到着
NYに向かう車内で予定通りにハーレム川の橋を落としてマンハッタン島からのZの侵入を防ぎ、音響兵器による誘導を開始したとの自身に付けられた秘書官の報告をうけグエン・ゴー・フェン志祭は頷くと次の手を打っていく
「周辺の発電施設に赴き発電させて必要な地点にのみ送電させろ。ただしニュージャージーエリアは水路周辺のモノは今は動かすな。最初に狙われるからな」
ライフラインを復旧させ継続的な戦闘に必要なものを整えておく。相手は既に発電施設はフル稼働させている事は煌々と照らされる夜景を見れば一目瞭然だった
グエンは部下に命じて自分の担当区域であるニュージャージーにあるリンデン空港に足を向けた
もともとヘリやセスナ機の専用空港だったのでそれなりの施設があるのを想定しており、特に石油精製所が隣にあるのであわよくばガソリンが手に入るかもと期待していた
自分直属の一個師団で現場に着くとヘリ等はほとんど残されておらず、ガソリンもほとんど無かったが整備場や管制塔が残っており、そこを野戦司令部として活用していくことに決めた。
「ここに本部を設営する。各班は準備に取り掛かれ、デイビスとマイヨールの部隊は燃料タンクにトラップの調査と敷設に行け」
予め打ち合わせした各部隊が一斉に動き出す。
消音器を付けたアサルトライフルを装備した前衛が滑走路に現れるZを排除して周回し、整備場の中を点検し、車両を入れてアンテナを出して通信網の立ち上げを行う中、グエンは部下を連れて管制塔のある建物に入り、Zを駆逐しながら進む
事務機器、管制施設がまだ使えることを確認した部下達が次々に報告の連絡を入れる
管制塔に上り周囲を見回すと手持ちの部下だけでは手が回らん場所がいくつもあることに気が付く
「バリー、ロイの班はバリケード敷設したら近隣のホームセンターと
通信を入れ部隊を向かわす。少しでも資材や部品、機材を入手すれば砦の構築が進み、修理途中で放置されたヘリや航空機も修理して使えればかなりの戦力の増加が見込めるはずだ
「ミッチェル、ヘリや航空機はどうだ?」
シカゴやセントルイスの航空機メーカーや空港から大金と家族の命の保証付きで連れてきた大勢の技師達を纏める技師長に問い合わせる
「あー、ヘリ数機とセスナ1機は3日ありゃなんとかな……つーか、大将、マグアイヤ空軍基地行ってA-10と
「良いアイディアだがZが面倒だ……ミッチェル、他にチヌークがある場所知らんか?」
しばらくの沈黙の後に閃いたように呟いた
「州軍……そうだ! ニューヨークやニュージャージーの州軍基地を廻ると良い、大概、州空軍基地も併設してあるから……あと1時間くれや、ここの必要な部品集めがてら一緒に回るからな」
アメリカには海外へ派兵される米軍以外で国内の治安維持や災害救援に派兵される州兵や護衛兵が存在する。その戦力は国内の州なのに下手な中堅国以上の戦力がある代物であった
「ああ、頼む、砲撃旅団から廻ろう……兵器がそのまま使えれば分捕って使う」
グエンは作戦開始前より、急造での砲撃大隊と航空部隊の新設を訴えたが人員の少なさが仇となり、砲撃は初戦のみで航空部隊は却下されたがまだあきらめてはいなかった
そこに残念な報告と砲撃の轟音が飛び込んできた
「志教様! ニュージャージー側の砲撃部隊がたった今攻撃を受けております!」
最前線と通信の細かいチェック中の通信兵が報告する
「敵の詳細は?! 砲撃隊は敵陣に砲撃! 護衛部隊は何をやっている!?」
驚いたグエンは双眼鏡を持ちNY側を見ながら指示を出すと建物の屋上から砲撃が見える
吸血鬼陣営は川沿いや水路沿いの建物の上に榴弾砲を配備しており、こちら側の展開が終わった所で砲撃を開始したのだった
高さもあるので制空権を取られた形となり、無数の榴弾が建物に降り注ぎ窓を砕いて美しいガラスの雨となり路地で右往左往する教会兵の上に降り注ぎその身を切り裂く
「至急 前線部隊は後退しろ……チッ、してやられたか……」
通信兵に通達して事務机に腰かけ、グエンは歯噛みすると別の通信兵から ヴォイスラヴからの通信が入ったと伝えられる
(このタイミングでか……めんどくさいな)
内心愚痴をこぼしながらインカムを付けて通話する
「志教か? 今、何処にいる?」
「予定通り、リンデンで準備中ですが?」
「そこでヘリや航空部隊を急造してくれ、必要な人員や情報、機材は回す!」
先程の制空権を取られたのが効いたのか航空部隊の許可を出してきた
「了解です。では展開中の部隊に州軍基地に侵入してヘリや航空機があれば教えていただきたい」
「分かったやらせよう、他には?」
「航空機整備、製作のスキルがある人間が欲しいですね」
「探させよう」
「とりあえずは以上です。陛下はいずこに? 」
「あはは、予定通りの所さ」
そう笑いながら答えたヴォイスラヴは移動中らしくエンジン音が微かに聞こえた
「畏まりました。くれぐれもお気をつけて」
そう結ぶとお互い通信が切れる
当初の予定ならニューアーク空港だったが、独断で変えたのだろうと推測した
そして被害報告が上げられたが榴弾砲は全部大破したものの兵士の負傷はどれも軽微であり、機材さえあれば復旧は容易いと判断した
しかし、敵の戦力の内容が分からんとなれば手の打ちようがない。
幾ら戦闘ヘリで航空部隊を構成しても吸血鬼陣営が海兵隊基地から奪ってきたハリアーやF-22Bを出してこられたら目も当てられない結果になる
「何とかして戦力の配備状況を把握せねば……」
どうにかして監視衛星、若しくはスパイを送り込まねばなるまいと思い、教会内の各方面に働きかけを始めだした。
手持ちのタブレット端末のアドレス帳にはあのニック・ラヴェル志祭の名前もあった
そこに早速、ヴォイスラヴからの指令を受け取った部隊からの報告が来る
「フェン志祭、はじめまして第23中隊の隊長のクレイグです。現在ニューヨークのグリフィス基地に来ておりますが目ぼしい兵器、武器等は既に持ち出されております」
「こちら、第45騎兵連隊、デリンジャーです。ペンシルバニアの基地ですが武器はありますがZに使用する為融通出来ません! 援軍ならウェルカムですがね」
次々と残念な報告が寄せられるが、此処から離れたオハイオ州からは流石に良い返事が返ってきた
「第8空挺団のジョナサンです。チヌーク2機にF16ファイティングファルコン2機発見しました」
「よし!今から整備士と操縦士を送る、安全な場所で待機してくれ」
嬉々として返事をするとグエンはミッチェルをはじめとした中隊を組織させ早速オハイオまで行かせることにした
そしてはっとした……確かニューヨークの州軍基地はロングアイランドに複数、それも陸海空全部揃っていることに気が付いてしまった。
「マグワイヤ空軍基地に調査隊を送ることを本気で考える羽目になるとは……」
後退した部隊に水路や上空への警戒を怠るなと指示してグエンは自身の腹心たちを協議の為呼ぶことにした
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