決断
「やっとそこにたどり着いたか……俺もその結果にたどり着いた。まぁ、俺の場合は知り合いの研究者から相談されて知ったんだけどな」
そう言って胸を張るホセは原種でありつつ自身の子孫、眷属を持つことを拒否する代わりに次世代の若者に自身の技術や信条、心意気を指導し育成する
何人もの若き人間や吸血鬼が幾度の死線や修羅場を乗り越え、甘美な世界や楽園を垣間見てきた不死身の男の薫陶を得て人の歴史を編んでいった
今回はクレメンタインの施設の研究員が自身の最下級の出身の恋人が実験体に志願した為に悩みを持ち込んできた、その相談ごとに首を突っ込むうちにバートリーが絡む大計画を知ることになる
「わが友よ、では尋ねる。お前はどちら側についてる?
対峙するかの如くゲオルグは真っすぐホセを見つめる。手にはいつのまにか愛刀が収まっていた
「おいおい穏やかじゃねぇな。俺はアンソニー側ではないよ。俺はJP隊の人間だぜ?」
「信用していいか?」
「俺の業績に懸けてな」
そこまで言うとゲオルグは剣を置いてため息を吐く
「まさかがあるのがお前だ。やる気ならいつでも最初に切り結んでやるぞ」
半分安堵、半分本気の恫喝をしながらゲオルグが椅子にドカッと座る
「では、教授、今後はどうする?」
ホセが挑発するように問いただすとゲオルグは怒気を孕んだ口調で指示を出す
「言わずと知れた事よッ! JP隊に正式に依頼だ。うちの外郭部隊としてジョシュ達の侵入を援護しつつアンソニー誅殺、強皇抹殺後に帰還すること、必要なら書類で出すか?」
「ぜひ、それと必要経費も回して宜しいか?」
表情が幾分明るくなったJPが問い合わせると流石に渋い顔で
「諸経費10万ドルまでな、それ以上はお前らの人件費で対応するぞ」
「では教授、俺らは?」
ジョシュ達がどさくさついでに尋ねる
「お前らは先鋒であり大事な任務がある。まずJP隊と共に進入しアニーとジュリアと合流、本命であるマーティとソフィアを無事奪還して、アンソニーの計画の全貌が分かるもの、その真の目的を知らべて必ず帰還しろ」
「「りょーかーい」」
ジョシュとシュテフィンが緩く返事をする。この数週間、1日19時間の特訓で伊達にボコられ続けたわけでない事は訓練に携わった全員が知っていた
「ランバート所長、我々は?」
エリクソンが手を上げて尋ねるとゲオルグが一喝する
「3重スパイ続行、
「エエッ! 直系の眷族とやりあうんですよね? あのジェルマンCEOはそれではビビって動きませんよ。モロ犯罪行為ならいざ知らず……」
ジェルマンをよく知るエリクソンがダメ出しをすると透かさず次の手を打って来た
「愚図ったら最終手段でマーティとソフィアの未成年者拉致監禁で逮捕すると申請しろ」
「もぅ……了解です」
すごすごと引っ込むエリクソンと交代するかのようにマルティネスが手を上げる
「教授! お願いがあります。私をぜひNYへ行かせてください!」
「は? なんで?」
いきなりの懇願に冷ややかな視線でゲオルグが答える
「まず、潜入組の皆さん、このホセがいくら人たらしでも支援者や協力者への繋ぎでいきなり行っても捗りません。本来ならうちの
そこで粗方察したゲオルグが手で合図して止めるとジョシュの方を向いて
「彼にピットブルの運転手やらせてくれ、この後、準備ができるまでJP隊で慣熟運転させてればいい」
「ありがとうございますっ!」
勢いよく頭を下げるマルティネスだったが、ホセは渋い顔で反対する
「おい、ちょい待てや。ただでさえ素人や新兵を抱え込んでんのにまた素人かよ」
「潜入は別働隊にして3人で行えばいい……死ぬ気で訓練させればどうとでもなるだろ?」
めんどくせぇな感アリアリの顔でゲオルグが返答するとチャラいイメージが崩れそうなほど熱っぽい声が飛・・・…
「はいっ! 死ぬ気でやらせてもらいますっ! 何卒! 」
チャラいキャラをかなぐり捨ててマルティネスは放置されまいと必死に懇願する……その姿に何かを感じたシュテフィンが口を開く
「オッチャン、そちらのエディ君の交戦時の運転技術叩きこむってのは? ほんで保安部の皆さんに暇潰しがてらに追い掛け回して貰う……」
「おいおい、うちのエディは便利屋じゃ……しゃーねぇ、エディ! しばらく付き合ってやれ」
「
マルティネスとの再会でアンナの悩まし気な困惑顔を見るのも一興と思い、ホセは切り替えてエディに声掛けする
「よし、時間もないが3日間で準備と装備の仕上げを入念に頼む。 暇そうな研究スタッフは全員動員してモニター室で両陣営の戦力武装等の情報分析に当たれ……全員動いてくれ!」
立ち上がり号令を掛けるゲオルグにその場にいた全員が気合いを入れながら立ち上がるとエメから肥が掛かる
「ジョシュ、シュテフィン、ちょっとこっち来て、装備のデータ獲りやるわよ」
「え? ここで? マジっすか?」
既に最終調整に入ると言ってたはずが、ここに来て……とジョシュ達が戸惑うとエメが説明をする
「今までの調整データは瓦礫や森林、川岸のデータはあるけど工場エリアはないの……より汎用性を見たいからお願いね」
「「了解」」
二人はヤレヤレといった感じでエメに連れられ外のトラックに向かう
其処には技師と整備員が忙しそうに設置された台にはゴワゴワした布や白い筒状やカーブの掛かった板がワイヤーやコードに繋がれて置かれていた
「エメ、何か前よりごつくなってない?」
「一応最終調整の筈を2段階ぐらい引き下げたからね。ともかく……0.5秒で装着して」
「俺らはどこぞのメタルヒーローかよ」
ツッコミしながらジョシュは作業員に手伝ってもらい装備を装着しだす。その作業を見ながらエメが解説する
「従来のボディアーマーは防弾プレートをケプラー等のソフトアーマーに仕込むような形で運用されるのは知ってる筈、そこで今までのデータや改良のお陰で下にソフトアーマー兼の筋力防弾の強化服を着こんで外部装甲として独自素材配合のトラウマアーマー……セラミックプレートを使っているの、おかげでShAkやバレットを至近距離でぶっ放しても1連射ぐらいなら
「そりゃ凄いが……中身が特に大事なんですけども……」
「プレートは米軍規格のXSAIP級のモノを強度と軽さの両立を改良してある。内部衝撃は特殊衝撃吸収素材を申し訳程度付けてある」
「申し訳かよッ!」
「あら? これが優れモノなのよん」
特殊な密度の高粘度の素材は防弾性や衝撃吸収力が高く、ごく普通のカスタードクリームでもある程度の厚さがあればライフル弾が止まる程だった
「うちの素材は衝撃特化してるので
「「ガチでッ!?」」
ジョシュ達は修行の時にアーマーにボクシンググローブを付けてでもゲロ吐いたバーニィ得意の
「まぁ、死なないのでおっけーよ。そして胆の筋力強化ポイントも作動してるしね」
「大丈夫かなぁ……」
最悪、筋力強化装置は切って戦闘しようかとジョシュは思っていたがそれも杞憂に終わる
「脳と四肢の神経信号を感知して連動させることの成功したの。身体の複雑な動きが阻害しないように、サポートするように連動させてある。もちろん部分的にも切ることもできて副木代わりにもなる」
ナックルガードが平たい鋼鉄製でややゴツめのオープンフィンガーグローブを付けるとニギニギして感覚を確かめる
「ただ、指先は感覚フォローは無理だからかなり強固な衝撃緩和と握力補助のみにしてあるの……但し、めちゃくちゃハードパンチャーになってる……Zの頭部ぐらいは余裕で粉砕できるわ」
「なんとかの爆弾ってか?」
「なんのこっちゃ? そんな仇名のボクサーいたか?」
シュテフィンのボケに既存のボクサーの異名にはなかったのでガチツッコミするジョシュ達の装着が完了した
黒いケブラーや炭素素材、特殊チタン合金糸の補助筋の戦闘服に外装の特殊軽量セラミックプレートを四肢に装着したジョシュが立ち上がる
「ふむ…………重さがそんなに感じない。動きに違和感や抵抗もない」
屈伸や背伸びをしながらジョシュが感想を述べるとエメが何かに気が付く
「あ、マント忘れてるわ。誰かつけたげて」
「マントォ?!」
すぐに作業員が肩にゴワゴワしたグレーの生地のマントらしき重い装備を付けると少し重くなったが、アクチュエーターのモーター音が聞こえるとすぐに楽になった
「なんですの? コレ」
シュテフィンが作業員に付けられながら尋ねる
「これはZ仕様の防護マントよ。消火栓のホースの素材で作ったの、外装のない関節部に咬撃があっても此奴を挟んであれば歯が届かないし、抜け出せる。それに防火素材だから火災起こして逃げる時も楽だしね」
「部長、データ採取用初期設定完了しました。全関節、センサー・モーター類、オールグリーン」
ノートパソコンでデータのモニター兼調整の技師がエメに向かいデータ採取の準備ができたと宣言するがエメは首を振る
「まだよ。それ乾燥重量でしょ? そのデータは保存。ジョシュ、シュテ、銃器全部持って、弾もね。本番と同じでお願い」
「ほい」
作業員がジョシュ達に装備を背負わせるリックサックにナイフ、予備弾倉、医療キット、エネルギーバーに水を入れ、肩と腰のベルトにはスローイングナイフに弾倉に手榴弾と愛銃M945、大腿部にも弾倉と下腿部にはP210にナイフ、右手にはShAkに左肩にはアニーのバレットを装備する……総重量50kgはくだらない重さだった
「モニター、どう?」
「一応、オールグリーン、稼働耐久範囲内です」
「ジョシュ?」
「とっととオズの魔法使いの撮影に行こうぜ」
ブリキの鎧を揶揄しながらドスドスと歩きながら前に進むとゲートの前に立つ
後ろでシュテフィンがマクミランを肩にかけて追いつく
「それじゃ、ローラーダッシュで施設2周、最高速でお願い」
「「りょーかいっ」」
その声を合図に腰をかがめ、銃を構えるとブーツの底に装備されたローラーがセンサーを感知していきなり高回転し地面を噛み、猛烈な勢いで二つの影が飛び出していった。
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