第33話 相棒の信頼

夜の噴水広場。

お互いに知らなかった想いや言えなかった

ことを発見して吐露とろした。

普段では絶対に言えない言葉を

一緒にしたって言うのに・・・

夜の徘徊を再開して、言いたいことが尽きず

喋っていて無邪気になるほどに楽しかった。


「それで、俺がいた日本にはロボットが

発展していて人の仕事が奪われると

懸念があるんだが・・・わるい点ばかりで

例えば、接客のわるさとか危険なことを

解決なんてできて

メリットがあると考えているんだ。

それを比較してメリットが高いと思う。

て、そんなロボットとか知らないよな」


この異世界は、中世ヨーロッパ風で

ゲームやテレビなどなく教科書の

世界史に目にした昔の道具など

使用していた。

機械類いなどないのに、熱く語った。


「そうなんだ・・・いつか、タカノリの

そのニホンに行きたいなぁ」

「―――ああ!エリーゼとなら、

旅行とか行くのもわるくないなぁ」

「うん!それで、知らない世界に冒険して、

・・・素敵でしょうねぇ」

「おそらく・・・なぁ」


祖国に戻りたい気持ちがあるが、その選択を

いつか選ばなければならない事に

なるだろう。

軽い妄想の話で済ませるつもりが、

できない。

どうしても、異世界召喚されてから

これからどうするのか、考えている。

隣にエリーゼがいてくれるわけでは

ないはずなのだ。

ずっと、いられる人などいない・・・・・。


「タカノリ・・・わたしは、ずっと

隣にいるよ」

「っ!?ずっとは・・・いられないだろう」

「そうだね。永遠に隣はいられないけど、

状況になるだろうねぇ。とくにわたしは」


最後の言葉に表情を曇らせる。

その意味深な言葉になにが、あるのか

知らない。それでも言葉の裏には

俺から離れる秘密があるのか?


「エリーゼ・・・・・」

(なにを言えばいいんだ。俺が

引き留める資格はあるだろうか?

いや、ない。

俺には・・・エリーゼをほだ

ようなことをしたくない)

「・・・あの、東屋に座らないか?」


西洋風の東屋。その呼び方が知らず、

少し悩んでから、促すことにした。

エリーゼは、キョトンと小首を傾げる。

その東屋?を視線を向いた。

考察なのか言葉のない静寂が続く。


「フフ、ガセポ」

「えっ?ガセポ・・・なんなんだそれて?」


笑い声を出すエリーゼが、謎の単語を

言葉にして理解が追い付けずに尋ねる。


「あの、小規模な神殿のような構造のした

アレよ。さあ、タカノリの国では

あれを東屋と呼ぶのか・・・それとも、

ただ単に知らなかった?」


子供にたわむれるような

イタズラと微笑があわせせた表情で

見てきた。主導権イニシアチブ

いつの間にか取られていて、

それが年下でどこかポンコツなエリーゼに

反骨心が増加するのを感じながら

年上の威厳を見せてやると決意。


「フッ、見事だったなぁエリーゼ。

お前の豊富な知識がどれほどのものか

試していたんだよ、これはなぁ!

ガセポなど、知らないわけがないだろう。

頭脳明晰(自称)てチヤホヤされて

いたんだから。」


見栄を全力で大言壮語した俺、自身に

嘆息が零れそうになる。

バカじゃないか俺・・・威厳とか

ないだろうに。


「ふーん、そう。

じゃあ・・・そう言うことにしてあげる。

今日の黒き龍と読んでいた海の魔物の

名称は?」

「名称?」


漁だけのはずが、現れたあの魔物ことか。


「そ、そんなの知るか!」

「残念。答えはブラックバーサーカーよ。

それなりに知られているのに・・・ハァー」


失望したわね・・・と

演技がかった言い方をされる。

コ、コイツ!なら、見せてやる!


「ああ。さすが才色兼備さいしょくけんびのエリーゼ様はスゴいことで。

それなら、ラノベ・・・略せずに

言えますよねエリーゼ様なら」

「ラ、ラノベ・・・なにかの新しい

魔法かなにか?」

「はい!ちーがーいーまーす。

ライトノベル。明るい小説でーす!」


くく、これは優等生でラノベ文化がない

エリーゼには分かるまい。

ラノベノベルの意味で軽い小説と

けっこう前にそう認識があったようだが

俺の世代では明るい小説が

訳したら意味に思っている。

どう意味かなど、それぞれでの心に抱く

それが正解として

エリーゼが納得できずに悔しそうである。


「タ、タカノリが小説でわたしに

挑んで負けてしまった・・・

いつか、そのラノベ?ライト?を

読ませてもらうわ」

「ああ、いいぜ!高校のカバンに

入っているから構わせねぇぜ!」

「次は、公爵家こうしゃくけ

現当主と言えば?」

「は、ハァー!?な、なんてクイズを!

分かるわけねぇだろ!」


半年ちょっとの異世界生活に

首脳とか爵位しゃくいなんて知らないのに答えろと?教えてもらっていないのに。

無茶な問題を出され反論する。


「本を濫読らんどくしますけど、

そんな本は聞いていない!

異世界の本を問題にしたタカノリに

わたしがこちらの世界の問題にしては

いけない権利は・・・ない!」

「くっ!・・・じゃ、じゃあ・・・

ランスロット」


有名にして最強の円卓の騎士。

主君のアーサー王の妻である

グィネヴィアを不倫が発覚して決別して

主君と争うことに強いられた。

愛剣はアロンダイト。

完全にランスロットと答えたのは直感。


「まいたねぇ、答えられてしまうなんて」

「・・・マ、マジか!公爵は、ランスロット

なのか異世界は。そ、それなら

アーサーとか、トリスタンいるのか!?」

「答えは・・・武勲ぶくんを多く

立てて今の地位に上った武門の出ある

マルコ・パルマ・アークツルス。

前は剣聖として活躍した人なのよ。

今は、ただの政治家だけど」

「マルコ・・・円卓の騎士じゃねえぇ!!

騙しやがったなぁ!エリーゼェェェ!!」

「フフ、魔法使いは策謀さくぼう

秀でているのが常識でしょう?」


屈託のなき笑顔を絶せずにケンカする

エリーゼ。なにが、そう俺と話をして

楽しいのか。それよりも・・・

マルコ誰だよ!元剣聖からして、スゴい

だろうけど・・・もっと疑問なのは―――


「その公爵が知っているような

言動なのは気のせい?」

「・・・・・う、うん。気のせい、

暴露本ばくろほんで知った情報なのよ」


しどろもどろになるエリーゼ。

もしかして、公爵に会える身分とか。


「イヤ、それはないな!」

「無いって、古本ならどこにもあると

思うのだけど」

「いや、そういうことじゃなくて・・・

そろそろ閑話休題かんわきゅうだいにして、東屋じゃなかった!

ガセポに座らないか?」

「・・・そうね。いい雰囲気を

壊すのはよくないからねぇ」


いい雰囲気・・・疑問を持つのはやめよう。

もう何度目かの疑問に言及したくない。

珍しく俺の言葉に従いガセポで

向かい会う形で座る。

エリーゼに目が合うと赤くなり期待の

眼差しを向けている。


(まさか、なにを渡すのか分かって・・・

いや、そんなわけがないか)


思考を読まれただろうが、きっと推測で

完全に読まれていない。

俺は懐から、翡翠色ひすいいろ

指輪を取り出す。


「ゆ、指輪ゆびわ!!?」

「ああ。安物だけど・・・エリーゼが

危うい場面が多いから決断したんだ。

指を入れていいか?」

「・・・・・え、その・・・はい・・・」


白皙はくせきな顔は赤く染めていき

上目遣いに自信なさげに目を

色んな場所へ向ける。

涙目とか肩が少し震えているのは

謎すぎるが。

恐る恐ると、指を差し向けた。


「確認なんだが、この指輪を

今からはめるけど本当にいいか?」

「・・・い、いいよ。・・・タカノリなら」

「わかった。そういうことなら、

はめさせてもらう」


エリーゼの左手を掴み指輪を指の

右から数えて4番目の指―――

薬指にへとゆっくりはめていく。


「あっ・・・・・」

「痛かったか?」

「だ、だだだ、大丈夫!?」

「お、おう。そうか」


あわてて首を横に振り通常よりも高い声で

平気と返事するが、顔が湯気を出そうなほど

なのだが?

本人が大丈夫と言っているが無理する

タイプだし。気を付けてはめていく。


「よし!はめたぞ。どうだ感想は?」

「え、えーと。スゴく・・・スゴクゥ、

嬉しい。人生で一番に」

「はっはは、それは大袈裟おおげさ

だろう!でも、そう喜んでくれると

買った甲斐があったなぁ!」


甲斐があったほど苦労していないが、

キラキラした目で左手の薬指にはめた

指輪を見続け、急に微笑んだり

恥ずかしそうに悶えたりもしていた。


「それじゃあ、もう気づかれた思うけど

この指輪には小さな魔石があって

魔法を発動の補助がない。

即座に発動するインスタントの魔法。

とくに、初心者や上級者に人気が高い

魔法具で高い!」

「へぇー、そんな素敵な・・・すてきな

・・・・・・もう一度!」


エリーゼの表情は一転する。

立ち上がって、ドンとテーブル両手を

叩きながら前のめりになる。

要求されたとおりに説明をして

エリーゼの眼差しにはドンドン冷たくなる。


「な、なにかご不満ありましたか!?」

「今回ばかりは、悪質すぎる。

これを勘違いしないほうが無理・・・

タカノリこの指輪は、絶対にわたし以外の

女の子にプレゼントしないこと!」


今度は睨み支離滅裂な言葉をした。


「はい?約束する必要あるのか?」

「正午と夜の鍛練が追加しようか

わたし検討していたのよね」

「はっ!絶対に遵守じゅんしゅします!

そもそもエリーゼ以外に渡す相手がいないので簡単に達成できます!」


魔法具の指輪は、ラノベやアニメのように

強力な魔法が使えない。

魔石が小さいがため、どうしても

威力や規模が限られてくる。

なら、どうして使われるか・・・詠唱が

いらない簡単な魔法式でセットしているのが

大きい。指をターゲットに狙いを定め

脳内で魔法名称を念じるだけで

発動するのだ。

そのかわり枯渇する速度は早いが

装備するのは指のみでないよりはまし。

攻撃のバリエーションを増やすため

エリーゼに渡したのが―――


(今は不機嫌だ。指輪を見て赤くなって、

怒っているし・・・なにが

不満なのか。ただ、無詠唱の魔法を

使える指輪を渡しただけで)

「一応、どうして渡そうと思ったのか

経緯を訊かせてくれない?」

「か、構わないけど。いつまでも

睨まないでくれよ」


簡単に説明をした。これは、師匠の

魔法具店を買ったことや

エリーゼが魔法が中級で魔法具をあまり

扱わないことなど心配して伝えた。


「ふ、ふーん。そうなんだ・・・

この指輪を大事にするわ」

「そうか。それはよかった。

さて、そろそろ宿に戻るか」


高速の戦いに強いられた時に便利な

指輪を大事に自分の胸の前に別の片方の

手を触れるエリーゼ。

思ったよりも嬉しそうに微笑していた。


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