第27話 変わらぬ日常は、変わっていく

俺は魔法具をいくつか選定後に購入し

泊まっている宿のドアを開けば

エリーゼと目があった。


「お、おかえり・・・・・」

「お、おう。ただいま?」


普段絶対に使わない「おう」と言葉を

使った。いや、そんなのはどうでもいい!

問題なのは、エリーゼがリビングの

ソファーに座ってもじもじしていることだ。

どう考えても見ても様子がおかしいのだ。


「な、なにかあったのか。

悩みがあるなら相談してくれないか?

・・・ほら、俺は相棒なんだから!」

「あ、相棒・・・パートナー!?」

「えっ。どうして、急に英語?

・・・ハァー、とりあえず話は

ゆっくり聞いてやるから

話をしようぜ」


エリーゼの変貌に俺は努めて

優しい声音でかける。


「・・・・・う、うん」

(どうしたんだ一体全体なにが・・・

いつもだったら、

女の子と遊んで楽しかった。て、鬼の形相。

そうでなくても、全力ドロップキックする

あの金髪碧眼が!?)


隣に座ると、エリーゼは過剰な反応をして

ゆっくり離れていく。チラチラと視線を

控えめに向けていたが、うつむいたのだ。・・・ちょうど右のサイドテール

が位置的に障壁の役割となる。

つまり、どんな表情なのか伺えない。


「・・・・・・・」

「・・・そ、そうだ!帰りに師匠の店に

寄ったんだけどエリーゼに渡したい

物があるんだ」

「わ、わたしに?」


エリーゼが、驚きの声と共に顔を上げる。

雪のような顔には紅潮した頬が染めて、

眼差しには熱が込もって

口は小さく開いていた。それは

なにかを期待の眼差しであった。


「・・・あーえーと、だな。

魔法使いとしては、これを装備するべき

だって選んだ魔法具だ!」

「えっ、魔法具?」

「ああ、師匠が取り扱う物はどれも

これも絶品!」


雑嚢ざつのうから、魔石ませきやスクロールなどリビングテーブルの上に

置く。どれが、いいか分からずとにかく

いっぱい買った埋め尽くすような数。


多種多彩たしゅたさいで悩むかも

しれないが、長い付き合いになるんだし

ゆっくりと使って自分にあったのを

選ぶといいよ」

「・・・な、なな長い付き合い・・・

そ、そうよねぇ!ずっと、わたしと

いるわけなんだし」


エリーゼは、置かれた魔石やスクロールに

好奇心だったので、

説明しようと

試みるが拙いと

自分の説明に残念な

気持ちになっていると、エリーゼは

俺がいる場所の反対に顔を向けた。

嬉々とした声と怒りで早口に応える。

怒り成分は2割で残り8割が嬉しさ?

それよりも―――


「ずっと、いることなんて出来ない」

「・・・・・え?」


振り返るエリーゼは、驚愕していた。

そして、不安な目をしていた。


「悪いけど、俺はいつか日本に戻る。

前にここにいるべきだって

言ったけど・・・弟や妹がいる。

やっぱり、生まれた国に家族に会いたい

・・・そう思うんだ」

「タカノリ・・・」


エリーゼの表情は、悲痛そうにして

俺の話をゆっくり聞いてくれた。

これは、ホームショックだろうか

知らないが弟や妹の顔が見たいと思う。


「そんな顔をしなくても、本当の理由は

アニメとかラノベやゲームしたい

だけだけどなぁ!」

「その、ゲィム?ラノォベ・・・なにそれ、

おいしいの?」

「・・・狙っているとは、思えないけど

オタクの慣用句みたいなの出てくるとは」


なにそれ、おいしいの?はラノベやゲーム

などで多く使われていて

現実逃避やその場しのぎ等々と多用的な

使われる。主にオタクだけど・・・。

そして、そんな異世界では尚更なおさらだ。


「・・・あはは。異世界のニホンの住人

だから、話が通じないときあるよね・・・

うん。年代的な価値観とか論理も違って

苦しかったよねぇ。

わたしの夢なんかに迷惑をかけて」


なにかを堪えるような笑みを浮かべる。

そんな取り繕いよりも、口調や罪悪感で

苛まれていることが以外だった。


「なぁ・・・その夢を聞かせて

くれないか?」

「・・・前にも言ったはずじゃない。

わたしは、お伽噺とぎばなしの影響を受けてタカノリを召喚したのよ」


今さら、なに?と小首を傾げ純粋に

理由を求める眼差しを向く。


「聞きたいのは、そのお伽噺なんだけど

違うんだ。その原動力となった影響や

切っ掛けが聞きたいんだ。

事情があったら言わなくていい」


エリーゼは、驚いて

頬を赤く染めると同時に視線を逸らす。


「・・・・・・恥ずかしいから無理」

「・・・そうか」

「でも、やっぱり言うわ!

数多く読んで感動して夢想して・・・

特に一番の作品タイトルは

【異界の勇者と魔法使いの姫】よ」

「異界の勇者・・・」


これが、エリーゼの夢の原点なのだろうか。

きっと、荒唐無稽で失笑が恐れている

ような素振りがある。

そのためか、全部は伝えれないようだ。


「・・・」

「まあ、そう警戒したり恐れたり

するなよ」

「け、警戒していない。恐れたりも

していないよ!」


誰からも見て動揺して強気な姿勢を閉めそうとしている。


「話は逸れるけど・・・・・

実は俺、エリーゼと食事を終えてからは

魔法具店に一人で歩いていたら

スゴくかわいい女の子と見たんだ」

「・・・・・・は、はぁ!?」


衣を纏うような表情から、素の表情で

驚き困惑した。

その表情に俺は理解するまでの

時間を与えずに

自慢気になって語る。


「いーやー、スゴい美少女だったよ。

年上で包容力と笑顔が枯れた地を

花を咲かせるようなお姉さんキャラで

髪は・・・・・えーと、茶髪?で

セミロングストレートだった。

それに、グラマーだった!」


矢継ぎ早に言うと、エリーゼはうつむき始め

肩を震わせる。これは、怒り。

両手は膝の上で強く握り始める。

沸騰するような怒りの表し方だ。

そして、グラマーのあたりで

顔を上げ上目遣いで鋭い視線を向ける。

激怒した上目遣いは、仇を見るようで

正直、恐い。


「へ、へーぇ。また、かわいい女の子に

声を掛けたんだ・・・ふーん。

わたしには関係ないけど一応。

一応その聞くけど、どんな

返事があったの?」

「ああ!急にハグされて、待ってました

運命です。て、熱烈に応えられたよ。

いやぁー、これが相思相愛なのかな?

あっはははは!」

「そ、そう・・・でも怪しいすぎるよね!

普通に考えて。

すぐに別れたほうがいいわよ!!

絶対に強くオススメするわよ!!!」


机を1度、2度と幾度も叩くエリーゼ。


「心配しなくても、ヤバイと思って

ダッシュして逃げました」

「そ、そう・・・ハァー」

「最後にこの年上のお姉さんの話は

まったくの嘘です」

「なっ!?バ、バカァァァァァ!!」


謀れたとは知りエリーゼの雪に近い

顔は赤茄子トマトの色のように

変化して怒りの声を上げた。

俺は重たい空気を変えようと

理想の女の子に声を掛けられたと

語り話題を逸らしたわけだけど・・・

まさか、ここまで怒るとは予想外だった。


「ごめん、ごめん」

「そ、そう普通に笑って・・・・・

明日を楽しみにするといいわタカノリ」

「え?な、なにその・・・

不吉しか感じない言葉は!?」


明日が消えてくれないかなと思考を巡らす

結果となり後悔して上を見てため息。

壁に取り付けている時計の時刻を見て

もう、深夜になっていると驚いた。

そう知ると何の関係なのか睡魔が襲われる。


「ふわあぁー。エリーゼそろそろ

寝ようぜ。朝が早いし」

「・・・納得していないけど、そうね。

寝ましょうか・・・・・あ、ああぁっ!?」

「どうしたんだエリーゼ!?」


腰を上げれば、エリーゼもおもむろに

立ち上がる。そして、しどろもどろに?

涙目で顔は再びの赤くなっている。


「な、なんでもない。

意識しただけだから」

「意識?」

「な、なんでもないから!

寝室は別々で間接とか関係ない・・・」

「お、おーーい?」


目を閉じたエリーゼは、なにかを

唱えるようにした。

その独白に声を掛けても反応なしで

唱え続ける。


「よし!それじゃあ。また明日。

おやすみなさい!」

「お、おやすみなさい・・・・・」


言うが早いか動き出しエリーゼは

寝室に向かい入っていく。

俺は毎日よく使用する言葉を

ほとんど無意識でおやすみと返す。

ドアを閉め姿を見えなくなる。


「・・・なにが、あったんだ一体?」


エリーゼの奇行に疑問の独白を返してくれる

者は当たり前だがいない。

エリーゼに訊いてみるかと楽観的に決め、

左右が別の寝室のドアを開き

欠伸して入る。


(あれ?考えなくても俺の日常て、

ほとんどの一日の半分がエリーゼと

いることが多いなぁ)



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る