第24話 変わらぬ日常は、余裕の心なのだ!

「「かんぱい!!」」


祝いの合図の言葉と共に、ジョッキを

軽くぶつけさせると、ゴクゴクと飲む。


「ぷはぁー、おいしい!

やはりクエスト終わった後の

ブドウジュースは、最高だぜ!!」

「そうね。たまにはブドウジュースも

いいかも!」

「そうだろ!エリーゼにこの素晴らしさが

理解あって、嬉しいなぁ・・・」

「そんな、大袈裟な反応されても・・・。

でも、ジョッキにブドウジュースって

スゴい量だよね」


恐る恐ると、エリーゼは両手で取っ手を

持ち自分のジュースが入っている

容器を見る。

エリーゼに釣られた訳ではないないけど、

俺も自分のジョッキを見る。

確かに普通にビールを入れる容器に

ブドウジュースを入れているため

スゴい・・・3リットルあるだろう。


「やっぱり、ギルド出されるのは

主にビールなのかジョッキだよなぁ・・・

エリーゼ一応は女の子なんだから

無理しないで俺に渡してくれ」

「ええ、限界に達したら

そうさせてもらうわ。

・・・ねぇ報酬なのだけど、

わたしのわがままに付き合ったんだし、

半分じゃなくて8割はタカノリに――」


俺が半分と入れた袋を魔法ローブの

懐からルビーを取り出そうとする

エリーゼに俺は遮る。


「変に気を使うなよ」

「いえ。独断専行みたいなんだし。

これぐらいは、当然だと思うの」

「自覚はあるんだ・・・

いやいや、エリーゼは

仲間で相棒なんだ!

迷惑は付き合うだろ普通に」


ホールドとフェイの元仲間の二人がパーティ

再加入をして、最後に

別れと二人の次の道に応援をした。

宴にホールドとフェイは

明るく笑っていた。

ようは、パーティをして楽しくしっかりと別れるために思いついた事だ。

別れを告げると、お互いの次なる道に

進むことになったはず。

あれから、エリーゼは俺に遠慮がちな

行動が増えていた。


「・・・・・・え、えーと

最近は、平気で恥ずかしい事を

言うよねタカノリは」


エリーゼに仲間とか相棒とか平気に

言えるのは自分でも驚いているし、

当然だと傲慢にも俺は抱いている。


「・・・いつの間にか、そう想えるんだ」

「えっ!?」

「だから・・・その、悩みがあるなら

遠慮があるなら俺に相談してほしい。

コミュ障だし頭はエリーゼの方がいいけど

俺は相棒なんだから、もっと・・・

頼ってほしいんだ!」

「・・・・・・・・」


茫然となるエリーゼ。あ、あれ?

俺なにか致命傷な事を

・・・・・・・・・あ、あれか!

相棒とかそんな熱くなって

バカじゃないとか呆れてキモいとか思われ

たとか。もし、エリーゼが逆に

言われたら、そう思えてくるぞ。


「そ、そうよね。わたし達は相棒

なんだし、つまりはパートナー。

そう!パートナーなんだよね、うん。

・・・つ、次は色々と言うから

今日はこれで勘弁してあげるわ」

「わ、わかった・・・分かったから。

一度、落ち着こうぜ。

言葉が目茶苦茶めちゃくちゃだぞ」


頬は赤く、喜色満面になるエリーゼに

一瞬だけ、もしかして俺のことが・・・

なんて考えてしまう。

も、 勿論もちろんなのだがそんな

わけないと長い付き合いで知っている。

相棒や仲間とか言われて嬉しくって

仕方ないと思うのだ、いや絶対にそうだ。

本当にエリーゼは、分かりやすい。

憑き物が落ちたように元の状態に

調子になるエリーゼ。

それから、駄弁だべんは続き、

気づけば飲んでいた

ブドウジュースが空になる。


「ブドウジュースが・・・・・・・」

「ハァー、はいはい。わたしの

あげるよ」

「やったー!サンキュー、エリーゼさん♪」


差し出すブドウジュースが入っている

ジョッキを受け取り残りの量を即時に確認。


「おぉー!!しかも、かなりの量がある。

ゴクリ・・・ほ、本当に飲んでも」

「いいわよ。わたし少食だし」


軽く手を振られ雑に扱われる。

ブドウジュース渡されていなかったら、

薄情とか思っていた。だが、

今は・・・気にするなとかそんな風に

見えるのだ。感謝の念があると

別の見方になるのかと新しく発見した

ような気持ちだ。

俺は、言葉に従いゴクゴクと勢いよく飲む。


「っ―――!?ゴホゴホ!!

・・・意味もなく咳き込んだ」

「ほら、落ち着いて。

わたしに落ち着けといいながら、フフ」


朗らかに笑う相棒に、なんだよこの大人の

余裕みたいなのは・・・・・。

そう思いながらも今は怒りの類いはなく

これは反射的に思ったことで、

悪態をつくことが癖になっている。

まぁ、悪態を吐くが癖は良く

ないんだけどね。


「プハアァー!ブドウ最高のいただき!

ありがとうエリーゼ」

「男の子って、食事の量がスゴいよね」


飲み終えると、エリーゼがまるで

女の子のような言動をした。

・・・熱でもあるのか?


「そうでもないと思うぞ。

だって、フェイなんかビールを浴びるように飲んでいたし。リアルの豪酒を見たって

驚いたぐらいだから個人によるんじゃあ?」


白いツインテールの神官が豪酒なのが

俺が抱く美少女神官・・・聖職者の

イメージを壊した。

ちなみに、異世界では成人の年齢が早いから

飲めるけど日本では絶対に駄目!

飲むのは20才以上から。


「う~ん。そうよね・・・そうだったね。

わたしもあのときは驚いたかな?

普通に朝でも飲んでいるし」

「はっ、はは・・・なんだろう。

乾いた笑みが出る・・・・・」

「そういえば、フェイを勧誘したのは

タカノリだから・・・類は友を呼ぶか」

「おーい、フェイをそんな扱いにするなぁ」

「・・・ふーん。フェイをまずは

庇うんだ」

「ど、どうして睨んで・・・

ほ、ほら俺の魔石をあげるから」

「そんな、複雑なものなんかいいわよ」


話題が尽きると、食事して周りをなんとなく

視線を向ける。

ギルドの食堂にはクエストを終えた

荒くれ者や淑やかな人までいて

賑やかだった。飲食に勤しむお姉さんが

通りすぎる。・・・そうだ!

折角だし、師匠の分も持っていくか。


「すみません、帰りのブドウジュースを

お願いします!」

「え?・・・か、かしこまりました」

「・・・どれだけ、ブドウを

愛しているのよ」


注文した俺にエリーゼはため息をこぼす。
















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