第21話 望んでも否定しても変わらない

次の日、ギルドに張られている

依頼の内容と睨めっこ。

エリーゼによる剣術の鍛練を終えると

寄り道があると伝えるエリーゼ。

俺は、どこに行くんだ?と応える前に

走って去っていったのだ。


(あれ?もしかして俺がなにか言う前に

走って逃げていたとか?

そうだとしたら、後で訊いてみるか。

・・・気になったのが、よく戦っている

レオーの討伐とか多いなぁ。

討伐じゃなく、たまには収穫にするか)


当分は勇者として活動しないと

いけなくなったからなぁ・・・戦闘は

極力ないこれが妥当だろう。

エリーゼが来るまでは、なにしようか。


「その・・・少しよろしいですか?」

(よし、食堂でテキトーなブドウを食べて

読書を耽るとするか。おそらくエリーゼは

すぐに戻ってくるけど)


振り返ると、前に角刈りの冒険者の風格が

ある騎士ホールドがいた。


「おはようございますタカノリ殿」

「お、おはようございます・・・

そのどうして呼び捨てではないのかな?」


仲間として復帰・・・とは思えない。

それに声を掛けられたのだと、思わず

驚いてしまった。おそらく少し失礼な態度を

取った俺に偉丈夫の騎士はとくに

気にせずピシッと姿勢を正す。


「もはや、パーティの一員ではないため

呼び捨てするなど失礼だと思った

所存です」


騎士の敬礼をされ、これが騎士の

敬礼なのかと感心と、どう応えようと

戸惑う。


「い、いえ別に気にしていませんし・・・

そ、そうだ!パーティに戻って

一緒にクエストとか?」

「いえ、それは出来ません。

一度、逃げてしまい仲間に醜態をさらし

た挙げ句・・・タカノリ殿の信念を

蔑ろにした発言。数々のご無礼に

陳謝ちんしゃを参ったのです。

・・・本当に申し訳ありませんでした」


深々と頭を下げた。誠意のある謝罪、

おそらくこの異世界でもなかなかに

いないであろう誠実な騎士だと

俺でも分かる。こういうときエリーゼが

いてくれたら、なんとかなったのかなと

考えるが、今いない人を頼るのは

仕方ない。うまく説得とか話すような

会話は得意ではないし、思ったことを

言葉にしよう。それが誠意の返しだから。


「・・・信念なんてそんな立派なほど

じゃないし、気にしないで下さい。

本当に気にいない・・・けど、

エリーゼを置いたことに対してだけは

怒っています」

「・・・・・・」

「エリーゼは、悲しかったはずですよ。

・・・まぁ、逃げた俺も人のことは

言えませんけど」

「ですが、タカノリ殿は戻られた。

ドラゴン相手だろうがエリーゼのために

駆けていく姿は、俺が理想としていた

騎士のようでした」


過剰な称賛され否定がスゴくしたいのだが、

こうも爽やかに言われると

嫌々ながらも受け入れるしかない。

正直に話すのって、思ったよりも難しい。

包み隠さずに思ったのにこれだから。


「あ、ありがとう・・・その、

これからどうするんですか?」

「ここを離れ、南にある

ガルシア・タウンでしばらくは討伐依頼で

精神を鍛えようと考えています」


ガルシア・タウン。名前からして街かな?

あとで、エリーゼに尋ねようと

頭の中でしっかり記録。

さて、元仲間が離れるのは少し寂しく

思うがこれは、ホールドの選択したこと。

あれ?その元仲間のフェイはどうするのだろうと気になり始めホールドに訊いてみれば

一緒に行くわけではないらしい。

そして、食堂の隅にいるらしい。


「久し振りフェイ」

「・・・タカノリさん?それに

ホールドさんも・・・お、お久しぶり」

「久し振りです・・・タカノリ殿が

フェイに話をしたいことあるようです」

「わ、わたしに・・・ですか?」


白いツインテールの神官の美少女は

頬が紅潮していて指を自分に向け

首を傾げの上目遣い。

テーブルの置かれているのは、なんの

種類か分からないがビールとつまみになる

枝豆があった。頬が紅潮していたのは、

これが原因らしい。


「それよりも、こんな朝からビールを

飲んで大丈夫?」

「大丈夫ですよ。飲み始めたばかりで

今から一人でやけ酒です!」

「少々、控えたほうが。タカノリ殿が

引いています」

「はっ!?そ、その・・・辛いとき

だけですよタカノリさん!!」


涙目ですがり付くような声音に

俺は、首を何度も縦に振る。

フェイは俺の頷きで安堵して、ビールを

勢いよく飲み始める。


(何て言うか・・・華奢で可憐な

神官の美少女がビールって、

ギャップがスゴすぎる・・・・・)

「ゴクン。タカノリさんはわたしに

笑いに来たのですか?」


悲痛そうに上目遣いに尋ねるフェイに

違うよと優しく否定して

向かいの椅子に座る。


「ちょっと頼みたいことがあるんだが――――――なんだけど、どうかな?」

「ふぇ!?い、いいのですか?」

「ああ、もちろんだよ」


俺の言葉にフェイは、驚愕と困惑を

ない交ぜった反応をする。












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