第32話 噴水での告白

「うへへ、タカノリさん~。

ブドウ酒ですよ。今こそ飲みましょうよ♪」

「け、結構です!」


飲め、飲めとビールジョッキを

俺の顔に迫らせるはフェイ(泥酔)だ。

失念していた・・・フェイが

生粋の酒豪だとことを。


「ヘルプ!助けてくれエリーゼェェェ!!」

「ハァー。分かったわよ・・・まったく」


席を立つエリーゼは、向かいの席に進み

フェイを立たせて自分の席に

隣に座らせる。


「ええぇぇぇ!?タカノリさんの隣が

いいのぉ!からかうと面白いのに」

「そんなバカな事を言わないでいいから。

ほら、なにか嫌な事があるなら

聞くよ」


座り直すエリーゼは、心が広い言葉を言う。

こういう所は優しいよなエリーゼは。


「実はねぇ~。新しいパーティに加入して

恐くなって逃げたの」

「そうなんだ」


エリーゼは、相槌を打つ。それって

魔物が恐くなってだろう。

エリーゼも俺と同じくそう

思っているだろう。


「それから、失敗したなぁと謝って

大事はなかったけど~、ああはははは。

・・・・・うわあああぁぁん!!」

「「ハァー」」


ため息がハモる。頑張っているけど、

魔物は、恐いよなそりゃあ。

愚痴を聞き、フェイはさらにビールを

飲んでいく。体に悪いから

ほどほどにしろよ。

それから、受付の人に任せて俺とエリーゼは

ギルドを後にした。

受付の人もげんなりしていたが

それは、仕事と腹をくくて。

――――――◇◇◇◇――――――

夜のとばりが下りる道を

エリーゼと隣で帰路に就く。

帰るのは、いつもの宿なのだが。

あれ、なにか忘れていないか俺?

エリーゼに今朝に渡そうと思って・・・・・


「そうだった!」

「な、なに!どうしたの?」


2階の建物が左右に並ぶその真ん中、

通りになる場所で立ち止まる。


「今朝がたに、大事な話をすると

言ったんけど覚えているか?」

「大事な・・・・・あっ!」


考え込むエリーゼは、思い出したと

顔に表した。本当はその今朝がたで、

受け渡すつもりだったが、

いい場所を求められたので

諦めたのだ。


「思い出したようだな。

大事なことなのは、エリーゼによるけど

・・・場所の指定は決めてくれないか?

俺にはどれが、いいのかよく

分からないから」

「・・・・・・う、うん。分かった。

その、ついてきて」

「ああ?」


なにを恥じらったのか分からないが

頬を赤らめている。

移動中は、会話はうまく続かずついていく。

うまく続かなかったのは、エリーゼが

戸惑ったり沈黙になったからであった。


「つ、ついたよ。噴水広場の夜だと静寂で

夜風が気持ちよくて、人気ひとけ

少ない・・・ここなら、景色も

ほのかに綺麗で・・・・・・・・・・・

いい思い出になるから!!」

「そ、そうだな・・・?」


後ろ姿で説明をされて表情が見えなくとも

声の変化や次に発するまでの沈黙で

羞恥に耐えながらも言ったのが理解したが、

なぜ恥ずかしくなったか、までは

分からないが。

その噴水広場は、街灯が寂しく照らし

西洋風の東屋あずまやもある上に

広くてたしかに落ち着けそうだ。


「そうだ!エリーゼ、少し徘徊しないか?」

「う、うん。いいよ」


控えめな頷き小さな声で返事をした。

徘徊をして、お互いに話が分からずに

沈黙が続く。最初は気まずいなぁ。など

考えたが、少し歩けば楽しかった。


(友達がいなかったから知らなかったけど、

こうして静かに隣で同じ速度で

ただ、歩いてるだけなのに

おだやかになって、

ここが、居場所だと隣にいるエリーゼが

そう語っているようで―――)

「タカノリ大丈夫?」


隣にいる左に向くとエリーゼが

心配が含んで言う。

急にそう訊かれ、怪訝になるのだが。


「大丈夫に決まっているけど、

どうしてそう言ったんだ」

「そんなの・・・泣いていたら、

心配になるじゃない!」

「泣いて――――」


頬を指で触れると水滴があった。

これが、涙だと認識すると

頬に感じる水滴も認識をする。

理由は・・・隠している感情が原因で

それが、叶って涙だと思う。

断言できないのは、これが・・・・・

仲のいい友達とか、二人で夜の徘徊は、

物音がない静けさと夜風。

それに、隣に伝わる絶対的な信頼感が

一人が当然の俺に、この数多の温かく

与えられ感動しての涙だろうか。


「これは、なんでもない」

「無理していない・・・わたしは

タカノリの相棒だよ!

だから、ツラかったら遠慮いらない。

なんでも、言って!」


その優しさと励ます強さが垣間見えて

涙腺の堤防が崩壊して、大量に流れていく。

徘徊する足を止め、勝手に溢れてくる

涙を手で乱暴に拭うても次から溢れてくる。


「ぐっ、そ、そんなことない。

おぉ、俺はエリーゼといられて嬉しかったんだ・・・日本では一人が当たり前で

・・・・うぅぅ、ここまで遠慮なんて

なくて、俺なんかに信頼して・・・

必要されて・・・嬉しかったんだ!

友達で仲間としてのエリーゼに・・・

ぐすぅ・・・・・」

「・・・タカノリ」

「な、なんだよエリーゼ・・・

なにしって!?」


少し俺よりも背が低いエリーゼは、

俺の頭を撫でてきたのだ。

なでる手には温かい。温度ではなく

その優しく撫で方にゆっくりと。


「わたしがいる・・・一人は

ツラかったよね」

「・・・そんなことない!

邪魔とか、気を使わなくて、楽ぐらいで

・・・・・それでも

相棒がずっと、欲しかった」

「力不足ですけど、わたしがその・・・

相棒でよかった?」

「そんなの・・・!?」


流れでおもしろく否定をしよとしたが、

動けなくなる。

顔を上げるとエリーゼは、涙していた。

その涙を頬に落ちても気にも止めず

俺の顔を見続け微笑んでいた。

だけど、微笑には不安の色もあった。

言葉には相棒でよかったと自信なく

訊いてきた。


「・・・俺の相棒はエリーゼだけだ!

力不足とか、資格なんてある

わけないだろ!

むしろそんな曖昧なもので相棒に

相応しいとかバカげているんだ!

だから、俺にはエリーゼが最初の相棒で

心の恩人なんだ」

「タカノリ・・・・・うん、

ありがとう・・・嬉しかったよ」


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