発見
来た道を引き返したジョシュ達は集積地の学校を偵察するべくその周辺の森に分け入り周囲を観察する。無数のトラックが待機する中、大勢の作業員達がフォークリフトと人力で倉庫代わりの体育館や教室に運び込まれて行くのを双眼鏡で観察をしながらジョシュが思ったことをつぶやく
「結構な量だな……その割に警備兵士が少ない」
「そりゃ、大半が積込作業に狩り出されてる……よく見りゃ物資の扱いが雑だ」
ホセの指摘でよく見てみると確かに小麦の袋を無造作に投げ置いたり、缶詰のケースを乗せたカートを乱暴に操作するガタイのいい男達が多数いた。
「ホントだ……」
「アンソニーが直接呼び寄せた兵士だと思うが……質が悪すぎる……だが好都合と言える」
「
ホセの推論を解説するとジョシュは潜入用の戦略を練り出しにかかるが、それを制止される。
「まぁ待て、この部隊がこのまま警備なら良いが新鋭部隊に変わったら即アウトだぞ。まだ情報を集めるんだ」
ホセはソーダをあおるとジョシュを伴い、森を抜け車に乗り込む
「さて、今度はチィと厄介だ、ジョシュ」
ホセはボヤくとスマホをジョシュに見せメッセージでやり取りを始めた
”例の本拠にはうちのアンナやゼラルゼス達が苦戦した
” へぇ、さっきのマークが言ってた男かい? その力ってどの程度の距離まで有効? ”
ジョシュは先ほどの会話に上った男とわかると能力について尋ねた。能力さえある程度分かればそうそう後れを取ることはないからだ。
”
” 了解 ”
”うちのエリックと
”ひぇぇ……かなりヤバイな ”
(
ジョシュはスマホでチマチマ入力しながら内心、冷や汗を流しつつ愚痴をこぼす。
「じゃ、行くぞ」
「うす」
エンジンを掛けるとゆっくり発進して、一路、邸宅があると言われるウィスロップ通りと走らせる。
そのウィスロップ通りはぺコニック河岸沿いにあり、道路を挟んで左にペコニック河、右側には居並ぶ豪邸群があったが、その建物の間隔が徐々に広がりを見せ最終的には鬱蒼と生い茂る森へを変わっていった。
その森が徐々に芝生の丘になり、その丘を抜けるとそこには例の城のような一風変わった建物があった。
1階より2階が大きくなっており、1階の中央には不釣り合いに大きい玄関……長方形の建物の四方に側防塔と均等な位置の中央2つにタレット……壁から突き出た小さな塔が建てられ、所々に隠しカメラや防衛用銃火器が設置されてるような狭間が作られていた。
(ふーん、玩具な家と見せかけてゲートハウス様式か)
ホセは運転しながらその奇妙な建物を一種の城と看破する。
一見、綺麗に手入れされた人口の山を作ったように見せているが、進攻された際に水際で防衛する為の防衛用の山……モット、その手前の家々はさしずめ防衛用の柵……ベイリーに相当し、西洋の城にありがちな野戦や城塞前の防衛様式であるモット&ベイリー様式に相当する。
建物も13世紀に発明された
当然中身は現代の最高級の建築技術に機材や素材で堅牢性や居住性を
(真正面からぶっ叩いても埒あかんだろうな……)
ジョシュもその異質さと秘められた性能の高さを感じ、そして窓からこちらを覗く視線を感じる。
(猟犬が気が付いたらしい……)
建物の前を通り過ぎた刹那、一瞬だけ殺気に近い
(……手負いか?……そういやスタンがタイマン張って腹に弾丸ぶち込んだと聞いたが……)
ホセはその圧力に悲壮感を感じて潜入の好機と判断したが、相手戦力の全貌が不明なのと宿舎に居なかったマッキンタイア達の所在が分からないのが気になり、ちょっかい掛けたい悪戯心を抑えた。
素通りしてそのままフェリー乗り場に向かう。邸宅より後方を常に警戒していたジョシュはスマホでやり取りをする。
” 後ろは追跡はないよ 引き続き警戒は厳にするけどね ”
” うむ、アジトまで厳に頼む ”
ホセも気を付けてはいたがあの殺気交じりの緊張感は追って来なかった、来れないのだ。
(やはり手負いか……ならば好都合だ)
度重なる外傷に過度の激務がキリチェックの回復力を蝕んでいたのだろう。アンソニーの護衛やアンナ達の追跡、対リカルド戦の閃光音響弾で感覚器を痛めつけられて視力が未だ戻らないのにスタンに腹部を撃たれてしまい処女の血を補給しても身体が追いついてこないのだ。
通常の吸血鬼達なら致死的な状況でも血を摂取すれば回復する……だが、それが短期間に度重なれば?
血液に含まれる栄養やホルモンで一時的に身体、代謝機能をブーストさせてもベースになる要素、タンパク質、炭水化物、ミネラル等は追加で摂取しなければ枯渇して自己分解を始める。治りきらなければ苦痛や症状の悪化が見込まれて最悪、死亡することになる……原種や真祖は
フェリーが到着しゆっくり乗り込む……エンジンブレーキを掛け車体を固定し、ホセは外へ出て空気を吸う……
そして気が付いた。……薄暗い森の奥からジィっと自分を見つめる怒りに燃えるギラついた野獣の目を……
何時もなら喧嘩上等で喜んでメンチを切り出すホセが、この後の任務を成功させる為そ知らぬふりをする。
(挑発してぇ……あのオーウェンお墨付きの腕前を堪能してボコりてぇ……けど、やっちゃうとアンソニーに警戒される……我慢だ)
戦闘狂の一面を刺激され身悶えさえ我慢しする。バレたら警戒され戦力が増加が免れないが、それを見てジョシュが気を使って尋ねる。
「おっさん、大丈夫かい? 汗かいて顔色悪いぜ? 」
「ああ、だっ、大丈夫だ。あんちゃん、ワリいが運転代わってくれ」
「ああ、いいとも」
荒ぶる闘争本能を鎮めるべくジョシュに交代を頼んだものの、運転席側に入った瞬間、ジョシュにも背筋に戦慄が入る。
「!」
ドクンッ! と動悸が打つと同時に攻撃的な視線を感じて視線の元を追う!
「感じてしまったか……まぁ、此処までの攻撃的な意思ではそうなるわな……さて糞餓鬼どう始末してくれようか……」
ホセがバレちまったら仕方ない風に言うと満面の笑みで茂みに向けて見事な程の殺意を込めた視線を合わせる。
ジョシュの戦慄による恐怖から起きた動悸の音はキリチェックの耳に確実に聞き取っただろう。それはキリチェックの
その実力者とお互いに目線が合う……逃げ場は前のみに或る……戦う事だけだ。その段階で脳内では森やフェリーを飛び出して路上で死闘を繰り広げていた。
「おっちゃん、もうフェリーが接岸するよ?」
仮想戦闘にて自分に有利には設定しない。オーウェンに匹敵する猛者とキリチェックを断定し戦闘を行う……短い間に何度倒し、倒されただろう……ホセの背後は汗びっしょりだった。
「お、おう……野郎はつええぞ? ジョシュ、お前ら2人がかりでも危ないかもな」
「ああ、あの視線はマジでヤバイ……けどやる時はやらなきゃな」
そう言うと道路に佇む
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