最終話 エピローグ 老人と少年
信憑性のない老人の話に耳を傾ければ、傾けるほど、僕の胸が軽くなっていくような気持ちになった。
「話してよ。おじさんの」
「語るほどのものではないわ」
「そういうの、好きなんだよ」
僕は、はにかんで笑う。
「仕方ない。泣くなよ?」
「大丈夫。そういうのには、馴れてる」
僕と老人は、当たり前の様に、そのことを笑った。
「妻と娘がいた」
「僕には、両親と、妹と、彼女が」
求められるように老人の口の動きに合わせると、本当に今までの辛いものが共有され、取り除かれるような気分になった。
辛くても、それでも生きなきゃいけない。現在を。
八月の月光が、上を見る僕らを照らしている。
悲しいほど、死にたくなるほど、月の光りは、素知らぬ顔で僕と老人を照らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます