考察 1ー4 

外に出ると僕は胸がざわつく。

「やっと出てきたか。それでどうだった。」

達也は少し心配そうにうつむきつつある僕の顔を見ている。

「達也の作戦は僕も良かったと思っているんだ。でも今回は失敗だった。」

達也はそうか…としか言わず、そのままお互い何も話さず駅に向かった。


帰りの電車の中で、僕は咲歩のことを話すことは達也には出来ず、何気ない会話を楽しんだ。

達也も誘ってしまったことに悪気を感じているのかそれには触れなかった。

そして電車は2人の目的地に着き、待ち合わせをした駅の前で今度は別れた。


ふと空を見ると真っ黒の雲が僕を包むように広がっていて、白色はどこにも見えなかった。そんな景色を見て、嫌な気持ちにはならなかったがそれは僕への光を遮断しているように思えた。

スマホを取り出すとサキからの連絡がいくつか来ていた。僕はすぐにそれを開くと何枚かの写真が送られてきていた。友達と写るサキはとても楽しそうだ。そして最後には一言「しっかりごはん食べるんだよ。」と書いていた。僕はそれを見てごはんをまだ食べていなかったことに気づいた。けれどもあまり食欲はなかったので家でインスタントのスープだけでも飲もうと、家に向かい歩いた。



歩いていると前方から夜風が顔にあたり気持ちが良い。

空が真っ暗であってもこうやって風や匂いの世界はあるわけであり、ただ見えないだけであるということに気づかされる。

そうして視覚以外に集中して歩いていると不思議な気持ちになり身体は軽くなったような気がした。

今という今を生きているような懐かしい気持ちだ。

しかし現実的な情感というものも突然やってくる。

それは前方から来る若い集団からであった。がやがやとお酒を飲んでいるのか騒がしい音がどんどん近づいてくる。

僕は視覚と共に聴覚も遮断するようにして道を歩く。そうして歩いているといつのまにか騒がしいそれは遠くなっているようだった。

「夜は静かであるのがいいな。」

そうしてまた僕は軽い身体で道を歩いていく。

家の前につくと黄色い電球がチカチカと玄関前を照らし迎えてくれる。

扉を開け中に入ると僕は居間にあるイスに疲れた身体を座らせた。

座ると頭の中に一番に駆け込んできたのは咲歩のことだった。

これから僕は咲歩とは会わない方がいいのではと思う気持ちは考えるほどにないと感じた。

しかしこのままではいけないようなものも確実に感じていた。

僕はイスに座り下を向きながら、なにか考えているような いないような曖昧な時間を過ごした。

そうして僕はいつの間にかその日に別れを告げていた。

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