君との再会

 綾人達が天狐島に来た次の日、綾人達は国王に招かれて御所に訪れていた。

 そして謁見を終え、それぞれの部屋に案内された後、綾人だけ庭園に来るように言い渡された。



 庭園には、色んな見た事のない異界の花が咲き誇り、中には宝石の中で咲いているものもあった。

 そしてその庭園を抜けていくと、展望台があり、そこから街の様子がよく見渡せた。


「うわ〜、綺麗」


海がキラキラと太陽に反射して煌めき、大通りであやかしのお母さんたちがママ会を開いたり、学生だろうあやかし達が楽しそうに笑いながら丘を登っているのが見える。そして、山の上で周りが森に囲まれているせいか、空気が美味しい。


「はぁ…」

「この国は気に入っていただけましたか?」

「うわっ!」


声のする方、自分の右下を見ると、小さくて、豪華な着物を着たお爺さんがいた。


「あっ、国王!」

「そう驚かんでもええじゃろう」

「すっ、申し訳ございません!」

「はぁ…」


そうため息を疲れたかと思うと、ポンと老いた灰色の狐の姿になり、抱っこを求められたので、綾人は畏怖の念を抱きながら、丁寧に抱っこした。そしてこれくらい老いると狐の姿でも人語が話せられるらしく


「この国は、最初はワシらのご先祖様が獣系あやかしを保護するために創られた島なのじゃ。だから、ワシらの本当の祖国はもっと向こうの大陸らしい。しかしその大陸では今もなお戦争が頻繁に起き、多くの行き場を失った者達がこの国に漂着してきてきている。…のう、外の世界から来た客人よ。お主から見てこの国はどう見える?」

「とても、素敵な国だと思います。私達の世界にも王族と呼ばれる人達がいます。しかし、長い歴史の中で傲慢に振る舞い、国民に大切にしなかった国とその家族は滅び去り、大切にして来た王は国民から尊敬され、今も大切にされています。その点、この国の国民はいつも幸せそうで、王族の方々を愛しているので、大丈夫だと思いますよ」

「ほぉ…若いのに中々見る目がある。流石あの子が選んだだけある」

「えっ?」

「あの子は、琥珀は5歳の頃に両親を無くしての、一時期は誰も信頼せず、誰も寄せ付けない時期があった。しかしある日、ある少年に会って変わった」

「あっ…」

「そう、お主に会ってから。あの子はまたよく笑い、他人の事を思いやる余裕が出来た。そしてあの子が唯一言ったワガママ、それは君との約束を守りたい。」

「…」

「七瀬 綾人殿。どうかうちの可愛い末孫をよろしくの」

「…はっ、はい!」


 国王にその後、綾人たちの世界の話をしているとカサカサと植物を布がする音がして、琥珀が木の影から現れた


「あっ…琥珀!」

「綾人!」


久しぶりの再開に国王への挨拶も忘れてそのまま抱きつき、2、3挨拶程度の会話をした後、国王への挨拶をして琥珀のお気に入りの場所で話をする事になった。



 野原で互いの顔を見合って笑うと、綾人から会話を始めた。


「琥珀、僕、君に伝えたい事があるんだ」

「綾人、僕もだよ…その、好きだ。友達としてで無く、恋愛として!」

「琥珀…うん、僕もだよ。だから、君に…」


パチパチパチ…


何処かから拍手のような声がして振り向くと、素早く黒ずくめの奴らが現れて取り囲まれた。そしてその中央で拍手をする立つ老人


「義経、これは何の真似だ…?」


琥珀が義経と呼ばれた老人を睨みながら綾人を後ろに庇ったので、綾人も不味い状況なのだと理解出来た。


「何って、今からお二人を連行させて…」 

「連行!?お爺様がそんな事ゆる…」

「国王風情のお許しなんて…何故ならこれは私が影で従えている組織、私が長なのですから」

「なっ…うっ、貴様何…を…」


ドサッ


琥珀が苦しそうに後ろに倒れ、そのまま狐になってしまった。そして寒いのか、ガタガタ震えていたので、綾人は胸にギュッと抱いて温めてあげる。そして視線を義経に戻す


「貴方は?琥珀に何を?」

「ふふっ、私は只の貴方達の信者ですよ」

「信…者…?」

「そうです。そして綾人様、そのまま私達に付いてきて頂きますよ」

「なっ!何を勝…」

「凛…」

「凛に何もするな!」


綾人はとっさに言ってしまった瞬間ハッとして、我ながら馬鹿だと思った。義経が細く微笑む


「では、付いてきて頂けますね」



 琥珀は綾人に抱えられて動き出した宙船に乗った後、すぐに綾人だけでも逃がす方法はないかと目を動かした。だが琥珀が動くより先に綾人が敵の目を盗んだ。そして気づけば琥珀は空中に放り投げられており、甲板を見ると綾人が「ごめん」と言って敵に頭を殴られて意識を失ったところだった。

 そして琥珀も、妖力の限界で落下しながら意識を失った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る