第10話 ノート page9

 私は、ママが言い捨てた〃勝手にしなさい〃と言う言葉の裏側に、

 自重や断念を強要する意味が含まれているのに気づかないまま、

 自分の都合のいいように解釈しました。

 ママは私の性格を知り尽くしているためか、中止させるのを諦めた様子でしたが、ときどきかかってくるパパの電話でそのことを話していたようです。

 計画を友だちに持ちかけたまではよかったのですが、私自身一度もそういった経験がなかったので、いざ実行となると期待と不安が胸の中で錯綜しはじめました。

 ――

 いよいよ出発という日の前の夜。リュックサックの中身を点検した私は、ひと安心してベッドに潜り込んだのですが、なかなか眠ることができませんでした。

 目を瞑ると、瞼の裏側にまだ見たことのない風景が次から次へと浮かび上がってきました。

 明日の朝は早いからと思っても、気が焦るばかりでなかなか眠りに就くことができませんでした。

 それほどその計画を愉しみにしていたのです。

 次の朝6時に目を醒ました私は、身支度を整えて階下に降りました。

 すでにママは起きていて、朝食の用意とお弁当がテーブルの上に並べてありました。

 それを見ても私はママに対して感謝の気持が針の先程もありませんでした。

 当然としか思えなかったからです。

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