第6章 考察
僕は彼女にまた会おうといってから家に帰った。
家に帰るとサキは旅行用バッグに荷物をせっせと詰め込んでいた。
「どうしたんだい、サキ。」
サキは僕のほうに振り向く。
「明日、友達と旅行に行くことになったのよ。バスのチケット余っちゃったっていうから代わりにね。」
僕は安堵した。
「まぎらわしいよ。サキがこの家をでていこうとしているのかと思ったよ。」
僕はつい笑ってしまった。
「そんなことしないわよ、もしするとしたら不満を全部投げつけるように言ってからでていくかな。」
僕はぎょっとする。
「そんなに不満があるのかい。なおすからいってくれよ。」
サキは少し考えると
「そうね、たまにはごはんをつくってほしいわね。」
といった。
「君のつくるごはんの方がおいしいに決まっているからって任せきりにしてしまっていたね。料理の本を買って練習するよ。それで君の好きなおいしいロールキャベツを今度つくる。」
「楽しみに待っているね。」
そう言ってサキは旅行への準備に戻り荷物をまとめっていった。
僕は今日話したかった就職できたことをサキに話すことができなかった。
旅行での準備に忙しそうだったので話すことに躊躇してしまったのかもしれない。
旅行からサキが帰ってきたらきちんと話そうと思い今日を諦めることにした。
朝になるとサキはもう家からはいなかった。
いつも仕事などでいないことは多いがなぜだか今日は
そして僕は唯一の友達である達也に連絡してみることにした。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「もしもし」
「涼だよ。今日暇だろ。そこらへんで散歩でもしないかい。」
「あぁいいよ。どこで待ち合わせにする。」
「駅前で待ち合わせようか。」
「わかった。」
僕は行く場所ができ、気持ちが晴れやかになった。
僕がおしゃれだと思うわずかな服の中から黒のブラウスに少し柄の入った服と少し高いジーパンを箪笥の奥から引っ張り出し、上下に統一感があるのを最後に確認してからよしと外にでた。
駅前につくと達也はコンビニで買ったコーヒーをのみながらゆったりと遠くを見つめ待っていた。
「急いだんだけど達也に先を越されたね。待ったかい?」
「いいや全然。コーヒーだってまだ熱々だよ。」
そう言うのでコーヒーを触ると確かに淹れたての熱さだった。
「それはよかったよ。じゃあどこかにいこうか。電車でいつもと違う場所に行くのもいいね。」
そういうと彼はひらめいたように口を開けた。
「そういえばここから2駅ほど行った場所においしいカフェがあるそうなんだよ。そこに行ってもいいかな。」
彼がこんなに期待を込めて行きたいということはめずらしく僕は驚いた。そして僕たちはその“おいしいであろうカフェ”にいくことにした。
電車では最近の近況報告をした。
「やっと就職することができたんだよ。」
「そうか一足越されたか。おめでとう。」
達也は笑顔で祝福の言葉をかけてくれた。
「でも就職が決まったってことはもうそろそろ結婚もか?」
僕はどう答えれば良いか一瞬ためらったが「そうだね。」と返事をした。
「女には時間が男よりも貴重なんだからするなら早めがいいぞ。」
僕は達也にそう言われ胸がざわついた。
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