第5章 はじまり

1日なにもすることがない日には、僕はよく近くの喫茶店へと出かけにいく。

喫茶店に入ると無精髭なのか長い髭をしたおじさんが出迎えにきてくれ、古びた茶褐色の椅子に案内される。そして僕はコーヒーを一杯注文する。

周りに座る人はだいたいおじいさんかおばあさんで20代の僕は店の中で少し浮いている気もするが、コーヒーの炒る音を静かに聞いている僕を含める聴衆者は皆、同じ喫茶店で音を共有する小さな共同体のようにも感じる。

僕は喫茶店で勉強をする学生や、書物を書くような偉人でもないので特にすることはないがこうして何もしない時間も良いものである。

そして静かにコーヒーを少しずつ啜っていると向かいの窓になにか嫌なものを感じた。

あの女が歩いている。

そしてこの喫茶店の窓に背中を向けて立ち止まった。

誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。

僕はテーブルに置いてあるカップを手に取り、コーヒーを一口啜る。

左方から見たことがある男がやってきた。女とその男は出会いの挨拶もなく、なにやら話し始めた。

そして男の方は元気のない表情でまた左方へと戻っていった。

女は…


予想どおり喫茶店の中へと入ってきた。

そして僕がいることを初めから知っていたかのように僕の前に座る。

おじさんに笑顔でコーヒーを注文する彼女の横顔はなんだかきれいであった。

「また、僕をつけてたのかい?」

彼女は少しはにかみ

「いいえ、今日は違うわ。

なんだか店内から誰か見ているなと思ったらあなただっただけよ」

そういって彼女はまたはにかんだ。

「なんだか…その…この間の男の人ともめていたようだけど何かあったのかい?いや、言いたくなければ話さなくていいんだけれどね。」

僕は聞く必要はないことをつい聞いてしまった。

「あぁ、別れたのよ。なんだかつまらない人だったから。そしたらあの男逆ぎれよ。そういう所が嫌だっていうのにね。あの人は何も気づいちゃいない。なんだか私が悪いみたいになったわ。」

そういって彼女は少し怒っているようだった。

「あの男の人にも"つまらない"っていったのかい?君は少し言葉の使い方がおかしいんじゃないかい?」

そうすると彼女はまた怒り口調で話しはじめた。

「"つまらない"とは言ってないわ。何かが足りない、とりあえず別れましょうと言ったわ。そうしたら"なにが足りないんだい"とか言われたけれどそれはヒントをあげるとしても想像するものじゃない?こういう所が足らなかったのかな?とか、そういう考えがないのよ。私だって具体的に何がとは分からなかったけどその時、明確に分かったわね。」

女の人ってのはこんなにも考えているのかと少しあっけらかんと思いながらでた言葉は「それじゃあ仕方ないね。」であった。


それから彼女とカフェで話す会話はなぜだか新鮮であった。

僕がいまいちなことを言って彼女からの冗談半分の反感を買うこともあったがお互い笑いあった。


「君は不思議だけれどいろんなことを知っているし感情豊かで面白いね。」

彼女は笑みを浮かべた。

「なんだか褒められるなんて嬉しいわね。あなたもとても面白い人よ。また話しましょう。」

そう言って今度はお金を置いてでていった。

出口のほうで鈴の"チャリン"という音が大きく1回、余韻のように音を残していった。

「以外にもきちんとしている女性だ。」

1日なにもすることがない日には、僕はよく近くの喫茶店へと出かけにいく。

喫茶店に入ると無精髭なのか長い髭をしたおじさんが出迎えにきてくれ、古びた茶褐色の椅子に案内される。そして僕はコーヒーを一杯注文する。

周りに座る人はだいたいおじいさんかおばあさんで20代の僕は店の中で少し浮いている気もするが、コーヒーの炒る音を静かに聞いている僕を含める聴衆者は皆、同じ喫茶店で音を共有する小さな共同体のようにも感じる。

僕は喫茶店で勉強をする学生や、書物を書くような偉人でもないので特にすることはないがこうして何もしない時間も良いものである。

そして静かにコーヒーを少しずつすすっていると向かいの窓になにか嫌なものを感じた。

あの女が歩いている。

そして窓に背中を向けて立ち止まった。

誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。

僕はテーブルに置いてあるカップを手に取り、コーヒーを一口すする。

左方から見たことがある男がやってきた。女とその男は出会いの挨拶もなく、なにやら話し始めた。

そして男の方は元気のない表情でまた左方へと戻っていった。

女は…


予想どおり喫茶店の中へと入ってきた。

そして僕がいることを初めから知っていたかのように僕の前に座る。

おじさんに笑顔でコーヒーを注文する彼女の横顔はなんだかきれいであった。

「また、僕をつけてたのかい?」

彼女は少しはにかみ

「いいえ、今日は違うわ。

なんだか店内から誰か見ているなと思ったらあなただっただけよ」

そういって彼女はまたはにかんだ。

「なんだか…その…この間の男の人ともめていたようだけど何かあったのかい?いや、言いたくなければ話さなくていいんだけどね。」

僕は聞く必要はないことをつい聞いてしまった。

「あぁ、別れたのよ。なんだかつまらない人だったから。そしたらあの男逆ぎれよ。そういう所が嫌だっていうのにね。あの人は何も気づいちゃいない。なんだか私が悪いみたいになったわ。」

そういって彼女は少し怒っているようだった。

「あの男の人にも"つまらない"っていったのかい?君は少し言葉の使い方がおかしいんじゃないかい?」

そうすると彼女はまた怒り口調で話しはじめた。

「"つまらない"とは言ってないわ。何かが足りない、とりあえず別れましょうと言ったわ。そうしたら"なにが足りないんだい"とか言われたけれどそれはヒントをあげるとしても想像するものじゃない?こういう所が足らなかったのかな?とか、そういう考えがないのよ。私だって具体的に何がとは分からなかったけどその時、明確に分かったわね。」

女の人ってのはこんなにも考えているのかと少しあっけらかんと思いながらでた言葉は「それじゃあ仕方ないね。」であった。


それから彼女とカフェで話す会話はなぜだか新鮮であった。

僕がいまいちなことを言って彼女からの冗談半分の反感を買うこともあったがお互い笑いあった。


「君は不思議だけれどいろんなことを知っているし感情豊かで面白いね。」

彼女は笑みを浮かべた。

「なんだか褒められるなんて嬉しいわね。あなたもとても面白い人よ。また話しましょう。」

そう言って今度はお金を置いてでていった。

出口のほうで鈴の"チャリン"という音が大きく1回、そして余韻のように残る音を残していった。

「以外にもきちんとしている女性だ。」

そう思いながら彼女が置いていったお金をとると下にメモが挟んであった。

いつのまにメモと重ねて合わせたのだろうと思いつつ折りたたんでいるそのメモを開くと名前と連絡先が書いてあった。

咲歩さきほtel.xxx-xxxx-xxxx」

電話をしろってことか。まぁいつか時がきたら。とポケットにとりあえずそのメモをしまう。

そして会計をすませた僕は、外にでて散歩をすることにした。

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