23日 日曜日
23日 日曜日
今日はサキとの久々のデートだ。
どこに行くのか悩んだ末、決まったのはおいしいと話題のハンバーグのお店だった。
電車で向かうと少し遠いが、ついでにそこらを観光するのもいいだろうということで話はまとまった。
電車ではサキは疲れているのかあまり話さず、お互いぼーっとして窓からの景色を楽しんだ。
もうずっと付き合ってきているので一言も話さなくてもなにもお互いに思わない。
何も話さずともただ、一緒にいるだけでおちつく関係なのだ。
窓からの景色は最初こそ、マンションや家などが多かったが次第に広い道路が見渡せられるようになり、そして緑が多く見えるようになった。
「どんなところにあるんだろうね。」
僕は彼女に尋ねる。
しかし彼女はいつの間にか寝てしまっていた。
僕は少しつまんないなと思いつつ窓からの景色を見続けた。
そして目的の駅に着く。
彼女は何かを感じたのか目的の駅に着く間際に目を覚ました。
「あぁサキ。今起こそうとしたんだ。もう駅に着くよ。」
「そっか。そんな気がして起きた。」
彼女は軽く両手をあげて伸びをした。
「よし、行こう。」
彼女は急に興奮した声で言い、僕の手を引っ張って電車を降りた。
プラットホームこそあるが周りは緑や木造の家などに囲まれていて何かがあるようには見えなかった。
僕たちは駅員に切符を渡して改札を出た。
「ここをまっすぐだったよね。」
「そうね。きっと看板か何かあるんじゃないかな。」
そういって僕たちは歩を進めた。
左右には民家や小さいお店がいくつか並んでいる。
しかし看板などは見えずただ建物に作られた道があるといった感じであった。
人影はちらほらと家族で歩いている人達や、散歩を楽しんでいるようなおばあちゃんがいたりしていたがあまりどの人もおでかけといった雰囲気ではなかった。
「そろそろよ。」
サキはスマホの中の地図を見ながら言った。
すると前方に何人かの人の列が見えた。
「もしかしてあれかな。」
僕は彼女の方を向きながら話す。
サキはスマホと前方にある店とを見比べながら“あれだ”と言った。
中は何人かの人が食事をしているようで待たなければならないようだ。
「少し待っておこうか。」
「そうだね。」
そういって僕達は列の後ろに並ぶことにした。
外観はいたってこの町の家々と変わり映えのない木造の家で、屋根だけ改築したのか瓦ではなく現代風の固い板でつくったような屋根であった。家とお店の併用であるので所々に生活感も見える。
僕達はお店から香る香ばしいソースとお肉の匂いにお腹を空かせた。
1人、また1人と店内に入っていきやっと中に入ることができた。
中はインテリアに凝っていて至る所に工夫がなされている。
窓際にはかわいいお花が添えられていたり、カウンタ-席の上壁にはアメリカンな雑貨が垂れてあり見ていて飽きがこない。
「何食べようか。」
サキはメニュー表をじっくり見ながら厳選していた。
「僕はシンプルなこのハンバーグにしようかな。」
「たしかに具とかがなくてもここのハンバーグ美味しそうものね。」
そう言って彼女も同じものを頼むことにした。
厨房から肉の焼ける音がする。僕はお腹からのまだかまだかという言葉を落ち着けるためにスマホを見て気を紛らわせた。
サキはというと厨房が良く見える位置に座っていたので厨房をじっと見ていた。
そうしてハンバーグが僕達のテーブルに到着する。
「こちらハンバーグプレートです。お熱くなっていますのでご注意してお召し上がり下さいませ。」
店員は気さくな笑顔でそう言って厨房へ戻っていった。
「いただきます。」
サキはすぐにハンバーグに手をつけた。
「いただきます。」
ハンバーグの蒸気に顔が包まれる。僕は肉汁の出るそれを思い切ってナイフで切り、そして口に運ぶ。
口の中で肉汁と焼けた肉の香ばしい味が広がりつい“はぁ”と声を出してしまった。
「とても美味しいね、サキ。」
彼女もまた、幸せそうに頬張りながらこくっとうなずいた。
2人はパクパクと口に運んでいきあっという間に食べ終わってしまった。
「ごちそうさまでした。」
そういって店内を出た。
まだ日は頭上近くにある。
「あっという間だったね。」
「そうだね。でも、来てよかったよ。」
そして満足気味にお互い笑った。
「さぁ、これからどうしようか。」
僕は近くに何かあったかなと考えを巡らす。
「そうねー久しぶりに服でも買おうか。最近買ってないから涼、服ないでしょ。」
「そうだっけ。いつも何かしら家にあるものを着ているから気にしたことなかったな。」
「じゃあ買いに行きましょう。」
そうして僕達は郊外にある複合施設に向かうことにした。
お腹がふくれた僕達は満足気な顔をしたまま電車に揺られた。
複合施設に着くとたくさんの人で賑わっていた。
日曜だからか家族連れが多いようだ。
「さぁどこから見ようか。」
僕はあたりを見渡した。
どこも人が多くどこにどんなお店があるのかも分からない。
僕達がいる場所からは2階、3階と吹き抜けになっているので見渡すことができる。
どの階も人だらけだ。
「とりあえず3階に上がって順番に見て行こうか。」
サキは潔く道順を決める。
「そうだね。」
僕はサキについていく形で跡を追った。
ときおりはぐれそうになるとサキは手を伸ばして僕を引っ張ってくれる。
僕自身がそうしてかっこよくエスコートするべきなのだろが何せ付き合いが長いのでついつい彼女にあまえてしまっている。
3階につくと僕達は左右に並ぶ店を歩きながら見て行った。
店や店名には詳しくないので何が良いか、どういう店なのかはまったく分からない。
マネキンがあれば服屋、光るものがあればアクセサリーと認識をして見ているだけである。
「何か寄りたい店はあったかい?」
サキはキョロキョロとしながら僕の隣を歩いている。
「そうねー。あそこに寄ってみようかな。」
サキが指さしたのは雑貨売り場だった。
「じゃあ行こうか。」
そういって僕達はただまっすぐ歩いていた足を止め、そのお店への直進に変更した。
店内に入るとサキはキッチン用品に見入っていた。
そんなにも気に入ったものがあったのだろうか。
そう考えるや否や目線はその隣の物にいき、また別の物を見る。またその隣またその隣と順番に見ているようだ。
「何かいいものはあったかい?」
僕はひと段落着いただろうという所を見計らい聞いた。
「そうね。あの箸とても魅力あると思うの。」
サキが言うその箸は濃い木の色が特徴で、彫りから生まれる絵のデザインから日本らしさがでていてとても良いものだった。
「家にある箸だいぶ古かったよね。君の分だけ買おうか。」
「涼はいいの?」
「僕はなんだっていいからね。でもあの箸でご飯を食べたら美味しいのかな。」
「涼の分も買いましょ。せっかくなんだし。」
そういってサキは2本の箸をもってレジへと行ってしまった。
僕は内心、サキと同じ箸だということとサキに言われてあの箸を見た時に少し惹かれていたので嬉しくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます