第31話 懐かしきでもない邂逅

海中の闇へ落ちたと思った黒き龍が

浮上した。まだ、終わっていないのか

杖のエターナル・ゼロを構えようとしたが、

横向きに流れに抗わず動いている。


「おーい、倒したドラゴンが浮上した!」

「浮上?・・・あー、力尽きたのねぇ」

「なんだ?おぉー、デケェな!」


雨は、まだ降っていて

帰ろうと準備をしていると、現れる死骸と

成り果てた姿を発見して二人を呼びと

感嘆のない言葉だった。


「戦闘のときは、俺よりもあせっていたのに・・・これって

そんなに珍しくないのか?」

「そうだな。ボウズの考えは間違ってねぇが、珍しいがわざわざ驚くほどしゃねぇ

からなぁ」


あんな、細長い黒い龍が姿を現して

海に浮いていることで圧巻して唖然あぜんとなっていもいいのだが。


「フフ、もしかして恐かったりするの

タカノリ?」

「はぁ?んなわけねぇだろ。・・・少しは」


エリーゼにからかわれた。笑みは悪戯イタズラの企むような笑みよりも

慈しむような微笑みだった。


「思ったんだが、エリーゼ。なんか

性格とか俺に対して、変化しすぎ

じゃないか?いつもは、機嫌がわるそうで

サンドバッグのように扱う悪魔のような

笑みとか・・・・・

それが、金髪碧眼きんぱつへきがん

似合う天使のように微笑んで。

誰って、怖かったぞ!」


最初のやりとりよりも優しく微笑んでいた

のが、見惚れてしまうような

反応しそうで咄嗟的に出てきた言葉。


「・・・・・は、はぁー!?

な、なによそれは。わたしだって

隠すのがやっとで必死なのよ!」

「隠す?なにを」

「それは・・・・・なんでもない!」


後ろへ向かれしまい、この話題は終了と

言わんばかりにされてしまい、

今いち納得していないが踏み込み過ぎると

逆鱗げきりんを触れることになる。

・・・あれ?確かエリーゼは2つ年下

だった、でも今さらか。


「漁師さんやっぱりこれを持って返る?」

「い、いや・・・デカすぎだろ!!」

「普通にギルドに報告して判断を

うしかないよね」


エリーゼは、自分のあごを触れ

考え込む。迅速な対応と落ち着いた声音は

まるで大人のようだった。


「まぁ、それがいいだろうなぁ」

「ええ。報告はわたし達が致しますので。

明日には、ギルドから良い報告が

あると思います」


エリーゼは、にこやかなスマイルで

対応をする。


「・・・・・・」

「ど、どうしたのよ。わたしの顔を

まじまじと見て!」

「いや、なんかできる美少女なんで

呆然としていた」

「・・・・・・」


問われて応えればエリーゼは、驚愕する。

んっ、なにこの既視感は!


「おーい、エリーゼ。聞いているのか?」

「き、聞いていたわよ!」


頬を赤くなるほど、怒らなくても・・・

これがいつものエリーゼだから

いいんだけど。


痴話喧嘩ちわげんかの最中に

わりぃんだが、そろそろ漕いでくれねぇか」


船を動かすために、木の棒をした

かいでエリーゼとがないといけないと考えると憂鬱ゆううつになる。

―――――――◇◇◇◇――――――

桟橋さんばしに船を停め地面に

着陸する。海に船なのも良かったが

やっぱり、俺には地面で

徘徊するのが好きだ。


「今日は助かったぜ!

困ったことがあれば、いつでも聞いてやるからなぁ二人とも」

「はい。困った事があれば」


暖かく感謝されるのもわるくないなぁと

俺はそう感じた。

今日の捕れた魚を依頼者の家の玄関まで

運び終えるときには

ドッと疲れが襲った。


「それでは、わたし達はこれで」

「ああ、本当に感謝だぜぇ!」


エリーゼが、頭を下げる。俺の肩を軽く

叩いて促す。依頼者は、何度も感謝をされ

振り返り、手を振る。

ギルドに到着し夕方から夜になっていた。


「ぷはあぁー。疲れた後のブドウジュース

最高すぎる!」


報告を済ませ、左にある食堂で食事する。

この時間は完全に異世界の酒場。

俺はブドウジュースを喉を潤し

エリーゼは、水と肉と野菜を炒めた料理。


「タカノリって、いつも楽しそうよね」

「はぁ!?そりゃあ相棒といるように

なってから、楽しいに決まっているだろ」

「そ、そう・・・・・」

「え?おしまい。話を振ってそれで

おしまいなの!?」

「いいでしょう!そんな気を使うような

関係・・・・・じゃないし」

「ああ、そうだな。突然の間があった

ことに応えても?」


プイと逸らされてしまい応えようとしない。

まぁ、深く聞かない方がいいだろう。

こうして向かい合って話すのは

固定観念みたいになっている。


「そ、その・・・隣よろしいですか?」


きき覚えのある声に視線を動かせば

白いツインテールを肩に整える神官さんの

フェイだった。

人見知りなのだろう。元仲間とはいえ

頬が赤く、視線を泳いで

恥ずかしかったようだ。

または、罪悪感かその両方か・・・。


「ああ、もちろん!」

「もちろんよフェイ!」

「は、はい。ありがとうございます」


フェイは、俺の隣のイスを引き腰を下ろす。


「・・・へ、へぇー。そこに座るんだ?」

「あっ!す、すみません。・・・

わたしに一人の女の子として優しく

したのは、タカノリさんでしたから」

「・・・・・」


エリーゼは、にこやかに微笑む。しかし

その笑みには笑っていないのが、

伝わり炎の怒りが燃えているように

見える・・・錯覚?フェイにこんな態度を

とるのか!?


「も、もうしわけありません!

今すぐにエリーゼさんのお隣に移動します」

「いや、いいよ。エリーゼいくら

恨むようなことがあったとはいえ

その態度はよくないだろ」

「・・・・・わかっていない。

どうせ、ドラゴンにおののいて逃げたとか

思っているでしょう」

「そうだけど?違うのか」

「自分の胸に訊けば!!」


少量の食べ物をガツガツと食べ始める

エリーゼ・・・やけ食いだ。

フェイは、どうしようかと困惑した。


「別にどこに座るかはフェイが

決めることだろ」

「は、はい!」


満面な笑顔を向けられドキッとする。

エリーゼと違い性格も美少女のフェイ。


「・・・鼻の下を伸ばして、見苦しい」

「なにそれ!俺はそんなキャラ

じゃないから!?」

「あっ、エリーゼさん分かります!

タカノリさんて、気づけばギルドに

綺麗な人がいれば、

すぐにそんな顔をしますよねぇ」


あれ?聞き間違いかな。純粋無垢なフェイが

俺にそんな風に思っていたのか・・・

もしかして、本当に俺は女の子には

だらしないのか。


「分かってくれるフェイ。

見境がないにもほどある!」

「ですね。荒くれ者がいるここでも、

なかなかいない女たらしです!」


えぇー、女の子に本当の意味でモテていない

のにそれは違う!

二人は俺の話で花を咲かせる。

できたら、本人がいない場所でぜひ

やってください!傷つくので。

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