第4話 坂本遊真の真意
「じゃあこれから付き合ってもらうよ、大丈夫、お店ならもう決めてあるから」
そう言われて彼女に連れられたのはどこか昭和な雰囲気を匂わせる喫茶店だった。勿論某有名喫茶店ス○バではない、まぁス○バがカフェなのか喫茶店なのかという疑問はあるが今回は関係ないのでスルーしよう。
彼女は席に着くと早々に珈琲とサンドウィッチを頼んでいた。一方僕は珈琲だけを頼んだ。
「神代さんは、この店にはよく来るの?」
僕は何となく質問をした。
「うーん…まぁそれなりに来るかな、ここの珈琲とサンドウィッチは絶品だしね」
彼女はサークルの時に見せていたような明るさは無く、店の雰囲気も相まってか何処かの令嬢のような落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
注文して5分程で珈琲2つとサンドウィッチが届いた。皿には小さな文字で「godness of moon」と書いてあった、店の名前だ。僕は少し変わった名前だと感じた。おそらくは月の女神のことを意味したいのだろうが、その場合は「goddess of moon」と記すのが普通だろう。
「可笑しな名前でしょ?普通はNじゃなくてDなのにね。マスターの奥さんが昔間違えて書いたのをそのまま店名にしたらしいのよ」
僕が不思議そうに皿を見ている事に気がついたのか、彼女は少し笑いながら説明してくれた。
その話を聞いて僕はあの事を思い出した。
「でも、この間違いはこの世界線だけの話だよ」
「え?どういう事?」
彼女は僕が言ったことが理解できなかったのか、僕に聞き返した。
「神代さん、平行世界の事は知ってるよね?」
「そりゃ勿論、知ってるわ」
「これは僕がこのサークルに入った理由の1つなんだけど、最初サークルの名前を見て大学のサークルなのにREALのスペルが違う事に気が付いたんだ」
「あー、確かにEじゃなくてIだったね」
どうやら彼女もそこには気が付いていたようだ。
「うん、でもそれを見た時思ったんだ。この世界線では確かに間違いだけど、もしかしたらこのRIALは別の世界線では正解なんじゃないかってね」
「…遊真君って、面白い事考えるんだね」
一瞬の沈黙の後、彼女は少し驚いたような表情でそう言った。
「それで?」
「それでって?」
「いやいや、思っただけであんなよくわからないサークルには入らないわよ。何か本当の目的があるんじゃないの?」
彼女は真剣な目で僕に問いかける。まぁ確かに、それだけでは入った根拠にならない事に反論の余地はない。
「そうだな、まぁ強いて言うなら…」
僕は目の前の珈琲を一気に流し込み、その問いに答えた。
「僕の目的は、僕が間違っていないと思える世界に行く事だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます