不惑日記
阿蘇山紋次郎
やめようかなタバコ
昔の仕事で不要品として貰った空気清浄機がごうごうと唸っている。
ずいぶん古くなってしまったが、タバコを吸うと元気に唸り出すあたりまだまだ活躍してくれそうだ。
以前はキッチンの換気扇に向かって吸っていたが、おそら左隣の部屋に住む顔も見たことのない住人からだと思うが差出人不明の脅迫状が投函されて以来、恐ろしくなって窓を閉め換気扇も切った状態で吸っている。
どうもベランダに換気扇の出口があるせいで外から流れていたのだろう。
字体からすると女性のように見えるが、殺意を仄めかすやや支離滅裂な文章だった。
ちなみに禁煙マンションではない。
日にトータル5本程度でタバコも薄いものだが心なしか壁紙が黄みがかってきたような気がする。
もう3年か4年は住んでいるのでどのみち張り替えになるのだろうとは思う。
管理人さんは善い人物なので変に吹っ掛けられたりはしないだろうが、どうも自ら退去者の部屋の施工をしているようなので手間を掛けさせて申し訳ない気持にはなる。
何故、隣の住人でなくても嫌悪する人間が多い書かぬほうが無難であろうタバコについて書いているのかといえば、すぐに何か書くネタがあったわけではないからだ。
日常だし何も無ければ何も無い感じで良いかと思って始めたものではあっても、さすがに最初から「今日は朝起きて仕事に行って帰ってご飯を食べて寝ました」で済ますワイルドさは持ち合わせていない。
おそらく次回からは、その日やその週を思い出して書いていくことになるのでもう少し内容はあるはずなのでお許し願いたい。
今回は今思いつくままどうでもよい話でお茶を濁すことにした。
タバコといえば、恥ずかしながら最近出会い系アプリを使っては消すということを繰り返している。
10年以上の独り身で今更結婚も無いだろうとは思いつつも、あまりに生活に華というのか心躍るものが無いので浅いお友達程度でも良いからと女性との関わりを探してみたくなったのである。
ダウンロードして、登録・ログインして、プロフィールを記入し、写真をアップする。
そして女性のプロフィールを検索してつらつらと見ていく。
「できればタバコを吸わない人がいいです」というやさしめのものから、「喫煙者は話し掛けてくんなカス」という辛辣なものまで、多くのプロフィールで目にすることになった。
異様に条件が優れたプロフィールでそう書いてあることが多いので工作も含まれているかもしれないが、女性には多くのメッセージが来るであろうことを考えると足切りの条件に入れるのは自然なことだろう。
あまりに多いので相手を喫煙者に限定して検索すると、男性側のプロフィールも似たようなものらしく、「喫煙者はムリとかプロフィールに書いておいてメッセージ送ってくる人なんなの?」という記述も見掛けた。
そのあたりで、そっと退会しアンインストールする。
丁寧めのメッセージを多方へ送ってみたこともあったが、返ってきたことはない。
まぁ、喫煙が理由というより写真とか年収とか年齢とかそちらのほうが高い壁なのだろうが。
自分が非喫煙者だった頃はポイ捨てや場所を弁えない喫煙者は良く思わなかったが、
喫煙する女はムリという風には思っていなかったし、実際その頃交際し始めた女性は喫煙者だった。
その女性のおかげで一応は正常な範疇の人間になれたようなものなのだが、そのあたりは過去のことなので日記としては書かないと思う。
こんなことを言われたなぁというのは書きそうだけども。
指図されるのは嫌いで、嫌われればそれはそれでどうでもいいわぃとなる性格なので嫌われるからというのはタバコをやめる理由にはならないが、心のどこかでやめる理由を探しているときはある。
過去にある女性に懸想していた頃はその人が非喫煙者であることや願掛けを理由にして半年ほど吸っていなかったが、彼氏が居ると知らされてから再開したものだ。
そういう理由があれば話が早いが、今は無いので害を考えてみる。
壁が黄色くなってくる。健康に良くない。意外とお金が掛かる。臭いが気になる。
壁はもうどうにもならない。健康はどうでもいい。お金はせいぜい月5000円。
実際のところ問題は臭いが気になるというところか。
ポイ捨てや場所を弁えないというのは人格の問題なので喫煙者全てのものではないし、嫌う人もアレルギーの人を除けば臭いから嫌いという意外に理由は無いと思う。
健康被害を言う人は、有毒物質には量が必要であることを申し上げておきたい。
同居人がヘビースモーカーだと健康被害はあると言って間違いないが、通りすがりではあり得ない。
ゼロでは無いが無視出来る確率であって、タバコの話だけでなく有害なものに対してゼロを求めると心気を病むことになる。
安全や健康にうるさい人の多い世の中なので気持ちはわからないではないが、その方向に進みすぎると神経症になってしまいかねない。
ちなみに学生の頃になったことがある。
ろくに呼吸も出来ず唾液も飲み込めず胃から泡も出て吐き出す場所を探しながら移動するような状態だった。
あるとき思い切って酒を飲みタバコを吸い、その後ゲロにまみれトイレに顔を突っ込んで寝ていたことがあり開き直ったのが治癒のきっかけだったか。
自分の飲める量も知らない若い頃の話である。
実のところタバコは気づけば1日吸い忘れている日もあるのでやめること自体はさして苦ではない。
仕事などの前に儀式のような感じで吸うことが多いので習慣に依存しているのかな。
依存自体は別に気にならない。
人に依存するとかよりはよほど害が無いし、甘い物が好きとかそういうのも依存といえば依存だ。
気になるのはニコチンにアルツハイマーを予防する効果があるとかいう記事を見掛けたことだ。
それが事実だとしたら重要な要素だ。
孤独な老人は呆けたほうが良いか、呆けないほうが良いか。
呆けたところで前後不覚になるわけでもなく本人も苦しそうな印象はあるのでたぶん呆けないほうがまだマシなんだろうなと思う。
一番良いのは自力で動けるうちにあっさり死ぬことだと思うが、とりあえず決断は延期としよう。
小説風のつもりがエッセイ風になってきてしまったが、次回からはもっと小説風にしたい。
結局何が言いたかったのかというと、全然そこまで辿り着いてもないし、本当は今思いついただけの話だが最後をまとめる為に書いておきたい。
馬鹿だなぁとか悪い奴だなぁとか嫌っている相手の行為も、自分がやるようになると寛容になる。
とてもじゃないがタバコを吸ってみろだなんてことは言えないし、むしろ一生吸うんじゃないよと言っておくが、他の例としてはバイクかな。
受験の頃なんて家の前を走る騒音バイクが憎くてしようがなかったものだが、自分が乗るようになると法定基準内のものは平気になった。
改造マフラーのものはうるさいなぁと思うが、そうしたい欲求みたいなものは想像が出来るようになったので以前よりは平気になった。
勝手なもので、自分の興味の無いスクーターなどへの許容範囲はちょっと狭い。
単に自分が勝手な奴というだけかもしれないが、そういうことがいくつかあった結果、明らかな犯罪行為や悪徳でないことに対して怒りや憎しみを持つのには抵抗を感じるようになった。
ただの我が儘のぶつかり合いでしかないなぁと。
そして往々にして人は批判では動かない。
たまに政治関係で批判が意味を為すことがあるのは票に影響するからでしかないと思う。
実際に人を動かすのは利害だ。
世間様を見ていると何らかの問題があった場合、話し合って折り合いをつけているのでなく脅迫しあっているように見える。
生きているだけで偏見を持たれたり嫌われたり疑われたりしがちな我々おっさんは、いつも脅迫されながら怯えて生きているのであった。
ああ、そうだ。
今日通勤途中に若い女性から通りがかりにキッショって言われました。
慣れたものでもうそれほど落ち込みはしませんが、外を歩くのはいつも怖いです。
本日のリアルな出来事として記憶にあるのはそれくらいです。
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