第8章

水曜日 19日

朝になると咲歩はいなかった。

スマホを見ると、サキからと咲歩から連絡がきていた。

サキからの連絡を見る。

“気を付けてね。おやすみ。”

僕はなんだか疲れたようで起き上がれずにいた。

スマホを見るのにも疲れ、ただ天井を眺める。

しかしそんなことをし続けている暇もなく、会社にいかなければならなかった。

とりあえずお風呂に入っていなかったことに気づき、入ることにした。

シャワーだけをあびた僕はそのままもう一度、昨日来ていた服と同じものを着て会社へと向かった。

会社に着くと、服が同じことに疑問を持たれるかとも思ったが誰も気づく者はいなくただ挨拶をして自分のローカーに向かい、仕事の服に着替えるのだった。


仕事に一息つき、休憩時間になった。

会社から外に出てみると空は快晴でとても気持ちが良かった。

僕は近くのコンビニでおにぎりと飲み物を買った。

そして近くの公園のベンチに座り、買った冷えたココアにストローを刺し、とりあえずそれを飲みながらスマホを見る。

咲歩からのメールをまだ見ていなかったからだ。

来ていたメールは思っていたようなものではなく、いつもと変わらず短調とした文だった。

“用事があったのを思い出して先に帰りました。また会いましょう。”

僕は“あぁ、いつもの彼女だ”と感じた。

“そうだったんだね。また連絡するよ。”

そう僕は返信して、おにぎりをお腹に入れた僕はまた、会社に戻った。




仕事が終わり、僕は家に帰る。

家にはいつもと変わらずサキが待っていてくれている。

「おかえり、涼。」

「ただいま、サキ。」

いつもと変わらずごはんが用意されてる。

僕たちはイスに座りごはんを一緒に食べた。

同居したてのカップルのように多弁ではないが、静かでも居心地が良い。

「サキ、次の日曜日は空いているかな。久しぶりにデートに行きたいんだけど。」

「空いてるよ。涼から誘うなんて久しぶりね。」

そういってサキは少し嬉しそうに微笑む。

「そうかな。まぁ僕も働き始めたしね。少し出かけに行くのも良いかななんて。」

そして楽しみな1日ができた。

今日は水曜日であるのであと4日後だ。

「りょう、今日はまだお風呂入れてないから先、入ってくるね。」

そういって食べたごはんの皿を洗い場においてからお風呂場へといった。

テーブルにはサキのスマホが置かれたままだった。

僕は残りのご飯を口に掻き込む。

そしてごはんの皿を洗い場に持っていき僕はまた、テーブルのイスについた。

じっとサキのスマホを見つめる。

浮気をしている本人が彼女のスマホを見るなんて罪に罪を重ねているようだ。

しかし、この間のカップに書いていた

“dear sakiho”

その名前は僕と付き合う咲歩と同一人物であるか、それが気になる。

それによってこれからの行動も変わるだろう。


僕は彼女のスマホを取り、パスワードを解く。

パスワードは以前に見てしまったことがあったのでそれを覚えていた。

そして保存されている連絡先を見る。

そこには会社の同僚だろうか、知らない男性が何人かいたが咲歩という女性はいないようだった。

それどころか、読みが“さきほ”になる人物も見当たらない。

僕は彼女のスマホから“さきほ”を探し出すことは諦めることにした。

サキの持つ、スマホの連絡先から"さきほ"がいなかっただけではまだ安堵はできない。

きっと他にも何か、調べる方法があるはずだ。



その日、なぜか僕は久しぶりにサキと絡み合った。

罪悪感からだろうか。

あまり、気持ちよくはなれなかった。

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