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 鞠のお父さんとお母さんは捨てられていた子猫のことを受け入れてくれた。

 はちの代わりというわけではないのだけど、去年、一人いなくなってしまった家族が今年、一人増えたことを、お父さんもお母さんも、喜んでくれているみたいだった。

 鞠はその子猫に『手毬』と言う名前をつけた。

「よろしくね、手毬」

 鞠がそう言うと、手毬は「にゃー」と嬉しそうな声で鞠に返事を返した。

「お前は可愛いね」と鞠は言った。

 鞠は手毬のことをきっと神様がおくってくれた、自分と透の二人の、縁結びの猫だと思った。


 鞠の担任の滝先生と音楽部の顧問である並木先生が来年、結婚をすると生徒のみんなに発表したのは、二学期が始まってすぐの、その年の九月の初めごろのことだった。

 二人の先生にそれぞれお世話になった鞠は、「おめでとうございます」と音楽部の(教室の花束は違う生徒が代表で先生たちに渡した)みんなで買った薔薇の花束を滝先生と並木先生に古びた音楽室の中で手渡しながら、みんなを代表して、そう言った。

「おめでとうございます!」

 鞠に続いて、音楽部のみんなが、ぱちぱちぱち、と拍手をしながらそう言った。

「ありがとう。みんな」

「ありがとう。三雲さん。みなさん」

 すると二人は本当に幸せそうな顔でにっこりと笑って、鞠と、それから音楽室にいる音楽部のみんなにそう言った。

 その二人の幸せそうな笑顔を見て、……いいな、羨ましいな、と心の底から、本当に鞠は思った。それからもちろん、鞠はお世話になった二人の先生が、これから幸せになってくれることを心から祈った。

 鞠の後ろで、ぱちぱちぱち、と音楽部のみんなが拍手をしている、そのみんなの姿の中には、もちろん鞠の恋人である吉木透の姿もあった。

 鞠がちらっと透に目を向けると、透はすぐに鞠の視線に気がついて、にっこりと(みんなにばれないように)鞠に小さく、笑って見せた。

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