セバスとツアレのお仕事日誌
次の日の朝
昨日はとても良い休日を過ごしたツアレは、
幸せな気持ちですやすやと深い睡眠の中にいた。
(セバス様、かっこいい・・優しい・・・むにゃむや・・・)
そして、朝になり起きるのがもったいないぐらい毛布の中は心地良いのだが、また今日もセバス様とお話がしたい為、毛布に後ろ髪引かれる思いだったが、直接セバスと話せる現実を選んだ。
「よし!今日も仕事頑張るぞ~!!」
両手を大きく天井へ向かって伸ばした。
朝はまず顔を洗い、歯を磨く。
そうすると気持ちが切り替えられるのだ。
その後は、メイド服に着替える。
初めてメイド服を着用した際は、ひらひらフリルやスカートが動きづらいな~と思っていたのだが、慣れるとそうでもなかった。むしろスカートの方が動きやすいのではないか?と思うぐらい体に馴染んだ。
そして、身だしなみを全体的に整えて、完了!
髪型にもこだわりたいな~と最近思っているのだが、なかなか良い髪形が思いつかない。
先輩のプレアデスのような素敵な髪形になりたいな~と思ってはいるのだが、あの美人の顔を見てしまうと自分には似合わないんだろうな~というのが正直な気持ちだ。
そして、今まで朝食はペストーニャさんやセバス様と自室で食べたり、セバスの執務室で食べたりと、慣れるまでは他のメイド達とは個別に食べていた。
そして先日セバスから、ツアレは環境に慣れてきたという事もあり、休日が明けたら他のメイド達と一緒に朝ご飯を取るようにとの伝達があった。
その為、今日が初めての他のメイド達との一緒の朝ご飯だった。
「緊張するけれど、親睦を深めるには良い機会だし!」
そして、頬を軽くたたいて気合を入れた。
そして、ツアレは自室から出て、食堂へ向かうため廊下を歩く。
今では普通に廊下を歩いているが、仮メイド就任当初は周りのモンスター達から「人間臭い!離れろ!」「旨そうな人間だな~」「何故人間ごときが、ここで働いてるのか?」
などと、すれ違いざまに言われたりして、ツアレは居心地は悪かったのだが
それを見ていたセバスから教えてもらった言葉が、今になっても嬉しい思い出だ。
「ツアレ、ナザリック地下大墳墓内の食事を取り続けて、ここでずっと働いていれば皆ツアレの存在に慣れるでしょう・・・。あまり周りの事は心配しなくて大丈夫です。私がいますから安心して働いてくださいね」
さすが!セバス様!!と今でも廊下を歩く際に時々、思い出しては顔がニヤニヤしてしまう。
「もう一度そんな言葉をセバス様の口から聞きたいです・・・」
今日は初めての食堂での朝食という事もあってか、思い出が鮮明に浮かび上がった為、ついポロっと口に出してしまった。
「ツアレ、何を私の口から聞きたいのですか?分からない事でもありましたか?」と優しくて渋い声が背後から聞こえた。
「そうですね~やはり褒め言ばばばばばっ・・・・・!?」
ツアレは最後が言葉にならないほど驚き、がばっと後ろを振り向いた。
「セバス様!?今日から朝ご飯はご一緒ではないはずでしたが、どうしてこちらへ?」
ツアレは驚き過ぎて、話しながら手がわちゃわちゃと動いていた。
「今日はツアレの初めての食堂での食事の為、道に迷っていないか心配で様子を見に来ました。ご迷惑でしたでしょうか?」
少し困り顔を見せるセバス。
「いやいやセバス様、そういう訳ではありませんが、後ろから突然セバス様の声がして驚きました!」
目を大きく開いて、お気に入りの人に会えた喜びを表すツアレ。
「そうでしたか。驚かせてしまってすみませんでした。そして聞きたいことはなんでしょうか?」
セバスはどうしてもさっきのツアレの言葉の意味が知りたいらしく、もう一回尋ねてきたのだった。
「いや、えっと・・・その・・・何というか・・・んんん~」
独り言のつもりで話したことなので、人に話すのはとても恥ずかしかった。そして尚更、本人に伝えるなんてもってのほかだった。
「ツアレ、何でも言ってください。何を言われても怒りませんから・・・早く言わないと朝食の時間に遅れますよ・・・?」
セバスが心配そうに、恥ずかしそうにもぞもぞとしているツアレの顔を覗き込む。
「えっと・・その・・・働き初めにセバス様に言って頂いた励ましや褒め言葉を・・・その・・・また言って頂きたいな・・・って・・・独り言を・・・」
恥ずかしさの中、ツアレはぼそぼそっと話した。
「ふむ、ツアレは褒めて欲しいのですか?私は人が何もしていない時に、褒める事は難しいので、次回ツアレが仕事で成果を出したら褒めましょう。それで大丈夫でしょうか?」
真面目にセバスが答えて、ツアレは表面上は喜びつつも、内心少し落ち込む。
(そうだよね・・・何もしていないのに褒めてっていう方がおかしいよね・・・・当たり前の答えが返ってきて、落ち込む私は何を言っているんだか・・・)
そして、ツアレはふと時間を確認すると、もう朝食の時間が始まっていることに気づく。
「セバス様、お忙しい中お話を聞いて頂きありがとうございました。私は食堂に向かいますのでこれにて失礼致します」
と、セバスにお辞儀をした。
ツアレがこの場から離れようとしたら、セバスがもう一度話しかけてきた。
「ツアレ一人で食堂に行けそうですか?私も久しぶりに食堂で朝ご飯でも食べようと思っているのですが、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
セバスがツアレに尋ねる。
「もちろん構いませんが・・どうして?」
てっきりセバスは執務室に戻るものとばかり思っていたので、とっさに付いてくる理由を聞いてしまった。
「初めての食堂に行っても心細いでしょうし、もう一度プレアデス達にツアレをご紹介したいと思ってまして・・・」
そして、セバスが食堂に付いてくることになった。
(ちょうど一人で心細かったから嬉しいけど、目立つなあ・・・はあ・・)
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