強い光に堕とす影

あれからドタバタしながらも一先ずは彰の工房までたどり着き一息ついた。

ガレージには、No.20を囲む様に私と可奈美に彰の三人が座っていた。


「…で、いろいろ聞きたいんだけど、なんであなた達まで居るの?」


「第三者委員会だ。と言うか、俺だってお前には聞きたいことあるんだがな。俺言ったよな無茶するなって、さっきチラッとバイク見せてもらったけど絶対無茶したよな!」


「…してないわよ」


私は視線を合わせずにそう答えると


「そうなのか可奈美?」


と、問われた可奈美は愛想笑いをする。


「とりあえず、まずはあの襲撃者の事。自称『ファントム』の事が聞きたいんだけど」


聞いてるのかどうかわからないNo.20に問いかけると答えは返ってきた。


「あれは『ファントム』などと仰々しく名乗ってるがあいつも被検体だ。No.18、能力は見ての通り『影の中に潜る』能力だ」


「『影の中に潜る』能力?実際目にしたけど正直理解に苦しむ能力ね」


「あれは俺が知ってる中でも異質だとは思う。何せ影に隠れてる間は存在感が無い。不意打ち等に向いてる能力ではある。それに奴の性格も結構慎重派ではある。勝てない勝負には乗ってこない。正直こちらから仕掛けるのは難しい」


「…確かにあいつは、私を殺す手段がないと言って引いて行った」


「つまり次に現れる時は、殺す手段があるという事でもある」


殺す手段…心当たりが一つある。しかし、No.18に監視されてる恐れのある今それに近づくわけには行かない。となると、部屋には帰れないか…


「まだ疑問はある。奴はお前の人形だけを破壊してその場を去って行った。奴はお前がそんな姿になってる事を知らないのか?」


「当然だな、俺がこの体になったのは日本に来てからだ。それまで使ってた皮を人形に仕立て上げたから勘違いをしたんだろうな」


「…………で、なんでそんな姿になったの?」


私の質問に一同は一斉に興味を示す。


「そんなもん、カッコいいからに決まってんだろ」


その答えに全員が沈黙する。


「は?」


「カッコいいだろ?昔から憧れてたんだよ。このスピードと一体となるボディに」


こいつは一体何を言ってるんだ?

そんな理由で自分自身をバイクにしたのか?

思わず頭を抱える。


「…あんたがどこかズレてるって事はよくわかった。このまま続けて他の被検体は生きてるの?」


「なんか引っかかる言い方だな…まぁ良いが、俺が知ってるのも結構限られてるぞ」


「構わない知ってるだけ話して」


「まず俺が目を覚ました段階では、既にサイボーグかしてたのがNo.15とNo.18と俺にNo.21とNo.22それからNo.24だ」


「No.15とNo.24は始末した」


「聞いてる。あいつ派手にやったからな、渋谷事件はもう有名だよ。No.18の事はさっきも話したが『影の中に潜る』能力。さっき言い忘れたがあいつの能力は弊害があった」


「弊害?」


「あぁ、影の中にしか居られないんだ。実体をもって存在してる時でも常に『影』の中にいる。移動も『影』伝いじゃなければ出来ない。研究所に居た頃は結局一度もあいつを影から引きずり出すことはできなかったな」


「引きずり出すとどうなるの?」


「わからん。わからんがあいつはだいぶ嫌がっていた。対策としては奴を『影』の外に引きずり出す事になるだろう。しかし、影の中に居る間はあいつは無敵と言っても過言ではないだろう。なんせたった1㎝の影の中にも瞬間的に隠れる。影の中に居る間はこちらからのアプローチが全くできない点も厄介だ」


影の中にしか居られないか…対策は無きしもあらずだが


「次にNo.21とNo.22だが、こいつらは双子だ。見わけもつかないぐらいにそっくりだった。それも関係してるのかあいつらは二人で完結する能力だ」


「二人で完結する能力?」


「あぁ、姉のNo.21は『人の精神に入り込み操作する』能力を持ってる。けど、それは相手が完全に無防備な状態じゃないと成功しない。正面切って現れることは無いだろう。それから妹のNo.22の能力は『催眠術』だ。対象を睡眠状態にしてしまう。ただそれだけだ」


「…話を統合すると、No.22の能力で眠らした相手をNo.21が操るって事?」


「そうだ」


『影の中に潜る』能力の次は『精神操作』に『催眠術』か、どうも私の研究所の被検体とは能力の毛色が違う。


「それで?他の被検体はどうなってるの?」


「わからん、No.14とNo.16にNo.17No.19No.23は今どうなってるかがわからない」


「No.14は私が殺した。1年ほど前にね」


頭を確実に潰した。おそらくはあれで死んでる筈だ。

私のその答えにNo.20はそうかと短くつぶやくだけだった。


「他4人の事も教えなさい。知ってる限りで良い」


「No.16は、『飛行』能力だった。単純に空が飛べる。No.17は、体が液状化してた。恐らくそれが能力だったんだろうが…ある日突然いなくなった」


「居なくなった?」


「あぁ、まるで蒸発したかのように消えてしまったんだ痕跡もなく。続けるぞ、No.19は大男だった。能力は…すまないこいつとNo.23の能力は知らないんだ」


「知らない?そんなことがあり得るの?」


「あぁ、そもそも研究室同士で仲が悪く秘匿性の高い実験形式だった。共同実験を行った連中なら知ってるが顔を合したことがある程度の二人はそこまで知る機会がなかったんだ」


となると、こいつから聞き出せる被検体の情報はこれくらいか…姿に関してはNo.15の例がある。サイボーグ化に伴い容姿を変えるのは容易いだろう。


「次に聞きたいことは、あんたたちの背後に居る組織の事よ。誰が一体何の目的で被検体をサイボーグ化してるの?」


「それに関しては俺も知りたい。俺はただ新しい体をもらっただけなんだ」


「なにそれ?」


「新しい入れ物をもらって、No.7を殺せってだけ言われたんだ。No.13もそう望んでるって言われてな」


そいつらの望みは私の死?

そのために被検体をサイボーグ化させてけしかけてる訳?


「…ドイツの重工企業に関して知ってる?」


「K&C社の事か?」


「K&C社?」


「Karl&Christoph社だ。悪いが俺も名前しか知らないんだ」


会社名は初耳だが、これくらいならイーサンもつかんでるだろう。しかし、K&Cか…一応後で詳しく探りを入れて見るか。


「さて、俺が知ってるのはこれくらいだぞ。他にまだあるか?」


「…いえ、結構よ情報の真偽は追々わかるでしょう。それよりもあんた今後はどうするの?」


「あぁ、ここでしばらく面倒見てもらうよ」


「はぁ!?」


No.20の発言に大声を上げる彰。どうやら事前に話を通してたわけでは無いらしい。


「何勝手に決めてんだよ」


「俺は普通のサイボーグと違って結構頻繁にメンテとか必要なんだ、ここなら十分な整備はしてもらえそうだしな」


「ふざけるな!一体誰がその整備費を出すんだよ!!」


「そんなケチケチすんなよ。用事があれば乗っけてやるからさ!最高最短最速で目的地に届けるぜ!」


そんなやり取りを尻目に可奈美は私に話しかけて来た。


「なんか大変な事になってきちゃったね。大丈夫?」


「えぇ、可奈美もしばらくは私に近づかない方が良いかも」


「どうして…って、私に迷惑が掛からない様にだよね。ごめんね、力になれなくて」


「気にしないで…」


これは私の問題なんだ

これ以上可奈美を巻き込む訳にも行かない。


「そうだ、ナナ」


不意にNo.20が話しかけてくる。


「出会うかどうかわからないが、No.23にだけは注意しろ。あいつは、何と言うか、これは俺の直感なんだが相当ヤバい奴だ。当時も何を考えてるか全くわからず行動も突拍子もない事をする。出会わない事が一番だが現状がしれないのが一番不気味だ」


その言葉に私は頷くとその場を後にした。





それから部屋には戻らず手ごろなホテルを探しそこに宿泊する事にした。

これは私の本拠地をわからない様にする為の手段ではあるが、相手はどこまで私の情報を掴んでいるのだろうか?

『影』は何処にでもあるか…いつでも貴様の傍に居るとは良く言ったもんだ。正直いつどこから来るかもわかっていない。

フロントで預かった鍵を使い部屋に入り電気をつけると、妙な違和感を覚えた。

整然とした部屋、誰も居ない筈の部屋、立ち入った痕跡もない…

なのにその部屋の中央にあるテーブルの上には見覚えのあるものが置いてあったのだ。そう、私の部屋に有る筈の物…

かつてNo.12を殺した時に使った物の残りの一つ


「動揺したな」


何処からともなく声がする。


「それは、これが大事な物だからか?そうだろう、そうだろう…」


その言葉に合わせて注射器は影に飲まれてゆく。その影はすぐそばのティッシュの箱につながっておりさらにその影はテーブルの影につながっていた。

そうか、この違和感は物の配置だ。電気をつけた時テーブルの上からそのまま移動できるように影をつなげられていたんだ。

私はすかさず腰のポーチからフラッシュライトを取り出し注射器のあった傍の影を照らすが、すでに遅かった。

注射器は完全にその姿を消していた。

その瞬間部屋の電気が消える。私はそれに気づいた瞬間後方に全力で飛びのき扉を瞬間移動ですり抜け廊下の明るい所まで下がる。

どうやら状況は最悪らしい。私は電話を取り出し彰に電話を掛ける。

そして相手が電話に出るやいなや


「状況最悪、ごみを捨てて、20に連絡」


それだけを伝えると電話を切る。

すると今度は廊下の電気が端から順番に消えてゆく。それを見て思わず舌打ちをする。迫りくる影とは反対方向に走り出し壁を突き抜けて外へでる。

間髪入れずに走り出しとにかく明るい方へと向かう。日は完全に落ちており街の明かりも次第に暗くなりつつあるこの時間は相手に分がある。ここがいくら眠らない街とは言え、夜なら暗闇の方が多い。

しばらく走り回ってようやく目的の地点に到着すると、そこにあった街灯の下に中身の見えないごみ袋と傍には私のバイクまで置いてあった。キーも刺してある。サービスが過ぎるくらいだ。

ごみ袋の中身を取り出し、バイクに跨ろうとした時だった。


体が動かない


急にピクリとも動かなくなった。いや、少し無理をすれば多少は動けるが、これは一体…


「体が動かないだろ?」


再び声が聞こえる。


「影縫いって奴だ。お前でもこういうのには弱いらしいな。バイクなら逃げ切れるとでも思ったか?直ぐに追いつくぞ」


そう言って私の右肩に背後から手が置かれる。


「お前はここで死ぬんだ。無残に、そして惨めにな」


背後から伸びる左手にはあの注射器が握られている。

その時足元にコンコンッと物が落ちる音が響く。そして私は頑張って手を開いてそこにある物を見せつける。

何とか引き抜くことのできたフラッシュバンの安全ピンを

その瞬間足元で強烈な音と光が瞬間的に炸裂する。光を放った二つのそれは一瞬私たちの周りの影を消し飛ばし、どうやらNo.18も吹き飛ばしたらしい。それと同時に体の自由も戻り、バイクに飛び乗る。その際にチラッとNo.18のいた方を窺うと足元には注射器が転がっており、暗がりの中で蹲っている男の姿があった。その姿は全身真っ黒でまさに影そのものともいえるような姿だった。

不意に目が合う。それを合図に私はバイクを走らせる。

姿は見えないが確実に追ってきている。走行の邪魔をするようにプレッシャーをかけてくる。それに舌打ちをしながらバイクを走らせ続けた。


「どうした?その先は行き止まりだぞ?」


暗闇から響く声。私はバイクを緩やかに減速させる。そう、ここは行き止まりだ。

バイクを降りて少し歩く。


「…私の影がはっきりしてないと影縫いはできないのかしら?」


「だがその必要もあるまい。ここがお前の終着点だ」


再び私の背後に気配を感じる。


「…慎重な奴って聞いてたんだけど、自分が優位だと周りが見えなくなるのかしら?」


そう言うと急に周りが明るくなる。それは四方八方から注がれ私たちの足元からはあっという間に影がなくなる。


「なッ!」


No.18はそう言うと、今度は悲鳴を上げ始める。

もちろんここには誘い込んだのだ。No.20とその仲間たちによるバイクのヘッドライトで照らし出したのだ。

頼んだ時と違ってどうやら上からも照射してるらしい。


「ば、馬鹿な!こんな事が…ッ!」


「馬鹿はあんたよ、その注射器フラッシュバンを落としたあの時奪い返せたのにしなかったのはあんたをここまで連れてきたかったからよ」


「こんな手に引っかかるとは思っても居なかったよNo.18。お前への評価を改めないといけないな」


「No.20!?何故貴様が!裏切ったのか!!」


「悪いが俺は自分本位なんだ。それにお前みたいに陰湿な奴は嫌いでね」


「貴様ぁぁぁぁあぁああああああッ!」


その叫びを最後にNo.18の体は消滅をしその場所には注射器一つだけ残して

それを合図に歓声が沸き起こる。

そんな中私はNo.20の下に行き


「なるほどね情報は正しかった訳だ」


「信用してもらえたかな?最も、こんな結果になるとは知らなかったけどな」


これで少しはこいつの情報も信用して良いと思える。となればわかってる被検体は後二人No.21とNo.22だけか

しかし、聞いた話だとこの二人は正面切って現れるとは考えにくい…

となれば、やはり現地に飛んでK&C社に乗り込むしか無いか


「なんか落ちてるっすよ?」


そんな声が聞こえて来て私はそちらを見るとNo.20の仲間の一人の少年が地面に落ちてる注射器を拾おうとしていた。

そう言えば回収していなかったか…


「それは、私の…」


そこまで言って、ハッとする。しまったと

回収忘れもそうだが、奴の能力はなんて言った?

1㎝の影でもあればそこに隠れると…四方とさらに上方から光を照射しているこの状況…でもその注射器と地面の間はどうだ?

そこに影はあるのではないのか?

ゾッとした。


「今すぐそこから離れろ!」


私は大声を出して注意をしたが、遅かった。

叫んだ瞬間にはもう少年の体は宙に舞い血をまき散らしながら光源の一つにぶつかっていた。そして注射器の影からはあの時見た槍が伸びていた。

散らばった血と少年の体で一部に影ができてしまい。そこから再びNo.18が姿を現す。


「やってくれたな貴様ら…だが運は俺を味方したらしい」


ふらつきながらも注射器を拾い上げてNo.18はこちらを睨みつけてくる


「No.7貴様はここで死ぬ運命なのだ!」


姿が消えたと思ったら次の瞬間にはNo.18は私の目の前に現れ注射器を振りかざしていた。

…その瞬間に私の目の前は真っ暗になった。



--------



残念、氷室ナナの冒険はここで終わってしまった。

なんてそんな事問屋が卸しません!


ゆっくりと目を開けるとそこには身動きが取れず苦悶の表情を浮かべるNo.18の姿があった。

その手にあった今にも突き刺されそうな位置にある注射器をひょいっと簡単に奪い去ると、少し距離を開ける。


「な、なんだ?何が起こった?」


私は奪い取った注射器をマジマジと見つめる。これが私を殺すことになった薬。No.7はどうしてこんなもの後生大事にとってるんだろう?

まぁ、No.7にはNo.7の考えがあるんだろう。うん。

そう結論付けると注射器を腰のポーチにしまう。


「さてと、それじゃああなたは…なんだったっけ?まぁ、誰でも良いか、これからあなたは死ぬんだし」


そう言うとNo.18の体が宙に浮き始める。

すると彼は悲鳴を上げ始める。


「……なんだ、光の中にさらしても苦しむだけじゃない。これじゃあ死なないわね」


まぁ、本当に死なないかはわからないけど。それよりも先に苦しさに耐えきれず狂ってしまいそう…


「そうか、あなたも散々こんな実験されたのね!痛かったよね?辛かったよね?」


彼はただ悲鳴を上げるだけで答えない。


「こんな事されて狂わない筈がないわ!私がそうだったように!でも、同情はしないわ。あなたはNo.7を殺そうとした。それだけで十分殺す理由になるのよ!」


「…ナナ?」


後方でガラクタが話しかけて来たような気がするけど、私は気にしない。


「あぁ、なんて哀れな顔。見てて吐き気がする程醜い顔。でも安心してそんな事気にならなくしてあげるから!」


両手を広げてそう言った後に私は顎に手を当てて考える。


「でも、どうしたものかしら…どうしたら彼をこの陰湿などうしようもない根暗野郎を救う方法は…そうだ!」


手を叩く、そして満面の笑みを浮かべて私は言う。


「あなたを光輝く存在にしてあげる!」


「な、何を言って…」


その瞬間No.18の体に火が付く


「うぁあああああああああああああああっ!何だ!何だこれは!!俺が!燃えてる!!?」


「そう!燃えて燃えて輝くの!眩い程の光を放って太陽の様にあなたは輝くの!喜んで!あなた今ものすごく輝いてるわ!これなら注目の的!気になるあの子も振り向いちゃう!もう根暗なんて言わせない!だってあなた今皆を照らす太陽なんだもの!自信をもって!」


宙に浮くNo.18の体は激しく燃え上がり、眩い程の光を放っている。


「もーえろよもえろーよ、ほのおよもーえーろー…………アハハハハハハハハハハハ!」


おかしくって笑いが止まらないわ。こんなに汚い太陽なんて面白すぎるんだもの!!


「ねぇねぇ!今どんな気持ち?ねぇねぇ!?」


しかし彼は答えない、気が付けば既に悲鳴は上げておらず炎の勢いもだんだんと弱くなってきていた。


「あー…燃え尽きちゃったかぁ…残念。でも、燃え尽きる前が一番輝くっていうからね。彼も本望だったでしょう」


サイコキネシスを解除すると完全に炭化したNo.18だったものは地面に墜落し砕けてしまった。


「ナナ…じゃないな、お前は誰だ?」


背後からそんな風に話しかけられてゆっくりと振り向く。


「私が誰かだなんてどうでも良い事じゃないですか?正直な話私自身ぐちゃぐちゃで曖昧で、自分の存在証明ができてないんですよ。それでも誰だか知りたいって言うなら私はNo.12って答えちゃいますよ」


「No.12だと…?」


驚愕してる様子だけどこのガラクタには顔が無くて表情読めませんねぇ。


「さて、そろそろNo.7に体を返さないといけませんねぇ…そこのガラクタさん、No.7を裏切る事なんてしないでくださいね。私はNo.7の『影』でずっと見てますよぉ。…努々忘れない様に」


私は最後に満面の笑みを浮かべる。




おやすみなさい







--------


微睡みの中にあったような意識が急速に覚醒していくのを感じ勢いよく目を見開き体を起こす。

一体何が起こったんだ?

首筋を確認するが注射器を刺された痕跡は無い。あたりを見回すと何かとても恐ろしいものを見たような表情達と少し離れた所に散らばってる炭化した何か…


「ナナ…なのか?」


No.20は恐る恐ると言った感じに私に問いかけてくる。


「当たり前じゃない、何を言って…」


そこで感づく、以前にもこんな事があった。

No.12がまた私の体を使ったらしい。正直この緊急事態に急に現れるのだけはやめてほしいわ


「…何があったのか誰か説明して頂戴」


「こっちが説明してほしいくらいだよ…ナナ」


立ち上がりあたりを見渡す。

私に向けられている感情それは間違いなく畏怖の念だ。みんな私を恐れてる。

そんな視線の中を気にせず歩き炭化してる何かの傍まで歩み寄りしゃがみ込んで調べてみる

炭化してる内側にあった溶けた金属片は原型をとどめておらず何なのか判別もできない。


「それが、No.18だったものだ」


…やはりか

ここまで炭化してバラバラになってしまうとそう判断するのも難しい。

恐らく、『パイロキネシス』の能力を使ったのであろうが、私の知ってる限りではこれ程の火力が出るとは思えないのだが…能力が強まってるのか?

一通り調べたら次は地面に横たわってる少年の所へ行く。

彼は既に事切れており、叩きつけられた衝撃であちこちが変な方向に曲がっていた。


「この子の名前は?」


「河端雄樹だ」


「…わかった。覚えておくわ」


私の迂闊さで死なせてしまった。これは忘れてはいけない気がする。


「とにかく、これでNo.18の脅威は去ったわけだが…」


「単純に喜んではいられないわね」


今回の一件に私は複雑な気持ちを抱くのだった

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