ショートショート ナナとギャンブル
腕時計のアラームが鳴り響きそこでようやく目が覚める。
まだ眠たい目をこすりながら身を起こし、部屋の様子を窺うとまだ暗く足元に転がってるであろう証明のリモコンを探す。こういう時義手は不便だと実感する。新しくした義手にも感覚は無く見た目は人らしくなったが、その実は相変わらず目隠しだと腕や足がどこにあるのかわからなくなるのだ。
目を凝らしながらなんとかリモコンを見つけて、部屋の電気をつけるとそれに反応して部屋の隅で寝てたであろうダリルも目を覚ます。
「…ごめん、起こしちゃった?」
ダリルは嫌な顔をせず私の下へやって来て傍に座り込む。そのダリルの頭をなでると気持ちよさそうな顔をするので調子に乗ってあっちこっちを撫でまわす。
初めて私の所に来た時はかなり小さかったのに今や立ち上がれば私の身長を超すくらいの大きさになった。正直この部屋で飼い続けるのにも手狭になってきた感じはするが…
私はダリルをひとしきり撫でるといくつかの携帯端末を取り出し、仕事が入ってないかを確認する。
「今回も冷やかし程度か…」
何処で噂を聞きつけたのか、学生とかが冗談半分で誰かを殺してほしいだとか、何々を盗んできてくれとか、そう言った依頼が多い。
これじゃあわざわざディープウェブに申し込み口を設置した意味がないじゃないか。まぁ、私の見通しが甘かったと言うのもあるのだけれど、今時世代は何でもネットで調べれば出てくるものだし不思議でもないか…
まぁ、こいつらはそのうち痛い目を見るだろうけどな。
これでも時々まじめな仕事が入ってくるので侮れないが、いかんせん少ない。
生活の為と、表向きの窓口も設置したのだ。
それは、日常生活困ったことはお任せをと言う売り文句の何でも屋。引っ越し手伝いや遺品整理に害虫駆除、身辺警護にお話相手と本当に様々な仕事がくる。
おかげさまで何とか生活できてるが…もっとこう楽に大儲けできる仕事は無いだろうか?
そう言えば以前仕事で話相手になったおじいちゃんが言ってたっけ?
競馬で万馬券を当てたって
競馬か…
今日は仕事もないみたいだしちょっと行って見ようかな。
そう思い私は洗濯かごからジーンズとTシャツを取りそれに袖を通して外出する事にした。
行き掛けに競馬新聞を買い、本日行われるレースの情報を頭に叩き込む。
競馬場に到着したら参加馬のコンディションも確認して券売機に向かい馬券を買う。
そして観客席に座りレース開始まで待つ。
…あとはただ待つ
レースが始まり馬たちのレースが過熱すると観客の熱も熱くなり野次を飛ばしたり、暴言を吐いたりする人も現れる。
私はその中でただただ黙って座りその様子を眺めている。
熱いデッドヒートが繰り広げられゴール直前の抜くか抜かれるかの手に汗握るような攻防もあった。が、私は淡々と座ってそれを眺めていた。
結果
一着は当てたものの二着を外した為この馬券はハズレ馬券になった訳で…
コンディションまで考慮して予想したもののそれでも外すとは…何か他にも要因があるのだろうか?
そう思い次のレースは思いつく限りの可能性を考慮して馬券を買い再び席に座る。
すると今度は本命が落馬すると言うアクシデントに見舞わわれ誰も予想していなかったであろう馬が勝利した。
流石にこれはどうしようもない。未来予知の能力を欲しくなるが、残念ながら私の知ってる被検体の能力の中にはない。
せめてサイコキネシスが使えれば、狙った騎手を落馬させられそうだけど…使えないし、騎手が怪我をするかもしれないし、あまり現実的じゃない。
仕方がないので私は競馬場を後にすることにした。
と、以上の経験をおじいさんに話してみたら今度は、パチンコ進められた。
なので私はその足でパチンコ屋に向かった。
店内に入るとすさまじい音量のBGMやたばこの匂いが私の敏感な感覚神経を刺激する。何とか許容範囲ではあるが長居はしたくない。
なので、手ごろな空いてる台に腰を掛けさっそうパチンコを打ち始める。
玉を流し込み右手のハンドルで強弱を調整して遊ぶものらしいが…
これが思った様に行かない。
微調整を繰り返しスロットを回すための穴にパチンコ玉を入れるのが主な目的なのだが…
これがなかなか難しい。
と言うよりも露骨に邪魔してるピンがいくつかあるのでなかなか入らない。入ってもスロットは揃わず空振りばかり…
ハァとため息をこぼしおもむろにパチンコ玉を眺める。
するとこれは金属で出来てる事に今更ながら気が付く。
だから私は思いついた。こっそり発電能力を使って電磁力で玉を誘導すればよいのでは?
そう思い実践してみる事にした。そしたら思惑通りパチンコ玉は誘導されたが…
その時警報が鳴り響きホールスタッフの人間が駆け寄って来て
「ちょっと事務所まで良いですか?」
そう言われて事務所に連れていかれた。そしてめちゃくちゃ怒られた。
とりあえずもうギャンブルはしないと言うことだけは心に決めました。
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