頭痛の休日
頭が痛い。
ベッドの上で目だけを動かして掛け時計を見ると昼を過ぎていた。
早朝から既に何度もそうしているが起き上がる気になれないでいる。
ここ数日ずっと頭痛に悩まされていたが昨日体温を計ってみると38℃だった。
季節の変わり目によくある風邪だろうか。
休日が勿体無い…予定では母の日の代わりに実家に顔を出してから海岸か草原へバイクツーリングして今頃湯を沸かしてカップメンを啜っていたはずだったのに。
隣室の女性が何事か言いながら網戸を勢いよく開けた。
いつものことで慣れてはいるが意識の薄いときにされると鋭い音に驚く。
おかげで意識がハッキリして、起き上がることが出来た。
軽く頭を降るとやはり痛い。
改めて体温を測ると変わらず38℃だった。
熱と頭痛と薄っすら関節が痛む以外の症状は特に無い。
喉が乾いていた。
昨日から放置されたコップに入っていた気の抜けたサイダーを飲み干す。
頭が痛い。
とりあえず溜まった洗濯物を洗濯機に放り込み、顔を洗う。
顔を出すのは来週にする旨を母にSMSで伝える。
メールはどうも登録の仕方がわからないようなのでSMSを使用している。
昨日登録した出会い系アプリの通知が来ていたので開いてみる。
誰が見に来たかくらいの話だ。
基本的に同年代のアクセスが殆どだが、何故か年上に見える。
自分の年齢に自覚が無いせいかとも思うが友人や職場の同年代と比べても年上に見えるのである。
見慣れているかどうかの差だろうか。
仕事の昼休みでよく行く定食屋の奥さんが年上なのにとてもチャーミングな人で店主であるご主人が少し羨ましく思うくらいなのだが、もしかしたら年下だったのかもしれない。
まぁ、それを言うとご主人も年下なのか…?
二人は同世代で若い頃から一緒だったような雰囲気に見えるが、今度訊いてみようか。
素人が自分で撮った写真では実物とは差もあるだろうが、単純に年齢がどうとかいうより何かエネルギーが切れてしまっているような感じが見て取れることがある。
美容の仕事をするわけでもないので深く追及する気は無いが、筋トレすれば回復すると思う。
でも、有酸素運動は逆効果に思う。
女性には抵抗があるかもしれないが、プロテインを飲み、マシンジムでほどほどのウエイトトレーニングをするのが良いと思う。
…或いは接客業か否かの差だろうか。
俺も接客業を辞めてから明らかに口角が下がった。
余計な方向に考えが飛んで行きがちなのは悪い癖だ。
ごうごうという洗濯機の音が通知音と共に止まった。
洗濯物をカゴに移しベランダに出てパタパタと振りつつ手早く物干しに吊るす。
「くさっ!」という声が隣のベランダから聞こえて来て勢いよく窓を閉める音がした。
俺が臭いのだろうか…自分と洗濯物を嗅いでみたが洗剤の匂いだけがした。
頭が痛い。
ふと我に返るたびに頭痛を意識してしまう。
洗濯は済んだし、もう二時過ぎになってしまったがこのまま終わりというのは虚しい。
少しバイクに乗るかな…頭痛もあるので近場を丁寧に…しかし夏用のジャケットが無いのだ。
昨年買ったジャケットは、転んで裂けてしまったまま修繕にも出せていない。
せめて長袖をと思い、上は長袖のやや厚手のTシャツ、下は黒デニムを履きヘルメットを持って部屋を出た。
グローブをつけヘルメットを被り、気分の高まりと共に相棒に跨る。
ピィィィ!!!
警報装置がけたたましく鳴る。
イグニッションオンにしてからでないと鳴るようになっているのだから当然なのだが、なんとなく、俺がわからないのか…という気持ちになる。
ついでに各部を目視確認してから改めてイグニッションオンにして跨る。
スタンドを払いエンジンを始動する。
行こうぜ…相棒!
クラッチを緩めアイドリングのみでトロトロとマンション1階駐車場から外へ向かう。
相棒はどノーマルだがこのご時世だ。
時間帯などによっては押して出ることもある。
駐車場を出るとちょうどタンデムしたカップルが信号待ちしていた。
その後ろの車がスペースを開けてくれていたので車道に出る。
すぐに信号が変わり、走りながら行き先を考える。
やはりシャツ一枚はバタつくこともあり心許ない。
夏用ジャケットを物色しに2○んかんへ向かうことにした。
しばらく走っていると急いでいるのかなんなのか、やけに車線変更を繰り返す自動車に遭遇した。
変更する割に先に進めていないので余計に危なっかしい。
よくそういう車を見かけるが、それで一体何秒早く着くんだか…といつも思う。
その後お店に無難に到着しジャケットを見てみたが、良いの…はあるが自分にちょうど良いものが無かった。
何しろ黒や濃い色ばかりなのだ。
バイクが黒いしズボンも黒いしヘルメットも黒いので、ジャケットは明るめの色にしたい。
そうするとほぼ選択肢は無い。
デザインもあまりレーサーぽくないものが欲しいのだが、さらに無い。
これ良いデザインだなと思うものに限ってレディースだったりすることも多い。
仕方ない…本当はプロテクターの入ったバイク用がよかったが、諦めてワ○クマンへ向かうことにした。
すぐ近くの店だ。
店に入りライダース風の作業服を物色する。
良さげなものが高いところにあったのでどうしたものかと周囲を見回すと脚立があったので使わせてもらうことにした。
女性店員が気付いて少し慌て気味に「取りましょうか?」と訊いてくれた。
おそらく本来は店員さんがそうして使う脚立なのだろうが、背丈などを考えても自分でやるほうが合理的だ。
大丈夫なことと軽い礼を述べ、自分で手に取り試着する。
優しい…好き…。
孤独なおっさんは若い女性に少し親切にされるとすぐ好きになってしまう。
まぁ、別におばあさんとか男性でも普通の好意は持つし、親切に遭う割合はそちらのほうが高いのだが。
少し生地が硬いか…別の良さげなものは色が妙に合わない感じがする。
しかし、何も買わないのもなんだかなぁ…と、術中に嵌っている。
接客の効果か。
愛想無い店もそれはそれで気軽で良いのだが。
どうも連想してしまうが、○ニクロは以前よく利用していたが行かなくなった。
どうも行くたびに泥棒扱いしてくるのである。
やたらとマークされたり、セキュリティのブザーを鳴らされたり。
怪しい奴リストみたいなものでもあるのだろうか。
若い女性客達に「おっさん鳴っとるで!泥棒か!ギャハハハ!!」と嘲笑われた記憶も新しい。
盗みなど小2の頃ばあちゃんの金を盗んで沙羅曼蛇を買って以来一度もない。
人生で一度も無いと言えないところが残念だが。
愛想はあってもなくても一長一短だが、泥棒扱いする店には当然ながら行きたくない。
どうでもいい回想はさておき、何を買うか。
別のジャケットで、接触冷感と書かれたものがあった。
薄い生地だなと思ったが、薄いのに丈夫!と書かれていた。
それにデザインもどことなく仮○ライダー○ラックの南○太郎のジャケットに似ている気がした。
白でなくベージュにしたし、黒い裏地の配置だけの話だが。
あと、同じく接触冷感の長袖インナーを2つ手に取り、レジへ向かった。
レジはさっきの店員さんだ。
ほんの少し胸が高鳴る。
またこの店でちょくちょく買い物して、顔見知りになって…そんな気になりながら商品を渡す。
店員さんの左手薬指にはシンプルな銀色の指輪が光っていた。
まぁ…インナーとかを買い足すならここでいいかな…安いし…。
買いたてのジャケットを上に着てヘルメットを被りながらそう思う。
さて、さすがにまだ走り足りないよなぁ…相棒。
こんなとき、生駒スカイラインが二輪禁止でなければなぁと思う。
べつに走り屋がしたいわけではなく、良い景色の中でワインディングを無理なくこなしながら心地良く走りたいだけだ。
出来れば歩行者はあまり気にしたくない。
しかし、大阪近辺はあまりそういうところが無い。
一旦高速道路で外に出てから行くことになるので、早起きしないと行けやしない。
禁止理由となったローリング族というのがどういう種族かよく知らないが、今時そういうのは少ないのではないかと思う。
たまにその気になった感じの若者は居るが、うるさいだけで割合ゆっくり走っているように思う。
福山のスカイラインが開放されたとテレビで見て行ったことがあるが、道は良かった。
そのわりに人は居なかったので、もはや混雑や問題が起こるほどのバイク人口も居ないのだろう。
目的地も定まらぬままになんとなく奈良方面へ向かった。
乗り始めた頃車線オーバーしそうになって怖い思いをした180度カーブも慣れたものでなんということもなく通り過ぎた。
適当なところでコンビニに入り水分補給してから引き返す。
そういえば、今日はヤエーできなかったな。
強い西日に相棒と共に照らされ帰路につきながらそう思う。
最後に追越車線を速めに走ろうかと思ったが頭痛もするのでやめた。
その後やけに警察官を多く見かけた。
そのままマンションまで戻るのも味気無い気がしてまた2○んかんへ寄った。
何も買わずに出るのを繰り返すと○ニクロの二の舞になりそうだし、2○んかんに来られなくなるのはさすがに困るので油汚れクリーナーシートを買った。
マンション駐車場で洗車は無理なので拭き掃除が基本だが、これはホイールを拭くときにわりと使う。
マンションに戻る前にガソリンスタンドでタンクを満タンにする。
跨ったままタンクを水平にしてギリギリまで。
なるべくタンク内側が錆びないようにそうしている。
実は一度転倒でタンク交換して自宅にも凹んだタンクがある。
修理して色を変えてみるつもりだ。
マンションまでの道でふと相棒を見下ろすと、何気に細いと思った。
ある漫画でも描かれていたが、バイクは女だと思う。
思いたいだけだが。
でも、カ○サキ車は男だと思う。
ほぼ見た目だけで買ったバイクだが、飾りの少ないシンプルなところとか、長いわりに細い車体とか、自分の女性の好みと被るように思う。
マシン的な好みならでかいぞゴツいぞ強いぞみたいなのを選んだだろうし、仮○ライダーリスペクトならオフロードを選んだはずだ。
以前、忌野○志郎さんの歌詞について、女性を乗り物に例えるなんてサイテーみたいな書き込みをネットで見たが、今なら何を言っているのかと思う。
忌○清志郎さんの場合は車のようだが同じことだろう。
相棒ですよ。
下手したら死ぬときも一緒に死ぬくらいの…。
などと考えながら特に何事も無く帰宅。
バイクが美女に見えたりはしない。
機関部品の熱が冷めるのを待つ間コンビニに歩いて行き、晩飯を買う。
黒人男性と日本人女性のカップルが居たが、黒人男性が終始不服そうに何事か言っていた。
コンビニ飯なんて、みたいな感じに見えたが買わずに出ていったのでたぶんそうだろう。
女性が若干エロかったのでAVで見たい組み合わせだなと思った。
頭痛はずっと収まらない。
当然ながら食欲もあまり無い。
サラダパスタみたいなものを買った。
あとパ○コ。
分け合う者の無いパピ○。
業の深いアイスだなと思う。
俺の相棒はガソリンしか食えんしなぁ…なんて。
そして帰ってから相棒にカバーをかけて自室に戻りこれを書いている。
またモノローグだ。
一人称小説がどう書くものなのか一度学習しなければと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます