第25話 変わらぬ日常――覚醒のつるぎ――

ギルドに食事と駄弁りの後、

宿に荷物を置いて俺は、魔法具店に向かう。

月が見える時間に16才の俺が

一人で歩くのは日本なら駄目だろうなぁ。

そんな今では、益体のない事を考えてれば

辿り着いた。


「こんばんは、師匠」

「くく、またもや暗黒よりも深い

深淵を望むか?ブラックファングよ」


師匠は、かっこいいポーズをして

挨拶をする。

なにより、前もって自分で定めた

言動ではなく毎回、違うセリフやポーズを

してくれるのだ。そして、自分が普通に

挨拶したことに忸怩じくじな思いをする。


「流石です師匠・・・まさしく

日進月歩にっしんげっぽを地で行く

人で」


俺は軽く拍手と率直な感想に師匠は

当然と不敵に笑う。

やおらにレジの前へ近づく。


「造作もなきことよ・・・して、

目的は、魔石か武器か?」


ほぼ毎日、入店しているため師匠が

俺が欲するものを知っている。

もちろん全部、知っているわけではないが。

俺が主に購入、物色するのは

魔石、杖、腕輪、年季ものほうきなどで今夜は俺ではなく、相棒のため来た。


「あー、いえ今日は俺のじゃなく

仲間の魔法使いにプレゼントを」

「フム。その魔法使いは、実力は

どのくらいだ?」


訊ねている意味は、使用できる魔法レベルと

魔力・・・・・この異世界では個々のレベル

つまりは、プレイヤーレベルは、

重きを見ていない。重要なのは

イマジネーションで、わるい言い方をすれば妄想の力が魔法使用レベルを決める。

そのため、俺のレベルエリーゼよりも

低くても上級魔法が多数取得している

所以である。

そして、魔力はそのイマジネーションであり、想像力という曖昧なもので

増幅するらしい。


(俺が元中二病で重症レベルだからこそ

強力な魔法を使えたのだけど、エリーゼは

そのイマジネーションが不足

しているからなぁ・・・

確か魔法は中級魔法が最も多く使っていた)

「たぶんですけど、中級魔法レベルです」

「そうか・・・なら、この魔石が

いいだろう」


師匠はレジから、整列した商品のたなの上から数えて二番目の棚にある

黒い魔石を掴み、それを

俺によく見えるようにてのひら

広げて見せてくれる。


「魔石ですか・・・宿る魔力が尽きるまで

使用できる消費アイテムですか?」

「この反応からして、望んだ物では

なかったようだな・・・

少しここに留まれ!他の探してくる」

「あっ、手伝います」


師匠についていき、レジの奥に進みドアを

開けば禍々しい幾何学模様の壁と

そんな場所に不具合な普通すぎる

商品が並べている棚や床には箱など。

今になって、ついてきたが

手伝うことが分からない。


「大したものがないが、少しの余興に

なるだろう・・・好きに魔法具を

見るといい」

「は、はい・・・」


師匠は、在庫にある魔法具を自由に見て

ヒマを潰したり、と意味だろう。

お言葉に甘えて物色しよう。


「それにしても、師匠。本当に改めて

見ると強力な魔法具が多いですよね。

他の魔法具店を行きますけど

種類があっても、どれも普通で

店の人には知識が足りなかったりで

オーダーメイドをしても

武器が完成まで遅いで

性能が思った通りですから

いいんですけど・・・・・

師匠はスゴいですよね。

漆黒の杖・・・

エターナル・ゼロを作ってくれて

助かってます」


アンキャニーナンバー0

エターナル・ゼロ。

師匠が、俺の魔力と魔法にあった杖を

作ってくれたもので、

通常の杖よりも魔法を強化に特化した杖。

しかし、強化のためイマジネーションも

かなり求められるようになった。

杖には、柄の部分や先端にある大きな

魔石などがあり、魔法の補助や強化など。

素材や魔法をかけて化学反応のような

ことをして作っていると師匠は前に

言っていたのだ。


「・・・フン、それぐらいは当然だ。

いくつかの試作品の杖を使って

推し測れば容易に分かるだけよ」


師匠は手を止めずに魔石を探し、

俺はただ在庫にある物を見て

歩いて話でもしようと決めた。

話題は自然にやはり魔法具になる。


「そこまで、やってくれるのは師匠

だけですよ。頼んだ通り以上するのは・・・

素朴な疑問ですけど、どうして

こんな場所に店を?

師匠なら、立地や宣伝など多少は高くても

絶対に商売繁盛して上手く行けるのに」


師匠のお店は、路地裏など通り

治安が他よりも悪そうな

場所にある。それが疑問だった。


「フッ、そんなの決まっているだろうに。

闇の魔法具店にふさわしい場所こそ

ここだったことよ!

フッ、ハッハハハハハハ!!」


・・・言われてみれば、夜に行けば

怪しく照らす照明器具の店内と

壁には魔方陣などいくつかあり、

不気味な趣がある。

そしてこんな暗く狭い場所だと

より一層に強く思えるわけだ。


「利よりも闇を手に

入れたわけですか・・・ハハハ!

さすがは師匠。深淵を覗く時、

深淵もまた此方を覗いている・・・

そんな次元を越えた見解を感じさせます!」

「そう!我は常に闇と語る・・・

くく、汝だけの闇を知り

貫く精神は貴重であるぞ!」


師匠に感化され中二病を遺憾なく

発揮をする俺。

棚の上にある、銀色の魔石を目に入り

見たことないものだった。


「ブラックファングよ。

いくつか、使えるものを見つけたぞ!

この中を選びが・・・・・ほう。

その魔石が気になるか」


師匠の声に振り返れば、魔石や腕輪など

山のようになった商品を抱え

持って来たようだ。

俺が見ていた銀色の魔石に師匠は

口角を少しだけ上げて言う。


「いえ・・・はい。

この輝きにはなにかがあると、

そう感じさせる」

「左様、と言いたいのだが、まだ開発中

なのでなぁ。出来る頃には

ブラック・ファングは別の場所での

上にいるであろう」


それは、完成まで時間が掛かって

俺は、別の土地にいることだろうか。

いつまでもここには、いないだろうし

離れるだろう。


「・・・・・そうですか。

ああ、重力の魔法を使ったような

重たく感じるぜ。

師匠、レジに行きましょう。

さすがにその山のような魔法具を持って

いると、疲れますよ」

「そうであるなぁ。

では、言葉に従うとしようか」


師匠は、俺の言葉にかっこよく応える。

その後ろについていき、俺はエリーゼと

考えないといけないだろうと思った。



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