35 四人。それぞれの告白。 あなたは、救われなくちゃいけないよ。

 四人。それぞれの告白。

 

 あなたは、救われなくちゃいけないよ。


 それから数日後に、鞠は大橋くんと南と、個人的に屋上で少しだけ内密なお話をした。

 そこでは、三人がそれぞれに胸に秘めていた秘密を、一斉に暴露して、その気持ちをきちんとみんなで共有することになった。


 まずは、それを言い出した鞠が、自分がずっと大橋くんのことが好きだったことを、大橋にくんに伝えた。それから、南は鞠が大橋くんのことが好きだと知っていて、それでも、大橋くんのことが自分も好きで、それを鞠に伝えたとはいえ、親友が好きな人だと知っていて大橋くんと付き合ったこと。そのことに対して、不正はない。私は正々堂々と勝負をして親友に勝ったのだ、やましいことなんてなにもない、と思っていても、心の奥のほうではずっと鞠に対して、ずっと申し訳ない気持ちでいっぱいだったこと、そのことで、この間、二つ橋のところで、急に泣き出してしまったことを、もう一度鞠に言った。

 それから、大橋くんが(これは、鞠はすごく驚いたのだけど)実は鞠が自分のことを、好き、あるいは、そこまでいっていなくても、きっと好意を寄せてくれていることをちゃんと理解してくれていたこと、そして、もし、南に告白されるずっと前に、鞠が告白をしてくれたのなら、たぶん、自分は鞠とお付き合いをしたと思う、と言う話を鞠に言った。

 鞠が驚いて南を見ると、南は小さくこくんとうなずいた。(南は大橋くんからこの話をもうすでに聞いて、知っているようだった)

 そして、この間の二つ橋のところで、その話(鞠と南が自分に対して恋の勝負をしていたということ、そして、もしそのずっと前に鞠が告白をしていたら、自分は鞠と付き合っていただろうという話だ)を透に話をした、ということを鞠に言った。


 鞠は南と大橋くんとそんな話を、ほかに誰も生徒がいない、青く晴れ渡った十月の秋の空のしたで、しながら、いろんな気持ちやわだかまりが、少しずつ、春の雪解けのように(季節的にはずっと早いけど)溶けていくのを感じた。

 それはどうやら、鞠だけではないようだった。

 見ると、小舟南も、大橋綾も、にっこりと、三雲鞠に負けないくらいの、いい笑顔で、笑っていた。

(その秘密の共有があったせいかもしれない。三人は、その後の人生において、いろんなことがあったのだけど、生涯の友人となった)


 このときの話は、あとで透にも話をしてもいい、という了解を鞠は二人から取った。そして、その見返りとして、透に許可を取って、この間の透の恥ずかしい告白を、南と大橋くんの二人にあとで、話して伝えた。すると二人は大声で笑って、鞠と(そのことで、随分と二人からからかわれることになった)透のことを祝福してくれた。

 鞠はそのことがすごく嬉しかった。

 のにち、

「おめでとう」と南と大橋くんが、鞠と透に言った。

「ありがとう」と鞠と透は声を合わせて、二人に言った。

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