突然の衝撃

 綾人がカーテンの隙間から差し込んでくる眩しい光で目を覚ますと、掛け布団の中に誰かいる気配がした。

 一瞬何かまずい事をしたのではないかと変な事が頭をよぎったが、昨日の客人の事を思い出してクスッと笑って布団の中を覗き込んで見ることにした…


 綾人は冷静を装ってベットから静かに降りると、急いでトイレに避難した。

 その間に、相手がベットから起き上がってテレビの電源を付けた気配がした。  

 そして綾人は考える。その目覚めたばかりの寝ぼけた頭をフル回転させて。


(なっ…なっ…何が起こったんだ…?)

 

 それは、平和な朝のはずだった。布団を持ち上げて、おそらく自分の腕の上でまだ寝ているであろう狐の寝顔を見ようとしたら、そこには金髪の肩ほどの髪の長さの16歳程の青年が収まっていた。しかも、しっかりと開けられた薄橙色の目で見つめ返されたのだから、もう恐怖でしかなかった。そして、これは悪夢のはずだと思いながら、急いで綾人はトイレに逃げ込んだのだ。



(落ち着け綾人、そうだ落ち着け!僕は昨日、確かに意識ははっきりしていたし、気は滅入っていなかったじゃないか!そうだ僕は至って普通だった。断じてそんな変な気は起こすはずではない!…ならば、ならば彼は誰だ?何処から?そもそもあの狐は何だったんだ?)  


−−綾人ハ勇気ヲ出シテ、トイレヲ出ル事ニシタ


 リビングを覗いてみると、さっきまで気付かなかったがケモ耳を生やした青年がソファーでくつろいでいた。そしてその様子を放心状態で見ていると、相手もこちらに気づいたようだ。クスッと笑って尻尾をユサッと揺らした。


「あっ、あの…」

「…ご飯」

「うっ…ううん?」

「だからご飯…分かんない?僕は朝ごはんが食べたいよ。君の作ってくれたご飯が好きだ。つまり、僕は君に餌付けされたって事だよ。だから、早く早く!」


なんてワガママな奴なんだ…と一瞬この異様な事態の事を忘れて酷い頭痛に襲われたが、このままワーワー騒がれても迷惑だし、取り敢えず朝食を作って、その後説明を求める事にした。



「ねぇ、君は…」

「僕の名前は琥珀。君のお隣に住んでる隣人さ。いちよこう見えて小説を書いている作家だよ。ちなみに年齢は人間だと24歳くらいかな?つまり君よりお兄さんだ。宜しく、七瀬 綾人君」

「えっと…」

「どうして僕が君を知っているかって?勿論、君は元はとは言え有名人だからだからね。そして、どうして僕が昨日倒れてたかと言う質問に関しては、数日間雑誌の執筆に追われていたらついご飯を食べるのを忘れてしまって、流石に何かコンビニで買ってこないとまずいと思って外出たら、君の玄関の前で倒れてしまったんだ。そして、僕を優しく介抱してくれた君の優しさと美味しいご飯に完全に虜になってしまって現在に至るのだよ」

「はっ、はぁ…」

「ふむっ、君、反応薄いな…それでも元子役?」

「えっと…思考回路が追いつかなくって、何かすいません」

「まあ、良いけど…」


そう言って、琥珀と名乗ったケモ耳の青年は僕の作った朝食をモグモグと食べる。その合間に耳がピクピクなっているので、やっぱりこれは本物なんだな〜と思わず呆けてしまった。

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