第17話 ずっと二人のターン
「ハァ・・・・・ハァ・・・くっ!」
剣を握る力が無意識に弱くなったのを
気づいたエリーゼは、自分のスタミナが
そろそろ限界に達しているのだと知る。
「グッオオォォォォ!」
ドラゴンは、威嚇なのかおたけびなのか
意味もなく
咆哮を上げることに、知性がないのだなと
考える。一部のドラゴンには人の
言葉を話すものがいると聞いたことあるが
あれにはないと結論する。
「でも、あの
でしょう。斬ても、斬ても傷が浅い上に
効いているのか疑いたくなってきたよ」
例えるならば、厚い城壁に
斬っているようなもの。
「ハァ、ハァ・・・」
「グオォォ!」
尻尾で振り払いに、後ろへ引いて回避する。
「動作が無駄で避けるのは簡単なのだけど
もうそろそろ体力が・・・
ハァ、ハァ・・・ハアァ」
「グッオオン!」
「相手は動いていないから、叫ぶほどの
体力がおありで。
・・・一人しかいないし、撤退の時かな?」
無茶してあのドラゴンを倒す
メリットが少ないと判断。
相手は翼を使おうがここは、木々が生い茂っている場所で動くのが鈍いだろう。
「せめて、あれだけを潰さないとねぇ」
エリーゼは、後ろへ走り助走してのジャンプして木の幹に両足をバネのように力を
込めて解き放つ。
幹を蹴っての大ジャンプして両手に柄を
握り相手の目を向かって斬撃の構え。
「はあぁぁぁぁぁぁーー!!」
ドラゴンの左目に剣による一閃。
「グオオォォォォォウウゥゥゥ!!」
このジャンプと斬撃におよそ四秒。
さすがにドラゴンも目には鱗のように
固くはなかった。
返り血を魔法のローブに掛かる。
着地して、汚れたローブを見て眉を顰める。
「あー、少しお気に入りだったのに・・・
まぁいいかな。そんなに
高くなかったから事だし」
嘆息し、エリーゼは木の幹に向かい走る。
ドラゴンは、両手を振り払う動作に入るのを
見るエリーゼ。
ジャンプと幹を強く蹴る。
「グォォォォ」
かのドラゴンは、右手で襲ってくる
敵を迎撃せんと
叩き落とすように振るう。次に反対の
左手も振るう。しかし空を乱暴に
振るったのみに終わる。
エリーゼは、ジャンプした
方向はドラゴンではなく、隣の右の木に
だった。
「残念だったねぇ。2度目になんらか
対策はするだろうなぁ考えるよねぇ。
だから、フェントしたわけで
目に追い付くのが必死だからの無鉄砲な
攻撃したようだけど――」
幹から別の幹に移っていたエリーゼは
今度こそドラゴンの最後の視界となる部位に
目掛けて幹に力を入れ蹴る。
「その判断が抵抗が
ことになった」
両手に力を入れ片方の目も破壊しようと
剣に力を込めて性格的に絶対的な
必滅の一撃を放つ。
しかし、その一撃は弾けた。
「えっ!目を閉じて護った!?」
ドラゴンは、斬撃の攻撃が来ると
ごく自然に目を閉じていた。その閉じた
弾かれたことでバランスが崩れドラゴンの
真下へと着地する。
ドラゴンからして
エリーゼからしたら想定外の不運。
ドラゴンは真下へいる相手に爪を
降り下ろそうとする。
(わたしの
押し潰される・・・ここは避けないと)
「グォォォォ!グオ!?」
眩い複数の光の矢がドラゴンを襲う。
少し遅れ風を引き起こしたと思われる
四つの魔石がエリーゼを包囲する形で流れて
来て結界を作り出す。
「・・・この鮮やかな緑色は
障壁結界!
でも疲れが取れていくような
心地よさがある?
ううん、それよりも誰が?」
「フッ、この奇跡を起こせたのは
魔法と未来を見据えたこそ成せたこと」
「っー!?そ、その声・・・」
茂みから現れる者は黒いローブをした男。
杖には魔力軽減の補助がほとんどないが
愚者の石と呼ばれる漆黒で禍々しき魔石を
先端に付けた杖。
その魔石は、見た目は宝石のようで
決定的に違うのは魔力が含まれている。
愚者の石は、魔力軽減などのなく
ただ攻撃魔法を特化したもの。
その杖を持つ者の独特な口調は
エリーゼは一人しか知らない。
「タ、タカノリ・・・どうしてあなたが?」
「
1度、失った心を取り戻せたのだ。
強く輝くこの魔法を
タカノリは、ドラゴンの声が聞こえ
そこから迷わず進めた。
そしてようやくエリーゼを見つけると
ドラゴンの真下にいたので
急ぎ光の中級魔法ライト・アローを
素早く詠唱で放つと
すぐに懐から高価な魔石を無詠唱での
風の中級魔法エアー・ブレイドを
使い飛ばす。無詠唱の場合、威力が激減する
が攻撃以外の利用できる
たとえば結界を展開のために
飛ばすためとかなど。
「もうその支離滅裂な言葉使いはいいんだけど、どうして戻ったのよ」
「なっ――!?」
タカノリは、驚き口をあんぐりと開く。
逃げたことに攻められると思っていたが
まさか、ここに戻ってきた理由を訊かれるとは思いもしなかったのだ。
「・・・か、神のお告げであって・・・」
「ないわね。そんな下手な嘘をついてる
ことぐらい分かるわよ」
結界が解かれタカノリの隣に歩みジト目を
向けられる。
「ああー!助けにきたんだよ。
どうしてエリーゼはそうデリカシーが
ないのかな?」
「ちょ、タカノリだけには言われたく
ないんだけど!?
ねぇ、どうして逃げたのに戻ったのよ!」
「忠告すると、そうしつこく尋ねると
モテないんだぞ!」
「別にモテたくって振る舞うような
事をしていなわよ!」
「えぇー!そこで憤るの!?別にこの年だと
珍しいことではないんじゃないか?」
「そうね、認めるわ。でもタカノリの
場合は完全に逸脱しているわよね。
見境なく女の子に声を掛けては鼻の下を
伸ばして・・・」
「み、見境なくはないぞ!」
会って早々、お互いの不満をぶつける応酬に
夢中になっていたため、ドラゴンが
右手を上げ降り下ろそうとする。
「 グググウゥゥ!」
「あー、忘れていた!これで」
懐から魔石を地面に強く投げ展開して
攻撃を防いだ。
少し前とは違い魔法の強化させる杖やローブ
があるため強力な障壁となっている。
「起こせ風の刃【エアー・ブレイド】」
今度は詠唱での風の中級魔法を放つ。
障壁の外側から風の巨大な刃が出現し
まっすぐ飛び命中するが頑丈な鱗が原因で
ダメージは小さい。
「あの、黒い鱗だけど硬すぎない?」
「そうね。なにかいい攻撃魔法はない?」
「・・・思い付く限りにあるけど、
エリーゼまだ、やれるか?」
「やるなと言われてもやりますけど」
「それは、心強くてけっこうなことで。
・・・すぅー・・・・・
万事に力で【エンハンス】!」
強化魔法のエンハンス。物理攻撃を
強化させる魔法で持続時間は魔法を使う
力量や魔力消費など増減する。
「いつのまにか、強化魔法も
使えるなんて・・・」
強化魔法は全部が中級魔法クラスで
上級魔法を取得している魔法使いでも
覚えていないのが普通なのだがタカノリは
中に病的な感性で難なく理解してすぐに
取得した。
「これに懲りて我を勇者など
力を常に加護させると誓うが?」
「冗談・・・タカノリには勇者として
活躍してもらうから。今日は特別に
危機的な状況だからよ」
「既にそう返ってくると分かりきって
いたが・・・無茶ぶりすぎる」
不満を上げるタカノリは、言葉とは裏腹に
頬を上げて楽しそうにしていた。
エリーゼもこんな
嫌々でもどこか楽しそうな声に
微笑みが
「くくっ、それとぜひ試したいことが
あるぜエリーゼ」
「はいはい、なにタカノリ・・・え?
わたしの剣を触ってどうしたのよ」
「・・・・・・」
「いくら障壁の中だって悠長すぎない!?」
「グオォォォンン!」
ドラゴンは、風の魔法を受け次の攻撃に
備え虎視眈々としていたが、
なにも起きずにいたため反撃する。
障壁に轟音が起きていつ壊れるかエリーゼは
ひやひやしていた。
「・・・よし、成功だ!」
「や、やっとなの・・・わ、わわ、
わたしの剣が炎でメラメラになっている」
赤く荒ぶる炎を纏う剣を見てエリーゼは
感嘆した。
「フッ、この魔法を纏った力を剣に乗せるがやっぱりトキメクものだな。うん、うん!」
「・・・ここまでスゴいと勇者じゃなくて
魔法使いとして検討するべきかな・・・」
「それと、もうそろそろ結界が決壊する
から頼む」
「了解!」
パキン!ドラゴンの腕に破壊される結界。
タカノリは後方へと走り
エリーゼは前へと
破壊したが、攻撃を塞がれ降り下ろす
腕は遅々。
「ええいぃー!」
足下にエリーゼの華麗で精密な斬撃。
のジャンプそして落下速度を加えての
大上段斬りの見事な縦の一閃。
そして遅れて斬撃された部分から炎が
燃え盛る。
「グググオォォォォォォ!!」
「あっ、き、効いた!鱗を傷つけて
それに容赦のない炎が起きた!?」
エリーゼは、今までの苦労していた敵に
簡単にダメージを与えられ瞠目する。
「そんなの我の力を与えたのだからなぁ!
飛躍的に強化など造作などないことよ」
エリーゼのリアクションに自分が力に
なっていることに嬉しくなり高飛車になる
タカノリ。
「いや、結局はわたしがこの攻撃したわけ
だから少し偉そうじゃない?」
「なっ!?・・・なら俺だって
すんごい攻撃をしてやるからなぁ!」
両手を前へ向け
魔力の根源たる想像を始める。
異世界での住人でもないタカノリが
魔法を使えるのは
想像を具現化する事象がそうさせるのだと
エリーゼに教えてくれたことを
思い出すタカノリ。
「大いなる一撃で敵を滅するため
離れるのを
「あ、煽ったら
・・・とりあえず、任せたわよ」
「任せよ・・・スゥー、ハァー・・・
【ライトニング・ブラスト】ォォーー!」
両手を横へ向け解き放つ魔法は
眩く輝く荒々しい光の
ドラゴンは、断末魔を上げる。
「グガォォォォ・・・ォ・・・・・」
無慈悲な美しき光が消えれば、
大きいな跡を残した地面だけが残る。
ドラゴンは、跡形もなく消えた。
「・・・これぞ、
なき強力にして圧倒的な力・・・
光属性の上級魔法の
ライトニング・ブラスト。
また、つまらない者を魔法を
使ってしまった」
「・・・・・スゴいんだけど、
どうしてだろう、
こう無性にイライラするのは?」
あれだけ、苦労したドラゴンに逃げた人が
戻ってきて難なく倒すという
訳のわからない状況だとエリーゼは
戸惑いストレスがやってきた。
「それは、魔法が至高で最強だからだろ!」
「はぁー!そんなわけないでしょう。
覚えるのに苦労するし、戦闘のために
学ぶのに書物とかイメージを高めようと
座ってばかりめ本末転倒!
身体を鍛えないと強い身体は得られないし
強い魔法を多く得る代償に身体は
なまって、弱々しくなるのよ!
それに引き替え剣や槍なら
毎日の素振りで――」
「エリーゼ思うのだけど・・・俺の
いた日本ではそんな考えをしている人は
数百年前の考えであって
今さらそんな古くさくって
そんなのは――――」
「なっ!?わ、わたしが古くさい・・・
タカノリのその日本がおかしいのよ!」
「いーやー、そんなことありません!
最近は個人を大事にして個々を尊重に
進んでいる素晴らしい国ですよ。
この異世界は・・・まぁ、
いいと思っている」
「うん、そうよね。この世界は
素晴らしいのよ」
「少し不満があるとすれば、ゲームがない
スマホが使えないのと、本が少ないのと
アニメがないことだな」
ドラゴンを倒した二人は、いつもの
ごとくケンカを始めた。
戦闘していたときよりも長くお互いの欠点と
時々の長所など言い合い。
新しい仲間の二人は自然脱退になるだろうが
自然と落ち込みよりも
相棒と二人でいられる方が嬉しいのだと
上になり、普段よりも話をする。
そのため、敵が近づいたことに
気づくまで遅れた。
茂みの中からゴソゴソと動き現れるのは
凶悪そうで乱雑な格好をした男達であった。
「へへ、ドラゴンの声をしたと来てみれば
身なりのよさそうな男と女がいるぜ!」
「二人だけなら、戦闘で疲れていて
楽に倒せそうだな。おい!」
得物は研いでいないボロボロ剣と短剣を
した盗賊であった。
確かにドラゴンは倒したが疲弊したと
言えばノーである。
「ああ、エリーゼが選んだ依頼内容が
盗賊に奪われた形見の回収だったなぁ。
潜んで取り返す作戦は大いに失敗したなぁ」
「ええ、そうね。相手の人数が多いし
普通ならピンチよねこの状況だと」
囲むように現れた盗賊にタカノリとエリーゼ
は、落ち着いて会話を始めると
この盗賊の頭と思われる大男が激昂する。
「なに、落ち着きやがっているんだ!」
「ア、アニキ。あの女スゲー、かわいい
ですぜ!」
「おっ、たしかに。くく、売れば高く――」
プチン。となにか怒りを抑えるための糸が
切れるのをタカノリの頭が聞こえた。
「お前達・・・相手をそんな薄汚れた
そんな目で―――」
エリーゼに全身をよこしまな視線と言葉に
タカノリは人生で味わったことない
怒りを覚えた。
「見るんじゃねえぇぇぇーー!!」
タカノリは怒りのまま・・・だと
死者が出るとわずかに冷静さが残っていて
気絶レベルの無詠唱の魔法を放つ放つ放つ。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひいぃぃーーー!?」
「や、やべえぇよアイツ!」
「言葉を使わずになんだよあの魔法は!?」
盗賊達は阿鼻叫喚と混乱を極めた。
エリーゼに向けられたことを激しくそれなり
の冷静に激怒した。
「
「・・・・・・・・」
あらゆる属性の立て続けの魔法に
盗賊は次々と倒れていく。
エリーゼは、激怒したタカノリに
魂を抜かれたようにボーと見続ける。
「ひぃ、ば、バケモノ!!」
「あぁぁぁぁぁ!」
しかし、多数の人数の相手となれば
何人か逃げていく盗賊達。
タカノリは、逃げていく
相手を追撃しなかった。
「はぁ、はぁ・・・ど、どうしたんだ
エリーゼ。ずっと俺の顔を見て?」
「えっ?そ、そんなことありません」
頬を赤らめ視線を逸らすエリーゼに。
「あ、ありません!?敬語なんて
熱でもあるのか?」
「・・・わたし、逃げた盗賊を捕縛に
行ってくる」
「えっ?ひ、一人で大丈夫なのか。
俺も一緒に――――」
「けっこう。じゃあ狩りに行くわ」
早口でいい終えると逃げていた盗賊の
方へと駆ける。
エリーゼは、盗賊が下卑た言動に激昂
してくれたことに言葉を表せないほどに
嬉しく顔が暑く早くここに離れたかった。
それと、倒れた盗賊しかいないので
捕らえ奪った場所を吐かせるのも
一応あったのでそれを口実する形に
なったが頭を冷やせることに少し安堵する
エリーゼは、思い出し顔がカァーとなるのを感じ駆けていく。
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