27日 木曜日

27日 木曜日

僕は2度見た彼女の秘密の写真に頭を支配されていた。

僕はいったいなにを考えているのだろう。

サキという彼女がいながらも

咲歩という人物と付き合い

そして“咲歩の写真”に対しても咲歩に対してとはまた違う大きな魅力を感じる。

僕はなんとなく“一夫多妻制”についてスマホで調べていた。

僕と同じ心境である人は、今の僕の状況を浮気として嫌悪する日本ではなく世界的に見たときに存在する

一夫多妻なのではないかと思ったからだ。

しかし、一夫多妻制は

僕の現状を肯定するものではなく、歴史的な背面から生まれる生活の手段なのだと調べていくうちに分かった。

“生への欲望”が感じられる男と女の結びだ。

しかし、今の僕の現状は日本という平和の中で生まれた心情的欲望である。“生”という原始的欲望ではない。

なんの役にもたたないな。

僕はスマホを布団に投げる。

布団の上で横になっていた僕の視界にサキが入ってきた。

「今日は、仕事ないの?」

僕は身体を起こす。

「あぁ、今日は休みだよ。」

彼女はにっこりとして僕の手を握った。

「じゃあ、海へいこうか。」





僕たちは昔よく行っていた海へ向かった。

太陽に照らされ、きらめく線路の上、3時間ほど電車の急行に乗り、閑静な無人改札口を出る。

そして家が左右に立ち並ぶ、海までの1本道をただ歩いた。



この町には小さい大学がある。

あまり名の知れた大学ではなく、住居の中にひっそりと埋もれている。

その大学で僕たちは出会った。

僕はその当時、哲学を勉強していたが誰かにその偉人の言葉を伝えることも、自分なりの考えをおこすことも上手くできず、ただただ学生として大学にいた。

サキはというと、経済を学んでいた。

毎日、企業の分析や新聞を図書館で読んでいた。

そんな僕達はある日、大学から少し歩いたところにある小さな海に行った。

そこに遊びに来る者はいなく、たまにその大学生がいるぐらいの海だった。

波の音が僕達の耳を響かせている。

砂場にそのまま座り込んでいる僕は少し離れたところにいる女性を見ていた。

僕はというとただ海を見に来ただけで、手にはただ目の前にあった貝殻を握っているだけだった。

目の前にいるその女性は僕とは真反対に楽しそうに海の波に合わせて端を歩いていた。


夕日が彼女の影をつくっていて、なにかしらの音楽のMVのように見える。

「ねぇ、きみ。なにしてるの。」

僕は彼女に声が届くように声を張り上げて尋ねた。

彼女は僕の方に振り向いたが聞き間違えだと思ったのかまた、海の方に視線を戻してしまった。

「海辺を歩くのは楽しいかい。」

僕はまた、彼女に尋ねた。

彼女は、今度は僕の方をじっとみてから答えた。

「えぇ、気持ちがいいわよ。あなただってそうでしょ。」

今度は彼女が尋ねてきた。

「そうだね。でも僕よりも君の方が気持ちよさそうだ。」

彼女はふふっとはにかんだ。

そして僕の方へと近づいてくる。

僕は女性がそばに来ることに動揺しながらも彼女の目に吸い込まれていた。

彼女は僕のそばにくると横に座った。

ひらりとしたスカートが砂場にベールをつくる。

「君の名前は?」

「私はサキよ。あなたは?」

「僕は涼だよ。」

彼女は僕の顔を見て少し考えてからまた口を開けた。

「ところであなたはどうして暗い顔をしているの」

僕は自分の顔が暗いのかと初めて知った。

「僕の顔は暗い表情をしているかい?」

彼女は僕の顔をじっとみる。

「えぇ、残念ながらそうね。なにか覚えはないの?」

僕は少し考えたが、たくさんの暗い汚物が頭を駆け巡り彼女の綺麗な顔を見て中断した。

「あることにはあるけどよく分からないんだ。」

彼女はそうなんだねといって僕の方を見た。

僕も彼女を見る。

「1つ質問をしていいかな。」

彼女は僕の方を見ながらうなずいた。


「君が生きているのは...なにか意味があるの?」


彼女は特にその言葉に驚きもせず答える。

「どうしてそんなことを聞くの?」


「それは...分からないからだよ。」


「私だって分からないよ。」


「そうだね。野暮な質問をしてごめん。」


「いいえ。分からないことを考えることは大切だよ。」


「ありがとう。サキ。」


「でも、私を守ってくれる人がいなくなったら生きていることに意味を感じないかな。

だからこういう理由はどうかな。

君は私を守るために生きているんだよ。」








海辺に絶えず吹く波が、一瞬だけ止まった気がした。


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