搾取
最後の一文を読んだアニーが血相を変えてバレットを取り、猛然と部屋を出ようとしてジョシュに止められる。
「邪魔しないで!」
「邪魔はしない、だが焦るな。皆で静かにぶっこむ」
冷静に力強く、有無を言わせない意思で焦るアニーを窘めると振り向いてアンナに依頼する。
「アンナ、そのノートパソコンと資料持って所長の所に走って欲しい。それだけでもかなりのお宝になるはずだ」
「ペーペーが調子こかない! 最初からそのつもりだよ」
いきなり毒舌で言い返されるとニコリとジョシュは笑って
「ああ、やっぱりね、それならおまけにアニーとジュリアを補佐に付ける。今から奪還するマーティとソフィア連れてここを脱出してくれ」
「
これも予想していたのか2つ返事で答えてロッカーに有ったブリーフケースに資料とノートパソコンを入れ装備ベルトの間に挟むようにして背負う。
「では、皆さん、銃を構えてくれ」
そう言ってジョシュは先ほどからこちらに近づく1つの足音に気が付いており、ドアにすっと近寄り、腰のホルダーからナイフを取り出す。一同、一瞬で悟り各々拳銃を抜く
ドアが開けられ、髪型は黒毛の天然パーマでまともにシャワーさえ浴びて無さげな臭いと不精髭の丸メガネの中年男が顔を出すと同時に右手で口を塞ぎ、左手でナイフが見えるように喉元に突きつける。
「貴様、ゲオルグ・ランバートか?」
機転を利かせあえて挑発的な名前で尋ね、口を塞いだ手を外すと男は目を見開きながら声を張り上げる。
「私を誰だと思っている! ここの所長のジェイう……」
「あ、やっぱり? 知ってたからいいや、それ以上言わなくて……ところで研究室で何してた? この銀のナイフで研究できないほど目ン玉や指、耳損壊させて救世主アンソニー様の研究頓挫させたろかい?」
再度口を塞ぎ、あえて感情を乗せずに、だが強固な意志を持って脅しを掛けるとジェイクの顔が分かり易い程真っ青になる。そして静かにゆっくり喋れと伝えて口から手を外す
「貴様ら、どこの……がッ!」
その途端ジョシュはナイフの柄でジェイクの額を鈍い音を立ててド突くと詰問する
「俺の問いに答えろ、研究室には誰がいる?」
痛みに耐えかね苦痛に顔を歪めながら問いに答える。
「数名のスタッフに実験素材……」
「素材? 人間か? 男か女か?」
テンポ良く詰問しながら胸を圧迫していく
「き、吸血鬼の少女と人間の少年だ」
「名前は?」
「ぐ……マ、マーティンとソフィア」
その途端にアニーの表情が変わるが、ジェイクに気付かせないようにジョシュはさらに壁に押し付けて圧迫し締め上げる。
「そこに連れてけ」
「それは出来ん」
「お前のデータ、丸ごと盗ませてもらった。後はお前を始末すればアンソニーは真祖に成れん! じゃな」
「ま、待て、い、命だけは助けてくれ!」
喉元のナイフを引こうとした時、ジェイクは命乞いを始めた。データを盗まれても自分が要れば事は成ると思っていると踏んだジョシュは脅しながら情報を引き出す。
「ん? 俺らにメリットは? 無いよな?」
興味なさげに尋ねるとジェイクは慌てて喋り出す。
「この奥の採血エリアに人間牧場や若が集めたクレメンタイン用の女達がいる。そいつらをくれてやろう」
「要らね。じゃ、死ね」
即答で断わりナイフを動かそうとして次の言葉を引き出す。
「待て待て! じゃ、車をやろう。駐車場に或る車は全部、若の愛車で入口横にあるキーボックスの中に全車種入れてある。皆、最高級車だ」
猫撫で声で条件を提示するが足代わりにしかならないので呆れた声で終わりを告げる
「馬鹿か? もういいぜ」
「う……仕方ない、子供達はここから向かい2つ目のドアの研究エリアだ……」
諦めたようにジェイクが首を折り白状するが、ジョシュは驚愕の言葉をぶつける
「もういいと言わなかったか? それじゃ……」
「えっ?! 白状したじゃないかッ?!」
話が違うと言わんばかりに目を剥いて抗議するジェイクを見据えてジョシュは答える。
「お前の命でこの程度のメリットじゃ、稼ぎが少な過ぎんだよ! アンソニーの執務室や私室はどこだ?! アンソニーの命は俺らは要らねぇ! お宝寄越しな!」
わざと下衆な恫喝で締め上げるとジェイクは慌てて答えだす。
「採血エリアに若専用のエレベーターがある。扉の暗証番号は1234、それで4階の執務室に行けるはずだ。しかし若の私室は私にもわからないんだ」
「オーケェ、
ジェイクの頸動脈を圧迫し絞め落とし、ジョシュはザックの中の
そして活を入れて起こす。
「
「命を取らない代わりに
襟首を掴むとジョシュは怒りで唸り吼えるジェイクを立たせ盾のように前にして無理やり歩かせ、シュテフィンにドアを開けさせて廊下に出る。
アニーはバレットを構え、シュテフィンやジュリアも拳銃を構えてジェイクシールドを先頭に研究エリアに入っていく
そこには研究スタッフが忙しそうに採血の準備に入っていた。中央には拘束具を装備した台が置かれ横には採血用のポンプマシンが置かれていた。そのもっと奥には3つカプセル型のベッドが置いてあり色とりどりのランプにバイタルサイン表示モニターがそこに人がいる事を示していた。
そこに大きな声で少女が厳つい体格の護衛兵士に羽交い絞めされ連行されながら必死に暴れていた。
「「放せっ! 放しなさいよッ! コラァ! マーティに触らないでっ!」」
その傍ら、
橋で拘束されて此処に連れて来られて以来、まだ適正年令でない少年に対して一日おきに200
「毎度毎度五月蠅い! まだ1
羽交い絞めにする兵士はソフィアに怒鳴りながらスタッフを急かして採血を強行させる。
人間の限界採血量は全血採血で200mlなら最低8週間程、休息期間を設けなければばらない。だが一日置きの200ml採血はマーティに多大な負荷を与えていた。
「く、……ソフィィにら、乱暴すんな、このくそばかやろう……」
力なく悪態を吐いて起き上がろうとするが、拘束されていて動けない
「おい! そこの! ナイフ持ってこい!」
手が空いているスタッフにナイフを持って来さすと羽交い絞めを解く、そして一瞬にしてソフィアを抱きかかえるようにして渡されたロクに手入れもしていない汚いナイフをその顔に突きつける。
「毎度、手を焼かせんな! 彼女にナイフ突き立てるぞ! 大人しくせんか!」
拉致された当日にお約束通り研究エリアでひと暴れしたが、ソフィアを人質に取られ陥落したのを切っ掛けに普段は別室に監禁し、この時だけは会わせて脅して大人しくさせるといった手段を取っている。
拘束ベルトを外され顔には口惜しさと情けなさが同居した顔でノロノロとマーティが採血台に載るとあきらめの溜息と共に宙をぼんやりと見る。
(もうダメだ。力が出ない……疲れた。ねぇさん……ごめん)
マーティの眼はすでに力を失い、生きる意志も今、失せようとしていた。そこに怒声が雷光の如く一喝し、その場の全員の動きを止める!
「「はい! 全員、動くなッ!」」
スタッフが採血に動き出す直前にジョシュが叫び、その後ろからアニー達が飛び出してその場の全員に銃を突きつけた!
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