第18話 二人は凱旋する
俺とエリーゼは、依頼内容の
盗賊が奪った形見を持ってギルドに入る。
受付のお姉さんが依頼者に確認した後に
報酬を出すことで、
そのため確認を終えるのは明日の
夕方ぐらいとなるでしょうと営業スマイルで
伝えられる。
そして、左にあるギルド食堂または酒場と
呼ばれるイスに座る。
今回は向かいではなく隣の左に座る
エリーゼ。
「あれだけ、頑張って盗賊撃退・・・
はしたかは、ともかくだ。
形見を取り戻して報酬が明日って
なんだよそれは!?」
「仕方ないわよ。依頼者の形見か
なんて確認するまではねぇ」
俺は理屈は分かるけどどこか納得できずに
嘆いていると、エリーゼは物静かに
正論と控えめな微笑みで返してくる。
盗賊のエリーゼに向ける眼差しに
怒り心頭に達して魔法を使って気絶させていくあたりから様子がおかしいのだ。
他にも疑問を感じたのはある。
「それにしても、エリーゼが
報酬を後なんて丁寧に応えた受付の
お姉さんに怒っていないよなぁ
エリーゼ?」
「怒ることじゃないからねぇ」
琥珀色したなんていうワインか知らないが
優雅に飲むエリーゼ。
「怒り心頭に達するのはエリーゼが
俺よりも三倍は早いって思っていたん
だけど・・・なにかあったのか?」
「し、失礼じゃないの!
普段、怒るみたいに・・・
言わないでほしいわ。
あと、怒り心頭に達するだけど
間違っているわよ。正しくは
怒り心頭に発する・・・強い怒りが出す
んだから、溜まった言い方じゃなくて
発するでしょう?」
「そ、そうだったのか・・・
勉強になったなぁ」
エリーゼは、短期だけど博識なんだなぁーと
感心して、テーブルの上にある
ブドウジュースを飲む。
疲れた心と体にはこの口の中に溢れ出す
爽やかさとほどよい刺激の甘露の宝石。
有り体に言ってスゴく美味しい。
「・・・き、今日は災難だったよね。
仲間二人も自然にいなくなって」
「俺の方はなんとなくお別れのような
言葉をしたし、そうなるんだなと
思ったから別に」
真のメインヒロインと思われたフェイ
は、それとなく別れの言葉を含む
言い方だった。
ホールドと会話したがほとんど
覚えてなかった。
(フェイに一緒にいかないかと甘美な誘われ、エリーゼと協力してドラゴン倒して
ついでに盗賊を撃退してアジトに侵入して
形見を戻したわけだけど・・・
それで、エリーゼといつもと変わらずに
二人か。もしフェイの誘いに乗り
エリーゼが一人でなんとか逃げて
それから会うことなくフェイと二人だったらどうだろう・・・)
「俺が安心して帰れる場所は
エリーゼ以外しかないよな」
もしもの考えをするなんて、無駄だと
分かっても想像してしまう。
だけど、和気藹々と隣でいてほしい
それと心から帰る場所がエリーゼがいる
のが前提と俺の中ではなっていた。
それに気づきなぜか笑みが零れる。
どうして、好きな美少女でもないのに
安心なんて毎日いて楽しいなんて思うのか
不思議だ。横目でエリーゼを見てみれば
・・・頬を赤らめポカンとしていた。
「ど、どうしたんだ?今日は本当に?」
「は、はぁ!?な、なな、
なんでもないわよ!
それよりその干し
いただきからねぇ」
「なっ!頼めばいいだろ。俺の干しブドウを食べるなよ!」
「フフ、そんな狭量な器だとモテないわよ
タカノリ」
「ハ、ハァ?お、俺は日本にいたときは
モテモテで告白したりされたり
日々でしたけど!もちろん何度もデートを
重ねているから!」
バン!机を叩き立ち上がるエリーゼ。
肩が震えているのは強い怒りで起こしているのだと一目で分かる。
相棒だからこそ分かる!これは・・・
マジで怒っている。
「・・・ねぇ、それ詳しく教えてくれない」
「よ、よく分からいままだけど
落ち着こう。ほ、ほら干しブドウでも
食べてなぁ」
「・・・好きでも食べたくもない」
この急すぎる変化。
喜怒哀楽の表情の変化が激しく
まるで
戦闘のときや食事での言動からして
情緒不安定になっているのか!
「エリーゼその、よかったら明日なん
だけど好きな所に行かないか?」
「・・・そんなこと・・・え?
わたしが好きな所?」
起爆寸前の怒りが、一気に霧散し
首を傾げるエリーゼ。なんだかそんな
表情を見るのは懐かしい。
「ああ。たまには依頼とか休んで。
一人でもいいし、俺とどこかに
行くのは?」
「う、うん。じゃあ・・・二人で・・・」
エリーゼは乙女のように頬を赤らめ
うつむいて返事する。
もう疑いもなく精神が不安定で
感情が混乱しているのだろう。後で
治癒魔法の本や病院など調べなければ。
まさか、一難去ってまた一難か。
相棒が病むなんて異世界は世知辛いなぁ。
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