第25話
「奥さん、その後娘さんから何か連絡のようなものは?」
「いえ、何も……」
「そうですか。お母さんとしては娘さんのことが気になりますでしょう?」
「それはもちろん気になります。でも連絡の取りようがありませんから、娘が無事なのを望むより仕方ありません」
「いや、心中お察しいたします、ところで、娘さんについて何点かおたずねしたいことがありますので、よろしいですか?」
「はい」
「まず、このノートは奥さんが見つけられたんですよね?」
「はい。私が外出から戻ったとき、コタツテーブルの上に置いてありました」
「すぐに読まれたんですよね?」
「はい。最初は娘が忘れていったんだと思って別に気にもしなかったのですが、お茶を飲もうと思って坐ったときに、何気なく開いてみたらこんなことが書いてあったんです」
芳恵はやっと顔を上げる。
「そうですか。そのときそれを読まれてどうでした?」
「それは、一瞬何のことかわかりませんでした。そしてもう1度目を通しました。
読み終えてすぐに主人に電話を入れました。でも主人は、『おまえの言っている意味がさっぱりわからん』って怒ったように言うんです。
でも、考えれば無理もないことです。主人はノートを見てないんですから……」
芳恵はこれまでになく滑らかに話した。
「そこで私はあくる日、コピーをとって主人の所にファックスしました。主人から連絡が入ったのは次の日の朝早くでした。おそらく時差を考慮してそうなったのでしょう」
「で、ご主人は何て?」
「これを読んだだけでは何ともいえないが、俺たちが育てた娘だ、もう少しそっと見守ってやろう、と言いました。主人がそう言ってくれたのを聞いて、正直私はホッとしました。
もし主人が、おまえに任せるって言ったらどうしようかな、って思ったんです」
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