日の戦法だけど

見事だったよ!初めての二刀流なのに

スゴいよねぇ!」


上から声を掛けるのは、その傷を作って

くれた青のスポーツウェア姿エリーゼ。

タオルで顔を拭いていた。

いや、汗をかいていないだろう!

今日も息切れ無かったぞ。


「まぁ、マンガやラノベのようには

いかなかったけどなぁ・・・・・

二刀流を使わない理由を知ったよ。

エリーゼのような膂力りょりょく

とんでもない奴だった二刀流

いらないわけだ」

「別に膂力なんてないわよ。

ただ相手の弱点や加速でそう感じている

だけなんだから」

「はー、そうですか。もうエリーゼに

剣術に驚かないことに決めたけど、

簡単に揺らぐ実力に感嘆しかない・・・

で、気になったんだが指輪を外しても

よくないか?」


エリーゼの左手には薬屋にはめた指輪。

俺がプレゼントした簡単な魔法しか

使えない魔法具。

メリットは、詠唱なしで簡単に発動できる

点と邪魔にならない指をはめるのみ。

便利なのだが、今は剣術を使うエリーゼには

無用のもので、外せばいいと思ったのだ。


「わ、わたしが好きで付けているの!

だから、外すのは別のときよ」


赤らめて、弱々しく抵抗する論法。

しかし根性論が多いエリーゼには論破や

納得できる応えなかった。


「そう言うけど、ほとんど肌身はなさず

につけているけど無理していないか?」

「ふ、ふん!就寝と入浴のときは、

外しているわよ」

「それなら、いいけど。そろそろ

クエストを選びに行こうぜ」


俺は、障壁の発動を念じて止め、回収する。

今日も間違った前衛で戦うのかと

考えると暗い気持ちになり嘆息する。

今日も正門を通り

いつもの二人の門番さんが笑顔で言う。


「とうとう、夫婦になったのかエリーゼさん

鍛練に出るときに指輪をつけていて

驚いたぜ!」

「ヤバイかわいい新妻にいづま

うらやましいなぁ・・・」


この二人の門番さん真面目だけど

勝手に関係とか判断して今日も盛大に

誤解している。さすがに指輪を一つ

だけなのは誤解されるか。

複数に装備すれば、膨大の攻撃

バリエーションに悩みが生まれ隙ができる。

エリーゼは、俺と夫婦と間違われ

不機嫌そうにしているだろう。


「えへへ、ありがとうございます。

新妻ですが、護れるように

頑張っていきます!」

(今後の目的を言ってどうするんだあぁぁぁぁぁぁーー!!

新妻は、無視とかじゃなく

自分で言いますか!?)


今日もエリーゼは、暴走に辟易する。

精神科がなかなか見つからないし、

自分で魔法を作ってエリーゼの病んでいるかもしれない心を治療しないと。

―――――――◇◇◇◇――――――

今日もクエストを終わり、わたしは

タカノリとギルドにある酒場で

食事を済ませ別々の行動時間になる。

暫く本を読む。


「やーほー、エリー!」

「こんばんは、ジネブラさん」


わたしが尊敬する冒険者の騎士

ジネブラさん。

最近は会う約束するほど頻繁に会っている。

全部、語ってくれなかったが

ジネブラさんはクエストのために近くに

いるので、時間を出来るといつも

会ってくれる。


「あれ?エリー。その指輪・・・・・

も、もしかしてエリー

け、け、けけ、結婚を!?」


左にある指輪にかなり驚くジネブラさん。

この指輪を意識すると、

スゴく恥ずかしくなる。


「は、はい。わたしは、結婚しました!」

「・・・うそ!?話からして天然だから

エリーの気持ちは気付かずに

ダラダラと進むと思ったのに」

「フフ、ひどいですよジネブラさん。

・・・まあ、大方そうなのですけど。

ちなみに結婚がうそです」

「・・・・・えっ?今なんてエリー?」


結婚したと擬似的な体験がしたいと

思い嘘をついた。ち、ちがうのはタカノリ

とかそんな妄想が増えたとかじゃなく

・・・うぅ、恥ずかしい。


「嘘ですよジネブラさん」

「あれ?生真面目なエリーはどこへ

行ったのだろうか。

タカノリに影響を受けすぎたのか!」


冗談を言って、少し心配そうにしてくれた。

そこを言われたら、わたしは変わった

かもしれない。


「はい!影響を受けましたよ」

「そんな明るく応えるか・・・エリー

嬉しそうだね」

「えへへ、まあ・・・飽きない相棒

ですからねぇ」


ジネブラさんは、生ビールを注文して

タカノリと指輪の話題で盛り上がった。

―――――――◇◇◇◇――――――

「つ、疲れた。いつものことだけど」

「これも、いつもの事だけど

わたしは、まだまだ元気よ」


俺達は、自由行動を終えて宿に借りた

部屋で寛いでいた。

ソファーで突っ伏する俺は、顔を上げ

エリーゼに視線を向くと本を読んでいた。

・・・・・よく、見ればまたも

ラノベであった。

スゴく有名な将棋のラノベ。

主人公は、最高峰の竜王でしかも

ロリキング(そんなタイトルない)の

タイトルホルダー獲得している高校生。

キャラは幼女から年配のキャラまでいる。

ヒロインじゃないキャラも魅力で将棋に

熱い対局やスタンスがカッコいい。

ちなみに、一巻を出たばかりのときは

五巻で終わらせるつもりだったらしい。


「エリーゼ。俺そろそろ寝るから」

「え?・・・・・今日は対局しないの」


小動物のように上目遣いで見てくる。

くっ!どこで覚えたんだそれは!


「わ、わかった。一回だけなぁ!」

「そう、来ないとねぇ。今度こそ

勝ってみせるから!」


角と飛車の駒落ちになるほど、エリーゼは強くなっていた。さすがは、ハイスペックな

美少女だ。しかし、危うかったが勝った。


「ま、負けた!!」

「ありがとうございました!

・・・エリーゼ。この手だけど、

攻めずにこの銀を召喚すればよかったじゃ

ないか?」

「なるほどねぇ。でも、こっちの方が」


対局を終えると感想戦が始まる。

対局をした二人が、なにが原因で負けたのか

最善の手は、なんなのか意見を言うのが

感想戦である。

エリーゼは、ほんの少しで飛躍的に

棋力が上昇した。

参考になる一手を学ぶ。

ソファーから、立ち上がり俺は自分の

寝室に向かう。とその前にだ。

後ろにいるエリーゼに首だけ動かす。


「おやすみエリーゼ」

「はい。おやすみタカノリ」


俺は、寝室ドアを開きフワフワなベッドへ

ダイブ、まぶたを閉じすぐに

意識が途絶え夢の世界へ入るのだった。



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