interlude-2
――もう、ダメだ…
男は誰にともなく、呟いた。
昨日の夜、男の仲間だった一人と連絡が取れなくなった。
もちろん携帯電話ではない。そんな足がつくもの、使えるわけがない。
男は持ち前の慎重さで、前もって準備しておいたメールアドレスを使い、バラバラに別れた仲間達と連絡を取り合っていた。
最初は一週間前。まず仲間の一人が消息不明になった。
嫌気が差して、連絡を取ることを放棄したのなら、それでいい。
どこかで勝手にくたばってるのなら、それでもいい。
――だが、もしヤツらに捕まっていたら…?
その疑念は、日に日に彼の中で大きく膨らんだ。
そして、昨日。
男が最も頼っていた、一番付き合いの長い仲間と連絡が取れなくなった。
じわじわと見えない何かが、男の体の周りを這っている…そんな妄想を、男は振り払うことが出来ない。ヌメヌメとした見えない何かの感触を、男ははっきり感じている。
今にも、首筋の後ろからその何かが、気味の悪い粘膜で男の顔をペロリと舐め上げてきそうな、そんな悪寒にブルリと背中を震わせる。
――大丈夫だ……。
男は、言い聞かせるようにそう呟く。
大丈夫、万が一アイツらが全員捕まっても、俺の居場所はバレねえはずだ…。
男はそう呟きながら、気を落ち着かせる為、白い錠剤を口の中に放り込んだ。
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