宿命か運命か~ふ~

「では、この女の子以外に真犯人がいると仮定して、話を続けます。ですが、まるちゃんが追うように指示しているのは、何かしら意図があってのことでしょう。それは頭の片隅に置いといて下さい」


 そう言って、弥勒みろくは頭を指差した。


「なので、この女の子は犯人ではないかもしれませんが、全く関係がないとは言い切れません。

 ですが、決定的な証拠もない。情報操作でもされているのか、目撃情報も老人だったり、小さな男の子がいたとか、若い長髪の男を見たなんていう情報もあります。

 そこで、普通の方法では得られない事件の鍵を、その鍵穴を見つけるべく、あらにお手伝いしてもらいたかったんです。もちろん、純次の推理力、攻撃力にも期待しています」


 その弥勒みろくの呼びかけに、あらうと純次はやる気に満ちた表情を浮かべた。


「んじゃ、ま。あらが『対話』で見たっていう内容を振り返ろうや」

「そうですね。確か、キーワードとして、『花柄の悪魔』、『赤い液体の付いた仮面を被った頭が三つ』、『右が幼女の面』、『左は成人女性の面』、『無表情な面』、『あやつり人形を操り、正面にある桜模様の達磨を割っている』でしたね」


「そう。花柄ってのは、丸い円がいくつも重なって花みたいな柄の模様で、比喩の方法が他になかったから、そう言ったんだけど」

「まずはそこからですね。丸い円がいくつも重なったって、こんな感じのやつでしょうか。」


 そういって、弥勒みろくはいくつかの円を重ねるようにして、描いてみせた。


「そうそう! そんな感じ!」

「……そりゃあ、フラワーオブライフじゃねぇか?」


 「フラワー……なに?」そういって笑うあらうに純次は携帯の画面を向けた。そこには、いくつもの円が重ねられたような写真が並んでいた。


「なになに、種から木へ、花が実を作り、また種を生む。宇宙の謎を解く。語源はここから来ていた? え。じゅんさんなんでこんなの知ってるの?」

「都市伝説オタクとしては、知ってて当然だろう。俺はそのために世界を回っていたと言っても過言ではないからな。あっはっはっはっは」

「やめなよ。じゅんさんに助けられた子供達の悲しむ声が聞こえるよ」

「う。あらにそう言われると、リアルな感じがして嫌なんだよなぁ。まぁ、冗談はさておき、そりゃあビカーの模様じゃねぇか? しゃがんも気にしてたようだし、改めて描かれると、自信を持って言えるな」

「ビカーですか。あらゆる国を相手に戦争しかけてるテロ組織ですね」

「でもまぁ、やつらならこんなみみっちいことしねぇか。テロと名のつく行為なら、なんでもやりつくしてるようなやつらだからな」

「そんなことないよ。絵に描いてもらうと、よくわかる。僕はこの模様を忘れはしない」 


 あらうの顔に殺気が帯びたところで、ドアをノックする音が部屋に響いた。

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