人喰らい (四)

 人喰らい。名の通り人を喰らうのだろう。しかし今目の前にいる少女はどうやってもそうには見えなかった。

「今疑ったな?こんないたいけな少女が本当に人を喰らうのだろうかと」

 そう言って彼女は微笑んだ。いたいけは余計だと男は思った。

「本当なのか?」

「如何にも」

「じゃあ……」

 頭に浮かんだまま、言葉を出す。

「俺を助けたのは、食べるためか?」

「もちろんだとも」

 まあ、そうなるか。男はそう思った。

 しかし食べらながら死ぬのは勘弁して欲しい。そんなことを当たり前のように考えてると、先に彼女の方が口を開いた。

「ただ、直ぐには食べない。お前さんにはしばらくの間妾の手伝いをしてもらう」

 手伝い?人殺しだろうか?

「と言っても、人を生け捕りにしてこいとかそういう事ではない。まあ所謂雑用をやってもらう」

 男は少しうんざりした。すぐに外に出てまた死のうと思った矢先に、人喰らいに捕まり雑用をやらされる。まさしく死んだ方がましだった。

「ただ途中で逃げ出したりしても無駄だからな。殺さずに爪を剥いでやる」

 いっそ殺してくれることを願ったが、そう甘くはなかった。男はため息をついた。

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