相棒との出会い

周りにある木々の一本一本が輝いていると錯覚するほどの生命力に満ち溢れている。今まで見たことのない果物のようなものが生なっている木もあり誰かに夢だと言われたらすぐに信じてしまうようなそんな場所に読はいる。




「おいくそ神ここは異世界ってことでいいんだよな?」


すこし苛立ちが口調に表れ始め先程までご機嫌をうかがっていた相手をくそ神呼ばわりし始める読。


傍はたから見たら独り言を大きな声で言っている読であったがそんなことには気づかず普通に空気に語り掛けていた。非現実的なことに早くも慣れてきている読であった。




読の前に円が広がり始め円より奥には先程の真っ白な空間があり青年がそこに立っていた。


「そんなー呼び方しないでよー神様傷ついちゃう」




「今更かわい子ぶっても無駄だぞくそ神、これ以上呼び方が悪化しないうちにさっさと質問に答えろ」




「もー罰が当たっても知らないよ!プンプン」


普通であれば青年がかわい子ぶっているというのは痛々しく見ていられないのだが、この青年がするとなぜか様になっていた。ただ読からしたら様になっているかはどうでもよく、これ以上続けたらどうなるかわかっているよなと言わんばかりの目つきを青年に向けていた。




「わかったよちゃんと答えるからそんな怒らないで、それでさっきの質問だけどここは異世界であってるよ。そしてこの森は人間の王が統治し比較的安全なエクリア王国の国内にあるシビルという町の近くだ。」




「比較的安全ということは安全じゃない国があるのか?」




「そうだねというかエクリア王国以外は基本安全じゃないし問題を抱えているよ、読くんが生活するにはってことだけどね。エクリア王国は他種族と仲良く平和が第一がモットー。エクリア王国以外にも人間の王が統治する国が二つほどあるけど行くのはやめといたほうがいいよ」




「それはなんでだ?」




「片方の国は帝国と呼ばれ人間至上主義を掲げている国。ここは戦争も頻繁に行っていて危険。


そしてもう片方は信教国エッセルデバン。こっちは人間至上主義というわけじゃないけど宗教第一な国で国民は全員が国教であるエッセル教を信じてる。信じていないものを異端者と蔑さげすみ迫害してるという感じかな」




「どっちも嫌だ」


苦虫を嚙み潰したような表情から心底嫌というのが伝わってくる。




「ふふふそんな面白い表情しないでよ」




「いや知るかそうゆうめんどくさいのは嫌いなんだよ。宗教なんて特にななんだよ信じてない人は異端者って怖すぎでしょ」




「僕の事も崇あがめ奉たてまつりひれ伏してくれてもかまわないよ」




「頭おかしいのかお前、お前にひれ伏すぐらいならかわいいお姉さんにひれ伏してデートしてもらう方が百倍ましだね」




「ひーどーいーよー僕泣いちゃうー」




「くねくねしながら言ってんじゃねーよ気持ち悪い早く話を進めてくれ」




「まだ話の続きがあるってわかられてたかー」




「お前は俺が真っ白い空間に来てから数分後に会いに来た。お前の性格からして早く来そうなのにもかかわらずだ、そのことから考えるにお前は案外忙しい。そんなお前がこんな無駄話を楽しんでいるということはまだ話すことがある、どうだ間違っているか?」




「まぁ少し無理やりな推理ではあるけどその通りだよ、さすが読書家だね!」




「お世辞は」


「お世辞はいい!あははやっぱりそういうと思ったよ」


言いたいことを当てられて露骨に嫌がる読。その顔は苦虫どころかゲロ虫をかみつぶしたような顔だ。




「ふふそんな顔しないでよツボに入っちゃう、で話を戻すけどこの世界には異世界の定番らしく他種族もいるから気を付けてね」




「チッ、でどんな種族がいるんだ?」




「鍜治を得意とし武器を作るのが大好きなドワーフ、戦闘が大好きで血気盛んな獣人、プライドが高く閉鎖的なエルフ、魔人と悪魔から成る魔族その他諸々って感じだね」




「端折はしょったなまあいい、他に何か注意事項はあるか?」




「うお!?」


いきなり空中に本が現れ読の手に落ちてくる、驚きのあまり声が出てしまったがそれを笑うものはこの場にいなかった。


(なんだこの本安心感を感じるし、ななかビビットくるし不思議な本だな。しかし本をいきなり渡されるとは思わなかったな)




「その本は成長するきっと君の力になるはずだ、だから大切に扱ってあげてほしい。そしてこの本を完成させてほしい。注意事項があるとしたら肌身離さずってとこかな。」




「はい」


雰囲気が突然代わった青年に圧倒され丁寧な返事になる読。それ程までに青年の目線には親が子を思うようなそんな暖かい気持ちが宿っていた。


(こいつにとってたぶん大切なものなんだな)




「ページをめくってみてよ」




言われるがままにページをめくる。そこには剣の文字だけが書かれていた。


(ん?文章が書かれてるわけじゃないのか?それになんだ剣ってこれでどうやって戦うんだ?)


あまりに予想外な展開を目の前に驚く読。少しでも謎を解明するために次のページをめくるがそこには刀、その次のページには毛布と書かれ謎を解明することはできなかった。


(剣に刀はまだわかるが何だよ毛布って)




「こりゃまた面白いのが出たねー思い当たる節はあるかい?」




「毛布は好きだし触れている時間も多かったけど、というか所有者に関係するものがページに書かれる本なのか?」




「最初の5ページはそうだよ、あとページに書かれているものは使用できるからね」




(最初の5ページ?今は三ページ目か)


少し興奮しながらページをめくる読、めくったページには木魔法と集中が書かれていた。


(やっぱり魔法あるかっておい!ここに書いてあるってことは使えるのか俺!胸熱展開だなーやったぜ。でも俺木魔法に関係なんかあったか?まぁ使えるなら別にいいか。次は集中?確かに本を読むときは集中するけど使用できるってどういうことだ、、、そうかスキルかスキルも本に書かれるのか)




(やっと素が出てきたね良かった良かった。本も大切にしてくれそうだし読くんがどんな影響を周りに世界に及ぼすか楽しみだ)




そう考えながら読を見つめる青年の目には先程のふざけた感じは一切なく真剣な表情であった。

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