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「私、鞠は絶対にそうするべきだって、思ってた」と南は言った。
「うん! ありがとう」と鞠は言った。
それから二人はお互いにつっくけている自分たちの机の上で、手を取り合ってよ転んだ。
でも、それからすぐに、二人は、……とくに南は、ひどく悲しそうな顔をした。
「どうかしたの?」
鞠が言う。
「うん。……鞠が自分の夢を追いかける選択をしてくれたの、私、すごく嬉しいんだけどさ、……でも、そうすると、私たち、中学校を卒業したら、……離れ離れになっちゃうね」
と、窓の外に目を向けて南が言った。
南はなんだか泣きそうな顔をしていた。
その悲しみが本当の悲しみであるということを、南の親友の鞠には、その悲しみがただそこにあるというだけで、ちゃんと、理解することができた。
「そうだね」
と鞠は言った。
「……みんな、いつかは離れ離れになっちゃうのかな?」
さっきと同じように、窓の外を見ながら南が言った。
そのつぶやきに、鞠は返事を返すことができなかった。
午後の英語の授業が始まったあとで、
わかんない。
と鞠は、前のほうの席に座っている南の背中に向かって、そう小さく返事をした。
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