第26話 変わらぬ日常―武で語る―

「・・・うぅ~、こんな時こそ

剣で発散でもしよう」


わたしは、タカノリと別の行動時間が

あまり好きではなかった。

どうせ、かわいい女の子に声を掛けて・・・

そう考えると悲しさとか怒りが

同時にあふれる。

こんな時は、一人で剣を振るのがいい!

そうすれば、嫌な考えや気持ちも

一時的に消えてくれる。


「・・・それに、わたしは剣を振るうのが

好きだから」

「へぇー。でも、たまには相手が

いたほうが、よくない?」

「なっ、え?あ、あなたは・・・・・」


ギルドから出ようとして後ろから

よく知る聞き覚えのある声音。

振り返れば、やはりと言うべきかな?

白銀の鎧が似合う

自由奔放の騎士ジネブラさんだった。


「タカノリの・・・バカアァァ!!」


声を上げるエリーゼ。

剣の勝負する形に流れになり、

街を出ようと考えたが夜は危険な

ため門番が厳しくなる時間。

入るのは簡単で出るのは困難な城門と

化したため人通りが少なくなっま噴水広場で

ジネブラさんと竹刀での模擬戦をする。

わたしは、怒りと悲しさとか剣(竹刀)に

乗せて突きで攻撃。


「わあ、わあぁぁぁ!?

い、今の本気だったよねエリー。

軽い模擬戦なのに殺気が伝わるのだけど!

レベルを越えていますけど!!?」


ジネブラさんは、受け止めようする。

わたしの突きはフェイント。

剣の下方に進みそして、勢いよく

両手で全力で力を込め

少し屈んだ体勢で跳躍。

この動作に突きよりも素早く行う。

この迅速な攻撃は

相手の得物の剣に強い衝撃を与え

バランスを崩すか、剣を飛ばすかどちらか。

意識する前の攻撃にジネブラさんは

手から剣を宙へと飛ばされ尻餅をつく。


「次は、ジネブラさんが愛用している

ランスでお願いします!」

「う~ん、剣戟けんげきをしたかったのだけど慣れ親しんでいないから

すぐに負けたからねぇ。

よし。いいよ!」


異空間収納のバックパックから

訓練用のランスを取り出す。

異空間収納は、原初の魔法使いマーリンが

作られた古代の魔法遺産が開発した物。

その偉大な技術は現代ではある程度、

仕組みが理解し量産されている。


「ここからが、本当の模擬戦てねぇ!

さあ、いつでも掛かって来なさいエリー」

「はい。行きます!」


ジネブラさんの得意で長年に使う得物は

ランス。騎乗で使われる武器だが

時々、それとは関係なく用いる

戦う騎士もいる。

柄の上は笠の形していた。

わたしは、背後に回って攻撃をしようと

思い走る。


(さすがは、ジネブラさん。

背後に回ろうとすれば移動場所に

ランスを前に構えながら警戒している。

・・・あの、ランスの技能をタカノリが

見たら目を光らせるだろうなぁ。

家でよく見ているけど、あの形が

ヴァンプレイトとか知っているけど

後で調べたほうがよさそう)

「攻撃を仕掛けてこないなら、

わたしから行くよ!」


考察から、現実へと集中力に入れる。

短く整った銀髪を靡かせて数歩を前へ出て

長いランスを突きが放つ。


「とおぉと!・・・油断出来ませんねぇ」

「そう言って避けるけど、まだ余裕な

笑みに見えるよ。

ランスの範囲と重量があるから、有利だけど

それとも、攻めあぐねている?」

「いえ、剣一つで突撃するのが

楽しみで仕方ない気持ち・・・です!」


向けるランスへ、わたしは前へ走る。

ジネブラさんは、だいだい色の

元々が大きな目が驚きにさらに大きく開く。


「エリーて、こんなに好戦的だったかな?」

「はい!幼い頃ずっとそうだと思います」


ランスの突きを横へ避け、

攻撃できる範囲まで走る。

ランスを引く――否、引かずに

横へ払って攻撃を地面スレスレにしゃがむ。


「・・・・・・・」

「へぇー、すごい・・・・・」


重たいランスしかも、柄が長いため

横へ払うのは隙が大きい。

次のアクションに移るまで

タイムラグがある。


「ハアアアァァァァ!!」


立ち上がって前へ。そして剣を

上段に構える。


「はあぁぁぁぁ!」

「そう油断すると思ったよ。エリー」


そう不敵に笑うと、前蹴り。

得物以外の攻撃にわたしは・・・

捻り回避する。


「あ、あれ?もしかして読まれた?」

「はい。挑発的な表情がありましたし、

蹴りを放つ動作が拙かったでしたから」


わたしは、剣を振り落と・・・さなかった。

頭上へ寸止めに留まる。

一応、お姉さんのような人に物理的な攻撃を

したくない。


「決着ですね」

「・・・負けたか!強くなったから

エリーと互角に戦えると思った自分が

恥ずかしくなってくるよ」

「そんなこと、ありませんよ!

ランスの弱点を工夫する研鑽けんさんがランスに込められる気持ちで

伝わりましたよ!それにですよ・・・

前よりも荒々しくも優雅な品位もあって

素敵でした!」

「そ、そうかな?あ、あっははは。

純粋な眼差しと評価に

なんだか恥ずかしいなぁ・・・フフ」


ギルドの依頼を受け

報酬を得て問題を解決などするのを

生業とした騎士。

そんな自由奔放で金欠病にすぐに陥りやすい

選択をしたジネブラさんには

憧れを抱いている。


「それじゃあ、もう一戦!」

「はい、はい。無邪気なんだからエリーは」


数分後。仰向けに倒れるジネブラの姿を

わたしは、不本意ながら見下ろす形で見る。


「だ、大丈夫ですか?」

「はぁ・・・はぁ・・・・・あれ?

わたしの目がおかしくなった。

エリーの顔に疲れとか汗が

見えないのだけど?」

「・・・は、はい。疲れは

感じていませんね。残念なことに」


自分でも残念なこと?なにがとツッコミたく

なりそうであったが、口に出さないでいた。

折角の相手にわたしは遮二無二になって

挑み続け、ジネブラさん限界に気づいた。


間、髪かんはつを入れずに

連続攻撃・・・あれは、苦し・・かった。

ハァ・・・ハァ・・・・

エリーは、年上を・・・・・

いじめる趣味があるの・・・ハァ」

「そ、そんなこと、ありません。

無我夢中だったんです!」


思いもせぬ言葉に感情的になり否定。

まぁ、物理的な攻撃をしたくないと

思ったが、(まぁ、大丈夫かと)判断し

顔や髪はまずいのでそれ以外に攻撃をした。


「そうかな。

たとえば・・・今いるタカノリだけ?

年上だよね・・・ハァ、ハァ・・・・・」

「は、はい。二つ上の16です」

「なるほど・・・えーと、なにか

・・・・・だ、だだぁぁ

大胆な事をされて・・・

し、趣味になったとか・・・・・・」

「?いえ・・・っーー!?

そ、そんなじゃないです!!」


否定して、どんな意味が孕んでいたのか

考察して辿り着いたのは

襲われたとか・・・きっと

そんな類いの事を言っているのだろうと

理解し、顔が暑くなってきた。

た、たた、確かに結婚は13才で可能だけど

タカノリは、わたしよりも言動が

子供だし相棒だから・・・そんな

男女の関係では断じて違う!絶対に!!


「それよりも、趣味てなんですか?

あっ、いいです。恐いから聞きたくない

です!・・・唐突な質問なのですが、

その・・ジネブラさんは

恋愛経験が豊富なのですか?」

「え?わ、わたし・・・」


以外な質問だったようで、固まってしまう。

・・・ジネブラさんは、仰向けの体勢から

おもむろに立ち上がり

目が泳いでいた。落ち着こうと深呼吸。


「・・・・・そ、そうだね。豊富だよ」

「さすがは、ジネブラさん!

やっぱり、女騎士はスゴくモテるんですね」

「う、うん・・・そうだよ・・・・・

わたしモテモテ」

「えーと、魂が抜けたみたいに?

あの、淡々と応えるのはもしかして

なにか失言を?」


しどろもどろ・・・には見えないけど

顔には滝のように流れる汗。

もちろん比喩ひゆだけど、そう

錯覚するほどに漂っている。


「キノセイダヨ。

・・・それよりも、彼氏の愚痴を

聞いて上げるから」

「ふぇ!?あっ、はい・・・・・

そのタカノリとは彼氏じゃありませんよ」


強引な話題の変更に戸惑う。

それにタカノリを彼氏と呼ばれて

心の中は竜巻のように非常に荒れていく。

自分でも理解出来ないのは

そんな認識に嫌悪感がなかったことで、

逆に幸福が―――


「わあぁーー!?違う、絶対に

ちがうから!体を動かしたから

感情が昂って勘違いを惹き起こしている

だけだから!!」

「あー、ごめんねエリー。

まさか、ここまでウブだったなんて・・・

ほら、あそこにガセポがあるから

座ろう・・・ね!」

「急に優しいお姉さんにならないで

下さいよ・・・」


ジネブラさんは、勝手に判断する癖がある。

そして勘違いする。

そういうほとんどが検討違いな

斟酌しんしゃくな部分が

タカノリと似ている。

だけど、ジネブラさんと話をして

心が取り乱すことはなかった。

勧められるガセポを向かい合うように座る。

わたしは、今日の出来事を話をする

というより不満を発する。


「エリー・・・夕食でのブドウジュースを

タカノリに飲ませたの?」

「は、はい。さすがに夕食にジュースは

よくないと思ったのですけど」

「ううん!そうじゃなくて・・・

エリー自覚しているの?

待って、していないよねぇ

その顔からして。

・・・いい、心して聞いて」


真剣な表情を向けられ、わたしはなんとなく

衝撃的な言葉がくると心構える。


「は、はい。いつでもどうぞ・・・」

「飲みかけを彼氏が口にしたことは、

それは間接キスをしたことになるのよ」

「・・・・・・・・か、間接キス・・・

・・・・・・・・」

「・・・・エ、エリー?」


ジネブラさんが、心配そうに声を

掛けてくる。明るく応えようと考えるが

すぐに思考は別の方向へと動く。

停まっていた時間は動きだし

間接キスという言葉にそのことに

もたらすものは―――――


「あわ、どうしよう・・・そんな

キスをしたの。わ、わたしがタカノリに?

ううぅぅぅ、ぐすぅ・・・・・ぐす」

「な、泣かないでエリー!?

ほ、ほら間接キスなんてキスの内に

入らないからねぇ」

「・・・・・そ、そうなのですか?」

「ぐっ!かわいいよエリー」


わたしのなにが、可愛かったのか

ジネブラさんは本能のままに頭を

ナデナデしてくる。

気持ちいいから別に構わない。

それよりも、キスの内に入らないか・・・

よかった。自然と安堵の息が零れた。


「ハァー・・・そうなのですか。

安心しました。タカノリとはキスなんて

したくありませんからねぇ」

「言っていることと顔が違うよ!?

・・・・・これは、エリーが自分で

気づくしか進展はなさそうだね」

「?はい、がんばります・・・」


要領の得ない言葉に疑問を覚える。

その比ではないのがある・・・

何故か安堵しているのに、落ち込むような

ガッカリが覚えていると言うのか

曖昧模糊な感情に戸惑いを覚える。

顔は、熱かったのが急激に冷めていく。

なにかの病気かな?




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る