第11話 レベルアップ

「うおぉぉぉぉ!!」


ここは、森林。

俺は、アーチェリーモンキーに剣を

振りかざしながら声高に突進する。


「「キキィィ!?」」

「・・・よし、今だ!」


アーチェリーモンキー。アーチェリーなのに

洋弓を使わない猿。しかし猿だけあって

俊敏だ。俺の気合いを込めた突進に

左右に避けていくのを――


「ふふふ、見事な誘導だったわタカノリ!

すぅー・・・

炎の砲撃【フレイム・ブレス】!」

(なっ!?エリーゼその魔法は・・・)


中級魔法【フレイム・ブレス】属性は炎

の詠唱で長いきらめく金髪をなびかせながら掌を敵を照準するように向け放つ。

これが本命の攻撃。俺は、相手が回避行動

をさせるために覇気を込めた突進し

その回避からだいたいな距離と時間を

計算し攻撃をする作戦。


「「ギギキャアァァァァ!!?」」


エリーゼが放つ炎の奔流に呑まれる。

そして、呑まれると爆発発生。

そこを誘導させた近くの俺はその爆風の

衝撃で宙へと飛ばされる。


「ギィアアァァァァ!!?」


地面に突っ伏すように落ちた俺は、視線を

上げると、俺が誘導した別の方向では

新しい仲間のホールドが、突撃し

一刀両断・・・素早い斬撃をくらった

猿は倒れ経験値の糧となる。


(・・・ホールドは、荒々しく模範的な

斬撃とステップ。あれが騎士のスタンダードな戦いだろうなぁ・・・)


俺が、敵を倒すにはレベル以外にも

倒すための剣術や、戦闘の駆け引き

一瞬の先を読むなど圧倒的に足りないので

ホールドが攻撃、護り、戦略など

優れていて頼りになる。

エリーゼと楽しそうに話をしていたことに

苛立ったことは、もう霧散している。

今、考えていると嫉妬のような感情を向けて

いたことに謝りたいぐらい。


「だ、大丈夫ですかタカノリさん!

・・・この者に癒しを【ヒール】!」


駆けつけ俺を上から見るは白のツインテール

フェイ。回復魔法で俺の傷を癒していく。


「ああ、ありがとうフェイ。おかげで

痛みはなくなったよ」

「いえ、わたしは、ただ神官としての

役目をまっとうしているだけです」

「そんなことないよ。このぐらいのケガでも本当に心配してくれて俺は嬉しかったよ。

・・・心配してくれると、必要なんだって思えて嬉しくなるから」

「・・・・・タカノリさん」


フェイは、嬉しそうに快晴の下に微笑む姿は

女神の微笑みそのもの。心も癒され立ち上がり俺は宙へと飛ばしてくれた人へ叫ぶ。


「危ないだろエリーゼ!なぁ、どうして

フレイム・ブレスを使ったの?

あれ、呑まれた相手を爆発が起きて

ダメージの追加と周囲も攻撃できるって

こと知らないの?」

「ご・・・ごめんなさい。少し勉強不足でしたわたし」


強気のエリーゼには珍しく頭を下げ

誠意を見せる。しかし、魔法の知識や

そのもたらす結果を知ってこその一人前に

なるのだ。魔法使いの道を行くエリーゼに

俺は、心を鬼にしてさらに叱咤する。


「勉強不足ですめないことある・・・

強化魔法や回復と違って攻撃用の魔法と

いうのは危険で膨大な魔法を敵の数や状況と

味方の邪魔にならないようにしないと

いけないんだ。エリーゼのような

乱暴な人はそこをもっと意識してだな」

「・・・は、はい・・・」


どうやら、アーチェリーモンキーの群れは

全部、ホールドが屠って剣を鞘へ修める。

エリーゼは、俯き悲しそうにするが

厳重に言わねば、改善とするには

調べるように語気を強める。


「魔法使いは、想像力が重要中の

重要の要素なんだから。

もっと努力をしないといけないだろ!」

「・・・・・・・なによ」

「ハァ、何か言った?」

「どうして、あなたにそこまで

怒らなきゃいけないのよ!!」

「逆ギレ!?魔法を巻き込んでその態度なんだ・・・・厚顔無恥のエリーゼ」

「あっーーー!!ま、まなひどいことを、

このクズでナンパする最低な男の子!!」


俺とエリーゼは言い争うが起きて

フェイとホールドが仲介となるのだった。

ルクサント・ルークの西方にある

長く続く森林の道を俺とエリーゼは

隣に歩いていた。


「エリーゼもう少し離れてくれ!」

「あなたの方こそ離れなさいよ!」

「・・・こっちは巻き込まれたのに

呆れるぐらいの厚顔無恥だな」

「何度も謝っているのに、許して

くれない方こそ厚顔無恥じゃないかな」

「「・・・・・はぁー」」


睨みながら戦闘へ並行して歩く。

その後ろ姿へついていくフェイとホールドは

ため息する。

当初の盗賊に盗まれた依頼者の形見を

取り戻すため、進める・・・ではなく

神官のフェイのレベルアップのため

アーチェリーモンキーを倒してレベルアップしてからやる方針になった。


(あー!イライラするから

とりあえずブドウ味のあめ玉!!)


雑嚢から、古代魔法遺産の一つである

トランスレーションを口に入れ嘗める。


「・・・すみません。わたしなんかの

レベルアップにみんな付き合うことに

なってしまって」


沈黙がしばらく続いていた中で

フェイは、申し訳なさそうに言う。


「いや、別に気にしていないよ。

レベルが低いと大変だから」

「そこまで追い詰めなくてもいいのよ

フェイ。仲間なんだからそれぐらい

するわよ」

「エリーゼの言う通り、連携の練習にもなりますし気にするようなことではない」


俺、エリーゼ、ホールドと順でフェイを

励ます。フェイはその応えに嬉しそうに

したが、すぐに憂い顔へと戻る。


(このパーティでフェイが唯一の回復担当だから、狙われる可能性が高いだろうなぁ。

食堂でのレベルの提示にフェイは

19・・・俺とエリーゼはレベル35以上で

ホールドは28だ。相手がただの魔物だったら、ここまで悩まなくてもよかった

だろうけど、なんだって相手は

人だからなぁ。)


盗賊と相手となれば頭を使ってくる。

とくに、相手としては、

このパーティで厄介なのは回復担当。

それに、攻撃が苦手な人が多く

潰すのがセオリー。


(だから、こそのフェイのレベルアップなんだが確かにホールドの言った連携も

少しずつできるようになってきた。

・・・エリーゼは、相変わらずだが)

「・・・な、なによジロジロ見て」

「なーんにもない。どうしてこうも

エリーゼだけ、ケンカばかりかなって?」

「それは、あなたがいつもいつもいつも

女の子ナンパしたり、わたしを

追い込むような発言するからで・・・」


半眼で見ていたのが原因か

本当に傷つくほど発言したのか

または両方か涙目で眉を顰めていた。


「・・・ハァー、なにか勘違いしているけど、追い込むような発言は、

お前がお伽噺おとぎばなしの魔法使いを目指しているんだろう。

だから・・・アドバイスしたんだけど

・・・・・・熱が入って、厳しすぎたかも

しれなかったなぁ。だから、わるい

エリーゼ次は気をつけて優しく教えるから」


なんだか、素直に言うだけで

恥ずかしくなる。いつものエリーゼと接すると言動が分からなくなる。

とくに涙目なんか浮かべていると

自分に強い怒りを覚える。たかだかエリーゼ

のためにどうしてそこまでと不思議なんだが

笑ってほしいと願っている。

これが、恋心と問われたら違うと思う。


「グウゥゥゥ!!」

「・・・こんなときに、レオーか。

エリーゼ、フレイム・ブレスの詠唱!

その後、俺とホールドが突撃して仕留める」

「・・・ええ」


エリーゼの返事はケンカしていた怒りは

なく、落ち着いた返事が返ってきた。

気になり横を向けると目が合ってしまった。

俺は、慌てて逸らす。


(い、いや!なに意識しているの俺?

エリーゼだぞ。いやいや、その前に

魔物がいるのにこんなバカな場合じゃ――)

「その戦術ですが、私とタカノリが

突撃後にエリーゼには無詠唱の

フレイム・ブレスでの援護しませんか?」

「・・・えーと、ホールド。いくら

詠唱なしの大幅な威力がないとはいえ

それでもダメージがあると思うけど?」


ホールドの言葉に俺は、顔に出さなかったが

驚いた。それだと、突撃した俺やホールドも

巻き込まれる。とくに具体的な指示など

ないととても肯定のできない作戦。

その視線を孕んだ向けていたのかホールドは

その疑問を応えようと口を開く。


「連携の練習です。っと!」

「グンガアアァァァ!!」


黒い獅子の魔物レオーの牙がホールドを

噛み砕こうとするが、まったくの皆無。

籠手で防ぎ空いた腕で全力の

ストレートパンチ。悲鳴を上げるレオーは

飛ばされていく。


「少し悠長にしすぎました。

詠唱のフレイム・ブレスなしで突撃し

無詠唱フレイム・ブレスで行きましょう」


剣を抜きホールドは、短く指示して突撃。


「そうだな・・・一理ある。

エリーゼ!俺やホールド気にせず

ガンガンその魔法を使ってくれ」

「う、うん。わかったわ任せて」

「レオー相手だから詠唱なしの回復魔法で

頼むフェイ」

「は、はい!」


俺は剣を抜き遅れてレオーの群れに突撃敢行する。ホールドは、鎧しているから

無詠唱フレイム・ブレスを受けても

無傷だろうけど、こっちは勇者で

騎士のように高い防御がないので

受けたら痛いだろう。本当に俺だけ

損とかしていないかな?と考えるのだった。




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