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「ねえ、鞠。昨日の放課後、桜川沿いの土手の上を誰かと一緒に走っていた?」
お昼休みの時間に、一緒にお弁当を食べていると、小舟南が三雲鞠にそう言った。
「走ってないよ」
と、鞠は南にすぐにばれる嘘をついた。
(鞠は、顔はよく見えなかったけど、こっちがあれは南と大橋くんだと気がついたように、向こうからもこっちにいる人が鞠だとわかったことはちゃんと理解していた)
「嘘。あれは絶対、鞠だったよ」
と、玉子焼きを食べてから、南は言った。
でも、鞠は最後まで、「違うよ。別の人の見間違えだよ」と言い張った。
「そんなわけないじゃん」
「きっとすごく私に見ている人だったんだよ」
と鞠は言った。
南はそれが鞠の嘘だとわかっていたようだったけど、「ふーん」と言っただけで、それ以上は、深くその話に追求してくることはなかった。
それから会話の話題を変えるために、鞠は南に自分の進路を改めて決めたことの話した。すると南はちょっとだけ驚いたあとに、本当に嬉しそうな顔で、「本当! おめでとう! 鞠!」と鞠に言った。
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